手品師を主人公にした童話のようなサスペンス仕立てのサイエンスフィクション。そこそこ楽しめるものの、ラストのオチが残念です。52点(100点満点)
プレステージのあらすじ
19世紀末のロンドン。ボーデンはライバルであるアンジャーの瞬間移動マジックを調べるため、彼のマジックの最中に舞台下に侵入する。するとアンジャーはボーデンの目の前で、2人にとっていわくつきの水槽に落ちて溺死。そばにいたボーデンはアンジャー殺害の容疑で逮捕される。
遡ること数年前。若きアンジャーとボーデンは、ある奇術師の下で互いに修行していた。ある時、助手であったアンジャーの妻が水中脱出マジックに失敗し溺死する。
その原因はボーデンが結んだロープであった。2人は決裂し、アンジャーは復讐のためにボーデンの手品を失敗させ、ボーデンは左手の第4・第5指を失う。以後、2人は互いの邪魔をしながら激しく競い合うようになる。
wikipediaより
プレステージの感想
「ダンケルク」、「ダークナイト」、「インセプション」、「インターステラー」、「メメント」、「テネット」などで知られるクリストファー・ノーラン監督による、マジシャン同士のトリック対決を描いたサスペンスドラマ。小説『奇術師』の映画化です。
かつて同じ舞台でアシスタントをしていたライバルのマジシャン二人が、とある”事故”をきっかけにお互いに因縁を抱くようになり、相手のマジックのタネを暴いたりと醜い競争を繰り広げる、ドロドロ復讐劇です。
登場人物の異常な執着心とライバル心が見所で、マジックのタネやトリックは二の次といっていいでしょう。
互いを騙し合う様子はそこそこ楽しめるし、何か面白いことが起こるんじゃないかと期待を持たせます。ヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベールのバトルも悪くなかったです。
しかし途中からマジックの話がいつの間にか超魔術や科学の話になってくるのがいけませんね。
それもシンプルで原始的だった手品のタネが途中から非現実的になっていき、ストーリーはもはやなんでもありの様相を呈していきます。
瞬間移動に替え玉を使う、というのまではいいでしょう。だけど、俳優が一人二役で自分のそっくりさんを演じ始める下りからもう一気に興奮が冷めましたね。
まあ、それでも「グランド・イリュージョン」、「グランド・イリュージョン 見破られたトリック」よりは大分ましかな。
替え玉マジックにこだわるばかりに誰が本当の自分か分からなくなっていく「自我の喪失」というテーマはクリストファー・ノーランがよく使う手ですよね。
クリストファー・ノーランはテーマを追求しすぎて話が飛躍し、いつもSFの世界になっていくから、もったいないんですよ。彼こそ本当だったらリアリティー路線で行ったほうが面白い映画が撮れる監督なのに。
観客をトリックやサプライズで騙すのが好きみたいだけど、この映画のラストは読めちゃったなぁ。結局、マジックの映画って「実はこうでしたー」って逆のことやるだけだからね。
タネ明かしを待たせるだけのストーリーってじれっくなるんですよ。
そしてまたオチがしょぼいことが、この映画が他のクリストファー・ノーラン作品ほど話題になっていない理由じゃないでしょうか。
最後のオチ重視で映画を作ると、一か八かの賭けみたいなことになりますよね。視聴者が大いに驚いてくれればいいけど、「へー」で終わったらなんにもならないからね。
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