ベトナムに行きたくなること間違いなしの美しくてはかないショートストーリーをまとめたオムニバス映画。83点(100点満点)
季節の中でのあらすじ
蓮に囲まれた屋敷に住む老人ダオは不治の病に冒されている。ある日彼は蓮売りの少女キエン・アンの歌声に魅了され、彼女を屋敷に呼ぶ。最初はぎこちなく接する二人だったが、屋敷で言葉を交わすうちに二人の間に情が芽生えてくる。
シクロの運転手ハイはある日、外国人相手に商売をしている高級娼婦のランを乗せる。ハイはランの美しさに惹かれ、無条件で彼女に優しくする。
それに対しランは貧しいハイを見下し、横柄な態度を取り続ける。どんなに冷たくあしらわれてもハイはなんとかしてランと一晩過ごそうと、ある勝負に出る。
物売りの少年ウッディは、外国人にライターを売ったりして日銭を稼いでいる。ある日、外国人バーに入ってビールをごちそうになっていると、突然店内で停電が発生。気がつくと大事な商品が消えてなくなっていた。
家に帰ってそのことを親に告げると暴力を振られたあげく勘当されるウッディ。行くあてのなくなった少年は消えた商品を探して町をさ迷い始める。
元軍人のジェイムズはベトナム女性との間に生まれた実の娘を捜索中。はるばるベトナムまで来たのはいいが、頼りは写真だけ。なかなか自分の娘に会えずに、ジェイムズは何日もホテルの前でボーっと時間を過ごすはめに。
季節の中での感想
トニー・ブイ監督によるちょっといい話を集めた感動の名作。ベトナムの風景が美しく、それをさらに綺麗に上手に撮ることに成功しています。
登場人物がみんな陽気で、それでいて一生懸命な人たちばかりで、見ていて微笑ましかった。鑑賞中、ベトナムに行きたくてうずうずしてくる、そんな映画でした。
実際、僕はこの映画の記憶が強烈すぎて、後年にベトナムを訪れています。まあ実際のベトナムは大分近代化やアメリカナイズが進み、映画とはだいぶ違いましたが。
それでも街の活気や人々の明るさや素朴さはこの映画ともそれほどかけ離れていなかったです。
売春婦とシクロ運転手の恋というのも悪くないですね。ツンツンしている高級売春婦を落としたシクロのおっちゃんはなかなかのつわものです。
散々女に冷たくされて、あそこまで低姿勢でいられる男は相当な下心の持ち主に違いない。最終的に上手くいけば、それまでの過程で何があっても全部許すといった余裕が感じられます。
ただあの状態から高級志向の高飛車な女が実際のところ貧乏な男に心を奪われるかどうかはなかなか現実では難しそうです。リアリティーを言えばあまりないけれど、それでも許せてしまえる、心救われるいい映画でした。
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