とある家族が抱える闇を怪奇現象と共に見せていく上質のホラー。ホラーが好きな人全員に見てもらいたい映画です。74点(100点満点)
ヘレディタリー/継承のあらすじ
グラハム家の祖母・エレンが亡くなった。娘のアニーは、過去の出来事がきっかけで母に愛憎入り交じる感情を抱いていたが、家族とともに粛々と葬儀を行う。エレンの遺品が入った箱には、「私を憎まないで」というメモが挟んであった。
アニーと夫・スティーヴン、高校生の息子・ピーター、そして人付き合いが苦手な娘・チャーリーは家族を亡くした喪失感を乗り越えようとするが、奇妙な出来事がグラハム家に頻発。不思議な光が部屋を走る、誰かの話し声がする、暗闇に誰かの気配がする…。やがて最悪な出来事が起こり、一家は修復不能なまでに崩壊。そして想像を絶する恐怖が彼女たちを襲う。一体なぜ?グラハム家に隠された秘密とは?
wikipediaより
ヘレディタリー/継承の「hereditary」の意味
英語の「hereditary」には「遺伝性の」、「親譲りの」、「先祖代々の」、「世襲の」といった意味があり、この映画で重要なキーワードになってきます。意味を知ったうえで物語を見ていくと、いかにしてヒロインの家族が呪いを継承してきたのかが分かるかと思います。
ヘレディタリー/継承の感想
アリ・アスター監督によるサンダンス映画祭で上映された質の高いホラー映画。2018年に見たホラーの中ではダントツトップの怖くて、面白い作品でした。
ホラー映画にはいくつか系統があって、室内で超常現象が起こるお化け屋敷系、霊がだれかに憑依するポルターガイスト系、物が勝手に動くコックリさん系など様々ですが、これはその全ての要素をうまい具合に取り入れたホラーになっています。
物語は、母親を亡くしたアニーが夫や二人の子供と葬儀を営むところからスタートします。
母親を亡くしたというのにアニーは不思議とそれほど悲しみを感じていませんでした。それは息子のピーターも同じで、どこかグラハム家のみんなはケロっとしています。
ところが娘のチャーリーは祖母が死んだあたりからほかの人には見えない光が見えたり、何かにとりつかれたような素振りを見せるようになります。
ある晩、息子のピーターがパーティーに行くと言い出すと、アニーは彼が羽目を外さないようにと娘のチャーリーも一緒に連れて行きなさいと命じます。
しぶしぶチャーリーと一緒に友達の家のパーティーに行ったピーターですが、目を離したすきにチャーリーがアレルギーのあるピーナッツ入りのケーキを食べてしい、発作を起こします。
急いでチャーリーを病院に連れて行こうとピーターが車を走らせると、二人は交通事故に遭ってしまう、というのがストーリーの流れです。
まず、冒頭からBGMでじゃんじゃん煽ってくるのが特徴で、音の使い方のセンスがいいですね。冷静に音なしで見たら平凡なシーンでもあの音があるだけで緊張感が増します。
ストーリーは細かく、緻密に計算されていて、ディテールにこだわりを感じさせるので終わった後にもう一度確認したくなります。
最大の見どころは役者たちの演技でしょう。それぞれがものすごい発狂パフォーマンスを見せているので、演技を見ているだけで十分に楽しめます。
特にお母さんのアニーを演じたトニ・コレットの顔芸にはビビりました。すごい演技だったなぁ。普通、こんな顔できる?
あんなにすごいもの見せたんだからちゃんと賞をあげなきゃ。トニ・コレットって「シックス・センス」にも出てたんですね。
息子ピーターも娘チャーリーもよかったです。チャーリーの子役はインパクトある顔をしていてホラー映画にぴったりですね。顔に無数の蟻がたかる下りは気持ち悪くて仕方なかったです。
改めてホラー映画こそ演技がものをいうんだな、というのに気づきました。これでB級俳優でキャストを固めてたら全く違うものになっていたことでしょう。
内容的には、おばあちゃんの死を皮切りに家族に次々と不幸が訪れていく「死」の連鎖を見せながら、一体原因は何なのかという疑問を浮かび上がらせ、徐々に答えを明らかにしていく演出になっています。
僕にとっては怖いよりも、面白いのほうが勝りました。サプライズが多いし、普通このタイミニグでこの人死ぬ?みたいな意表を突いた展開も多々あるのがいいですね。
終盤はちょっと引っ張りすぎた感があるし、尺ももっと短くてもいいかな、というのはあったけど、全体的には上手くまとまったエンタメホラーになっていました。
ただ、ラストはいまいちかなぁ。あのツリーハウスのシーンはいらないよね。まああれこそがテーマだって言ったらそうなんだけど。
しかしラストのオチも全体の評価を落とすほどのものではなく、最後は無茶苦茶なこと言ってたけど面白かったなあ、と素直に思える作品でした。これはまじおすすめ。
ヘレディタリー/継承のネタバレ
「Hereditary (遺伝/代々受け継がれたもの)」のタイトル通り、この物語は、祖母、母、娘の三代によって受け継がれた、あるものをテーマにしていますね。
そのあるものとは何かを僕なりの解釈で解説していきます。まだ見ていない人はぜひ鑑賞後に読んでください。
ざっくりいうと、グラハム家の母親方の家系がカルト教団にはまっていて王様という名の悪魔キングパイモンの魂を憑依させる人間の体を探していた、というのが事の真相です。
キングパイモンが求めているのは弱った男の体。だからこそ最後に傷だらけのピーターが選ばれたのです。
カルト教団を指導していたのは祖母のエレンで彼女はアニーやチャーリーも思いのままに操っていましたね。
唯一、抵抗していたのは血のつながっていない夫のスティーヴだけでグラハム家はもともとカルト教団の支配下にあったと言えそうです。決して抗うことのできない運命、それが彼らの「遺伝」だったんですね。怖ぁ。
コメント
面白そうですね!
