メキシコ映画史上最高傑作といっても過言ではない世界が注目したバイオレンスクライムムービー。絶対にみるべき映画のひとつです。85点(100点満点)
アモーレス・ペロスのあらすじ
スーパーで働く傍ら遊ぶ金欲しさに強盗を働くラミーロと闘犬でボロ儲けしているオクタビオは、実の兄弟でありながら犬猿の仲。オクタビオは兄の妻スサーナに恋心を抱き、金を貯めて彼女と駆け落ちする計画を持ちかける。
人気モデルのバレリアは妻子持ちの雑誌編集長ダニエルと不倫中。愛犬とともにダニエルと同棲を始めるバレリアだが、突然愛犬が姿を消してしまう。
たくさんの犬を連れてリヤカーを引いて歩くエル・チーボはただの浮浪者に見えるが、実はやり手の殺し屋という過去を持つ。
そんな彼にある日、殺人の依頼が舞い込む。メキシコシティーを舞台に犬と交通事故を巡って3つのストーリーが重なり合う。それぞれが満たされない愛に悩まされながらドロ臭く、ずる賢く生きる道を選ぶ。たとえその先に悲劇が待っていようと。
アモーレス・ペロスの感想
「バベル」、「ビューティフル」、「レヴェナント:蘇えりし者」、「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」で知られるアレハンドロ・イニャリトゥ監督の名を世界に知らしめた名作。
ストーリー構成がすばらしく、テーマに沿って3つの話を上手くつなげることに成功しています。
メキシコのグループによるロックやヒップホップなどのBGMも効果的。特に挿入歌の「Lucha de Gigantes」は映像にぴったりはまっていましたね。
低予算映画ながら映像もかなり凝っていて安っぽさが全くないです。発展途上国のメキシコでわずか200万ドルの製作費の中でここまでクオリティーの高い映画を作ったのはすごすぎます。
ところどころにバイオレンスとベッドシーンが混ざっていて娯楽性と色気のバランスが完璧です。
あえて名作に文句をつけるなら、少しビジュアルにこだわりすぎていたというのがクセものでしたね。
俳優陣があまりにも美男美女揃いのためメキシコ的ではなく、ハリウッド寄りになってしまった感がありますね。
アレハンドロ監督は最初からハリウッド進出を意識して映画を作っていたんじゃないかと思います。
混血やインディオの子孫が大部分を占めるメキシコで登場人物のほとんどを白人にしたというのが何よりの証拠です。
見所のシーンはオクタビオが兄の妻スサーナと絡むシーンじゃないでしょうか。赤ん坊の目の前でやるシーンと洗濯場でやるシーンがあるけど、「兄の妻と不倫」というベタな設定は嫌いじゃないです。
スサーナは一見押しに弱い、無垢な女に見えるけどかなりの魔性の女でしたね。全部計算でやっていますよ。自分からは手は出さないけど、男に手を出させるように仕向けるのが上手いっていうタイプです。そういうタイプが一番怖いんですけどね。
洗濯場で交わるシーンがこの映画のメインだと言ってもいいでしょう。あのシーンと同時に挿入歌が入り、その後のストーリーを左右する様々な出来事が起こるところからしても監督があのシーンを一つの区切りにしていたことはまず間違いないです。
あのシーンで一番印象的だったのは、気持ちのいいはずの行為の最中にオクタビオがなんだか悲しそうな顔をしていたところ。
「ああ、俺って馬鹿だなあ、なんでこんな悪い女に惚れてしまったんだよ、本当に馬鹿だよ俺って」という気持ちになっていたんでしょう。悪い女に惚れたことのある男なら彼の悲しみがよく分かるはずです。
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