上司の娘を家族旅行に連れて行ったら、とんでもない災難に遭った間抜けなお父さんを描くスイス産シチュエーションドラマ。そこそこ面白いけど、印象に残らない作品です。51点(100点満点)
映画まともな男のあらすじ
会社員のトーマスは休暇を使って、倦怠(けんたい)期の妻や思春期の娘と一緒にスキー旅行に行く。家族団らんの旅の予定がなぜか上司の娘ザラまでついてくることになり、1日目の夜に彼女の所在がつかめなくなってしまう。トーマスが街でザラを発見するものの、彼女は乱暴されたと衝撃の告白をする。トーマスは警察に行こうと彼女に言うが……。
シネマトゥデイより
読者の耳の木さんのリクエストです。ありがとうございます。
映画まともな男の感想
ミヒャ・レヴィンスキー監督による、一つの出来事をきっかけに不運の連鎖が起こり、人生が狂い始める男を描いた悲劇。ジャンル分けの難しい、微妙な路線を行くスイス映画です。
物語は、トーマスが家族を連れてスキー場に旅行に行くところかスタートします。トーマスは上司にいい顔をしようと、上司の年頃の娘ザラも誘い、自分の娘と遊ばせようと計画します。
ところが初日の晩、トーマスが子供たちの外出を許してしまったことをきっかけにトラブルが起こります。
トーマスが待ち合わせ場所に娘とザラを迎えに行くと、ザラがトーマスの友人の息子に乱暴をされたと言って号泣していたのです。
ザラから口止めされたこともあり、トーマスは翌日になっても誰にも言い出せません。上司に報告するのも気が引けるし、かといって妻とは不仲でとても話せない。一緒に遊びに行った娘すらも何があったのかよく分かっていない様子。
できればこのまま大ごとにせずに穏便に済ませたいと考えたトーマスは警察に行くというザラを引き留めようとし、さらなる泥沼にはまっていく、というのがストーリーの流れです。
保護者の監督責任が問われる内容になっていて、複雑な状況の中で難しい決断に迫られる主人公の葛藤を見るのはなかなか面白かったです。
少年に乱暴されたというザラは15歳。彼女は年上の男の子といい感じになってお酒を飲み、キスをして車に乗り込んだらやられちゃった、というのが事の顛末なんですが、実際のところは何があったのかはザラの一方的な告白しか聞かされていないため判断が難しいところです。
彼女の話を全部信じるのも危ないし、かといって疑ってかかるわけにもいかないし、最初の晩は警察に行こうとしなかったのに別の日になってやっぱり警察に行くと言い出したり、情緒不安定な少女に口止めされ、それに従ってしまったトーマスも災難でしたね。
ましてや上司の大事な娘という絶対に何か問題があってはならない存在だけにザラのことを一応助けようとはしつつもトーマスが保身に走ろうとするのも賛成はできなくても理解はできるんじゃないでしょうか。
「性犯罪」というデリケートな問題が状況をより難しくしていました。はっきりとした証拠や暴力の形跡などがあれば完全にアウトなんだけど、話を聞いていると、ザラもまんざらでもなかったわけだし、キスもしていたし、車にも自分から乗り込んでいて、酔った末の過ちとも取れなくもないので果たして騒ぎ立てることが正しいのかどうか、という問題でもあります。
まあ、でも普通なら上司に速攻報告しますけどね。事件にするかどうかは向こうの家族に決めてもらえばいいわけで。
いずれにしても絶妙なシチュエーションを作りつつ、トーマスの身に次々と不運のハプニングを与えていく展開はなかなか凝っていました。ラストのオチも伏線が利いていたし、視聴者の期待に応えてましたね。
一方で派手さがなく、会話で楽しませたり、映像で見せるわけでもないので、インパクトに欠けます。ブラックコメディーなのかなぁとも思えるし、スリラーともいえるんですが、笑えないし、怖くもない中途半端な演出になっていたのが残念でした。
リアリティー重視の映画ならまだしも、ドタバタ劇を描くならもっとどちらかの方向に振り切らないとね。じゃないとそれなりに楽しめても2、3日したらタイトルやストーリーもろとも忘れちゃうから。
コメント
やっぱり映画男さんの感想はとても面白いです!
確かに言われてみればちょっとインパクトに欠ける部分はあると思います。何にせよ自分はこの監督の次回作が楽しみです!
今回はリクエストに応えていただきありがとうございました。これからもブログを楽しみにしています。
楽しんでもらえて嬉しいです。またコメントしてくださいね。