作り手のオタクっぽさと職人気質を感じさせる、日本びいきのアニメーションドラマ。絵と音楽がいいです。55点(100点満点)
犬ヶ島のあらすじ
近未来の日本で、伝染病の犬インフルエンザが大流行し、犬たちは「犬ヶ島」に隔離される。
12歳の少年アタリは、捕らわれた愛犬スポッツを捜すため、メガ崎市からたった一人で小型飛行機を操縦し犬ヶ島へと降り立つ。島で出会った5匹の犬とアタリは、心の距離を少しずつ縮めていき……。
シネマトゥデイより
犬ヶ島の感想
「天才マックスの世界」、「グランド・ブダペスト・ホテル」や「ダージリン急行」で知られるウェス・アンダーソン監督による、日本を舞台にしたストップモーションアニメ。
ストーリー性にはそれほど優れていないけど、センスのいい音楽と映像だけでその独特の世界を十分に楽しめる作品です。
物語は、犬を毛嫌いし、犬の根絶を企む悪徳市長と、島流しにされた犬たち、そして犬に深い愛情を捧げる少年の対決を描いていきます。
主人公の少年アタリは自分のボディーガード犬のスポッツを探しに犬が島に降り立ち、島の犬たちの助けを借りながら愛犬を見つけ出し、市長の陰謀と市民の洗脳を解くために悪に立ち向かっていく、というのがおおよその筋書きです。
登場人物は日本語を話し、犬たちは英語を話すという設定が斬新で面白いですね。同時通訳家の通訳を入れることでストーリーを伝えていくんですが、外国人視聴者には少々分かりにくい演出なのに対し、日本人には細かい表現まで分かりやすくなっているなど大分日本びいきになっています。
とにかく絵が綺麗だし、キャラクターが可愛いですね。犬好きにはたまらないんじゃないでしょうか。キャラクターたちをグッズ販売したら普通に売れそうですけどね。
特にアメリカ人留学生の子とかユニークで好きです。この髪型、最高じゃないですか。
僕は犬によく噛まれるので、犬に対して愛着は一切持っていないんですが、そんな人間が見ても、犬たちの理路整然としたシュールなやり取りには可愛げを感じました。
あれだけ可愛い犬たちを登場させ、日本を舞台にし、日本びいきの演出をすればそこそこ日本では売れそうな感じもするんですが、そこまで話題になっていませんよね? どうしてなんだろう。
ウェス・アンダーソン監督の絵は可愛くて、いかにも女子受けしそうな色彩と職人的な繊細さを感じさせます。ただ、大衆をひきつけるにはちょっと芸術肌すぎるんですかね。
どこかティム・バートン的なポジションを狙っているようにも思えるんですが、まだまだ子供を呼び込めていないのが問題かもね。
それとほかの作品同様、この作品のユーモアもあんまり笑えないんですよね、オタクっぽくて。
ストーリーは難しくないけど、子供も大人も楽しめるかというと、多分子供は無理じゃないかなぁ。
クスッと笑うシーンはいくつかあるけど、声を出すほどではないし、ツボにはまる人だけ、はまるっていうだけで。
僕的には日本人が使う英語の発音をわざと日本語っぽくしていたところにはフフっとなってしまいましたが、まあそれだけでしたね。
犬に向かって「お座り(sit)」というところを「shit(ウンコ)」って日本人が言う癖とか「リスペクト」の発音とかかなり馬鹿にされてましたねぇ。ああいう皮肉は嫌いじゃないです。
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