日本は11月ですよ〜長すぎる(涙
なんでいっしょにやってくれないかなぁ・・
これ面白かったです。
U-NEXTでさっき観終わりました。
お母さんの顔、すごかった。ゲットアウトのあの女版て感じ。
ちょっと意味が理解できなかったので、レビューを再読してなるほどと納得しました。
面白かったです!
いつも吹替えで観るのですが、声優さんも凄いなって思いますね。
ちょっとやってみたい気もします^_^
わぉおぉ〜
おお、やっと見てくれましたか。近々この監督の新作が公開されるみたいですよ。それも楽しみです。
お〜続編ですか「楽しみ!」
トニ・コレットが出てるシックスセンスもついでに再視聴しましたよ。
若い、けっこういい女でしたね。あの役者がこれやるのか〜凄いなぁ
PS:
以前のトップページデザインでは「最近のコメント」があったのに・・いまは消えてますね。あえて?
この監督の続編じゃなくて新作の間違いでした。最近のコメント、非表示になってるの気づきませんでした。修正しました。ありがとうございます。
絵にいる隣の女は誰?
ご紹介遅れました。サトミちゃんです。
顔に無数の蟻がたかる下りは強烈ですが僕的にはそれより怖かったのはそれを知ったトニコレットさんの地獄の叫びですね。
キャストがはまってましたよねぇ。あの顔芸だけでも一見の価値ありですもんねぇ。
見るかどうか迷っていたのですが、このブログで高得点だったので映画館で見てきました。
結果は大満足でした(^^) 怖かったです~!!
オープニングからしばらくは微妙に音楽がうるさいなーと感じて(ここは映画男さんとは意見を異にするのですが)今ひとつ集中出来なかったのですが、交通事故の辺りから徐々に引き込まれていきました。
トニ・コレットは勿論、全体的にキャスティングが素晴らしかったですね。
あらすじは特に新鮮だとは思いませんでしたが、とにかく女たちが怖かったです!呪いの被害者でありながら加害者でもあり続けるという構図に頭がクラクラしました。
あと、家族の物語としても、ひりひりするような恐怖感がありました。食卓での言い争いや娘の降霊会のシーンなど、演技とは思えないほどでしたよ。
ただ、映画男さんの仰る通り、ラストのツリーハウスの場面は、ちょっと残念な感じでしたね。種明かしが必要だったということは分かりますけど…。
追伸:
映画を見てから、記事全文を読ませて頂きました。すごく面白かったです!こういう楽しみ方も出来るブログなんだなぁ、と改めて発見しました。それからサトミちゃん、かわいいです(笑)
どうもありがとうございました!
気に入ってくれて嬉しいです。紹介した甲斐がありました。サトミちゃんのことも誉めていただきありがとうございます。
最後の10分くらいがめちゃくちゃ怖くてゾワゾワしました。夫が燃えたところくらいから。そこまでは細かい演出が怖いというよりは不思議な感じ。
それよりもお母さんがとにかくインパクトありすぎて目が離せませんでした。
ほぼお母さんの独り舞台でしたね。
頭空っぽにするとオチで「?」が浮かぶだろうから万人に手放しに面白いと勧める勇気はないけど、ほんとに面白い映画ですよね。
不安の感情が劇中ほぼずっと残り続ける、このゾクゾク感。
僕の勝手な捉え方かもしれませんけど、アリアスター監督の映画は序盤に残酷でグロテスクな描写を突きつけられるから、不安が見てる間ずっと根付いてる感覚がする。
二作品しか判断材料がないんでそれを監督の魅力!みたいに断言するのはいささか滑稽に映るかもしれませんが。
そうして不安がずっと漂い続けていたからか、お父さんの死亡シーンは個人的に落差で笑ってしまいましたねw
同じ燃えるシーンでも、夢の中でお母さんが燃えるシーンは音の使い方とかもあってかちゃんと「怖っ!」ってなりましたけどね。