感動したがり人間が見たらまあ泣くんだろうなあ、という映画。いい話だし、感動的なシーンはあるものの、見たらすぐに忘れるであろう作品です。52点(100点満点)
ブレス・しあわせの呼吸のあらすじ
1950年代、周囲の人々からの祝福を受けながら結婚したロビン(アンドリュー・ガーフィールド)とダイアナ(クレア・フォイ)だったが、ロビンがアフリカでポリオに感染して首から下がマヒし、人工呼吸器なしでは生きられない体になってしまう。
イギリスに帰国し息子が生まれたロビンは、病院から出ることを希望する。医師からは反対されるが、ダイアナは自宅での看病を決意する。
シネマトゥデイより
ブレス・しあわせの呼吸の感想
「ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ」のアンディ・サーキスによる初監督作品。ポリオを患ってほぼ全身麻痺になったロビン・カヴェンディッシュの人生を描いた伝記ドラマです。
プロデューサーを務めるのが主人公ロビンの実の息子のジョナサン・カヴェンディッシュなので、いわば身内を描いた闘病物語ですね。
ストーリーはロビンがダイアナと出会い、一目惚れするところからスタートします。二人は恋に落ち、結婚し、ダイアナはロビンの赤ん坊を妊娠します。
ところが幸せな結婚生活が始まったのもつかの間、ある日ロビンが体の不調を訴えると、たちまち手足を動かせなくなり、寝たきりになってしまいます。
原因は弛緩性麻痺を引き起こすポリオ。その日からロビンは首から下は麻痺し、ベッドから一人で立ち上がることもできなくなる、というのが筋書きです。
車椅子の闘病映画というと「博士と彼女のセオリー」や「セッションズ」などが思い浮かびますが、前者は世界的に有名な博士スティーヴン・ホーキングの人生、後者は障害者の性というインパクトのあるテーマで勝負しているの対し、この「ブレス・しあわせの呼吸」はいまひとつテーマがはっきりしませんでした。
障害者の生活や意識向上の提唱者としてのロビンを描きたいのか、寝たきりになっても前向きに生きた彼のポジティブな側面を見せたいのか、あるいは妻の献身的な姿を追いたいのか。
その全てを当たり障りなく描こうとしたばかりに結局ロビンのことが表面的にしか見えてきませんでした。
となるとどういうことが起こるかというと、なんとなく家族愛と死をもってして感動を作るしかなくなるわけで、その点においてはまあまあ成功しているんだけど、心に残る映画かというと、たくさんある闘病ドラマの一つでしかない、というのが正直なところです。
それでも泣く人は泣くんだろうなぁ。感動したくてうずうずしている人は特に。
普通にいい話なんですけどね。奥さんは優しいし、友達は協力的だし、ロビンはユーモア溢れる男だし。
ただ、登場人物がみんないい人すぎてリアリティーがあんまりないんですよ。障害者のロビンがというより、障害者を取り巻く人たちが美化されすぎていて人間味をあまり感じませんでした。
奥さんのダイアナなんて美人で優しくて愛情深くて、ロビンが他の男と浮気してもいいよといっても決して雑念に駆られることなく、夫だけを愛し続けたなんて完璧すぎるじゃないですか。
ダメダメもっと欲望に襲われてよからぬことしてくれないと。もしかしたら本当にあんなに素敵な人だったのかもしれないけど、物語としてはなにかしらやらかしてくれないと面白くないんですよ。
一番嘘っぽかったのはスペインのシーンですかね。ロビンは家族と共に車ごと飛行機に乗り込み、スペインに向かうんですが、現地でトラブルに見舞われると、地元の親切なスペイン人たちが集まってきては助けてくれ、いつの間にかフラメンコを歌って踊っての宴が始まる、というのが笑えました。
あれを日本に置き換えたら北海道で道に迷って地元の人がよさこいソーランを踊りながら道案内してくれるレベルの話ですよ。
それにしても最近の洋画の邦題ってなんでこうも「しあわせ」って言葉を使いたがるんですかね。日本の視聴者、どんだけ「しあわせ」って言葉に弱いんだよ。
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