悲しげな女が欧州や韓国の海辺をさまよう静かな大人向けドラマ。ホン・サンス監督の映画を見たことがない人には結構ハードルの高い映画かもしれません。40点(100点満点)
夜の浜辺でひとりのあらすじ
不倫騒動に巻き込まれたヨンヒ(キム・ミニ)はキャリアも放り出して海外に逃避し、訪ねてくるはずの恋人を待ち続けていた。時は過ぎ、韓国に帰国したヨンヒは、昔からの友人たちとの再会をきっかけに女優復帰を模索する。
シネマトゥデイより
夜の浜辺でひとりの感想
「3人のアンヌ」、「ソニはご機嫌ななめ、「逃げた女」などでお馴染みのホン・サンス監督によるベルリン映画祭に出品された映画で、ちょいうざ女が海辺でウジウジする話です。
不倫スキャンダルがきっかけで韓国にいられなくなり、女優活動を中断して欧州に行った女が孤独と愛とこれからの人生について熟考していく様子を限られたロケーションとシーンの中だけで会話中心に描いていきます。
撮影スタイルは「3人のアンヌ」や「ソニはご機嫌ななめ」と全く同じで低予算、少人数のキャスト、芸術路線の演出、脚本勝負を貫いていますね。
見方によってはただ韓国人の女が小声でボソボソ喋るだけの作品なので途中で寝てしまう人がいてもおかしくないでしょう。
特に何も起こらず、視聴者はヒロインのセリフをなぞっていくことで彼女の考えと今の心境を理解していくようになっていて、男で失敗し、新しい人生を始めようとしている悩める大人の女に共感する姿勢がなければきついかもしれません。
かくいう僕はホン・サンス監督の映画に免疫があったからまだ最後まで見れました。韓国人女性たちが小声で喋る韓国語が耳に妙に居心地がよく、韓国語が分からないだけに不思議な色っぽさもありました。
しかし肝心な会話の中身はどうかというと、ユーモアに欠けるし、感傷的になっている女の哲学ぶったセリフのオンパレードはやや寒いです。
空はいつも曇り空で、それはヒロインの心境ともシンクロしているのでしょうか。とにかく終始どんよりと暗いのがいけませんね。
一つ気になったのは登場人物の韓国人女性たちがもれなくみんなタバコを吸っていたことです。韓国ってあんなに女性の喫煙率が多いのかな? それともあれがインテリアーティスト層の格好の付け方なのでしょうか。
飲み物なんかを飲みながら美味しそうにぷかぷか吸っていたりして、さながら「コーヒー&シガレッツ」の韓国版ともいえる雰囲気すらあります。
ヒロインはそうでもないけど、他の女優たちはなかなかの美人さんたちが出ています。それがまたみんな小声でボソボソ喋るんですよ。
韓国映画というと、いつも登場人物が男も女も熱くなってギャーギャー言っているイメージだからか、おっとりしている人は何倍も可愛く聞こえますね。
そして感情的なシーンを極力省いて、常に静かなセリフの言い回しで仕上げる演出こそがホン・サンス監督作品が他の韓国映画とは一線を画すところですね。
この映画のヒロインのように韓国では、女性がスキャンダルを起こしたら外国に逃亡したくなるほど、肩身の狭い思いをするのでしょうか。
昔、カナダで韓国人女性と知り合ったことがあるんですが、彼女もまた影のある女で、ある日僕に「私は韓国ではもう生きていけないの」と言っていました。その理由というのが夫と離婚をしてバツいちになったからだそうです。
たったそれだけのことでも肩身が狭くて外国にでも出て行かないときついんだって。かれこそもう20年ぐらい前の話なので今頃は韓国の状況も変わっているのでしょうか。
あるいはこの映画のようにいまだに夜の海辺でこれからどうやって生きていこうかと悩んでいる韓国人女性が欧米にはいたりするのかな。
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