大衆受けはしないであろう国際映画祭向けヒューマンドラマ。それでもメキシコ好きにはおすすめできます。55点(100点満点)
ROMA/ローマのあらすじ
1970年メキシコ・シティーにてクレオは、メイドとして白人家族の家で住み込みで働いていた。家には雇い主のソフィアをはじめ、夫のアントニオ、ソフィアの母親テレサ、そして4人の子供たちがいた。メイドはクレオのほかにももう一人アデラがいる。
家の中はいつも子供たちの騒ぎ声で賑やかで、掃除、洗濯、食事の準備など、全てをこなさないといけないクレオにとっては重労働だった。
ソフィアは普段は優しいけれど、時々癇癪を起し、クレオを叱った。そんなある日、夫のアントニオがカナダのケベックに行くと言ったきり、家に帰ってこなくなった。子供たちを置いて蒸発したのだ。
クレオはある日、仕事が休みのとき、アデラと一緒に映画館に行った。従弟のラモンとその友人のフェルミンも一緒だった。
フェルミンと意気投合したクレオは映画館に行く予定を変えて二人で散歩することにした。まもなく二人はホテルの部屋に行った。フェルミンは格闘技をやっていると話し、裸のままそのスキルをクレオに自慢するのだった。
このときがきっかけでクレオは妊娠してしまう。次の映画デートのときにフェルミンに子供ができたと告げると、喜ぶ素振りを見せたままトイレに行くといってそのまま映画館からいなくなってしまう。
クレオは雇い主のソフィアになかなか妊娠について言えないでいたが、ある日ついに意を決して告白する。
ROMA/ローマの主なキャスト
- ヤリツァ・アパリシオ
- マリナ・デ・タビラ
- フェルナンド・グレディアガ
- ホルヘ・アントニオ・ゲレロ
- マルコ・グラフ
- ダニエラ・デメサ
ROMA/ローマの感想と評価
「天国の口、終りの楽園。 」、「トゥモロー・ワールド」、「パリ、ジュテーム」、「ゼロ・グラビティ 」などで知られるアルフォンソ・キュアロン監督による、芸術路線家族ドラマ。
タイトルの「ROMA」はメキシコシティの地区「コロニア・ローマ」を指していて、そこで生活する中流階級の家族を描いていきます。
全編スペイン語の白黒映画で、1970年代のメキシコシティを舞台に当時の時代背景などを軽くたどりつつ、メイドとして生きるヒロインと雇い主の家族の関係性をつづった大人向けの映画です。
どちらかというと玄人向けの作品で批評家などから高い評価を受けていますね。一方で娯楽性は低く、スローなので一般受けするかといったらまずしないでしょう。特にメキシコをはじめとするスペイン語圏に興味のない人には伝わりにくいかもしれません。
このご時世にオープニングロールに5分ぐらいの時間を費やしているのにはびっくりしましたね。エンドロールじゃないですよ。オープニングロールからすでに遅いんです。
さらに前半はどういうストーリーになるのか、どんなジャンルの映画なのかもほとんど見えてきません。やっとのこと物語が動くのは、ヒロインのクレオが妊娠し、クズ男に逃げられる辺りからですね。
またクズ男がとんでもないレベルのクズで、素っ裸で棒を振り回しだすんですよ。棒って言ってもニョイ棒のことじゃないですよ。シャワーカーテンの棒をわざわざ外して女の子も前で棒術を披露するんです。
それでどれだけ格闘技は素晴らしいか、男らしさを散々アピールした後、妊娠してたのが分かると「ちょっと俺行かないと」とか言いながら速攻で逃げるっていう映画史上に残るゲスっぷりでした。ああいう奴いそうで怖いわ。
クレオの主人であるソフィアもまた旦那に逃げられている点では共通していて、どこかクレオの人生とソフィアの人生を対比させているようでもあります。
一方はインディオの血を引いたメイド、もう一方は白人の比較的裕福なシングルマザー。どちらも男に捨てられた傷を負いながらも強く生きているこうとする姿が美しく、そして切ないです。
ある意味これはヒロインたちが強く生きる女のドラマであって、女性向けの作品なんですかね。
大人たちは終始どこか深刻な顔しているのに対し、子供たちは無邪気で明るく、希望に満ちているのが救いでした。
子供たちとクレオの関係性が暖かくていいですね。しかしあくまでもメイドという立場だし、ときには主人に怒鳴られたり、いつ首になるかビクビクしないといけなかったり、決して気が緩むときがなさそうなのが、見ていてしんどいですね。
見どころは圧倒的なリアリティーでしょう。お金をかけて1970年代を再現しているのが功を奏しているのもあるけど、素朴なキャストたちの自然なパフォーマンスも評価されるべきです。
これでもっとエンタメ度が高かったら、ものすごい名作になりそうな気配がするんですけどねぇ。いかんせん静かでゆっくりだし、白黒で暗いから眠くなるのがいけません。
ただ、出産シーンやラストのビーチでの抱擁シーンなど、印象に残るシーンはいくつかあったし、批評家から称賛されてるのも素直に頷けます。
果たして最後、クレオは家族の一員になりきれたのでしょうか。実際、メイドと家族の距離がすごく近いケースもありますからね。勘違いして態度がでかくなっちゃうメイドとかもたまにいるし。
いずれにしてもメイドも含めて一つの家族という形があってもいいし、クレオの人生は人生でまた文化や格差社会をうまく表していましたね。
日本人からしたら遠い世界の出来事のようでも、今後格差が広がれば日本でもメイド文化が流行る可能性は十分にあるでしょう。
車の窓から遠くを見つめる彼女が何を考えていたのかが気になりました。自分の子供のことなのか、それともこれからの人生のことなのか。切ないなぁ。
コメント
映画男さんのお陰で、この手の文芸作もよく観るようになりました。
たとえば「馬を放つ」や「ラクダの涙」とかです。
いままでも、有名評論家の売り言葉にだまされ途中でギブアップした作品がいったどれくらいあったでしょうか。だってあの方たち、いいことしか言わないから。
あそうか、文芸作品てのはインテリさんの自己顕示欲を満たすためのネタか〜と、その程度の認識を持つようになっていました。
その点、映画男さんの紹介はウソがない。
ここでスクリー二ングされた作品は、そんな僕でも最後まで観させてくれる。そして、文芸作品にもいいものもあればクソみたいなのがあると分かりました。
本作も55点という絶妙な採点ですね。
何かの賞を取っているようだし、いっちょ観てみるかと思いました。
ま、採点通りです。
退屈でしたけど白黒映像がとても綺麗でした。
さもインテリ層に受けそうな映画ですよね。もうちょっと娯楽性があればよかったんですけど。
退屈過ぎて途中で見るのをやめた。これひょっとしてアカデミー獲るの?しぇ~。
アカデミー賞、獲っちゃいましたね。
仰るようにエンタメ性はないですが、リアリティがあって、心にじんわりとくるいい作品でした。
海での子供を助けた後にクレオがやっとという感じで感情を吐露するシーンが良かったです。
雇用主ファミリーとクレオ、起きた事は違うけれど、大きな試練を一緒に乗り越えた同士のような感覚になったのかもしれませんね。
しっかし、あのマッパ男、クズ中のクズでしたね。
武道なんて今すぐやめて欲しいですw