日本映画には珍しい暴力と色気とエンタメのバランスが取れている優れた作品。外国人に見せたくなる映画です。75点(100点満点)
ビジランテのあらすじ
閉鎖的な地方都市で、三兄弟の次男・二郎(鈴木浩介)は市議会議員を務め、三男・三郎(桐谷健太)はデリヘルで雇われ店長をしており、彼らは全く異なる世界で生きていた。ある日父親が他界し、行方をくらませていた長男・一郎(大森南朋)が30年ぶりに帰郷する。一郎は、遺産は自分のものだと主張するが……。
シネマトゥデイより
ビジランテの感想
「22年目の告白-私が殺人犯です-」や「SRサイタマノラッパー」でお馴染みの入江悠監督による、政治とやくざと家族の物語。
面倒な人間関係で成り立っている田舎町を舞台にした群像劇で、脚本と演技が素晴らしくストーリー構成がいいです。
それに加えて暴力とベッドシーンで飽きさせず、複数のエピソードが時間と共にそれぞれ破滅と悲劇のクライマックスへと向かっていく様子に興奮します。リアリティー路線というより、エンタメ度の高いバイオレンスムービーですね。
物語は、母親が亡くなり、DV癖のある政治家の父親に育てられた三兄弟が父親の死をきっかけに再会し、父親が残した土地をめぐって様々なトラブルに巻き込まれていく様子を描いていきます。
閉鎖的な田舎町における利権争い、政治家の汚職、やくざとの癒着、土地と家族に対する因縁を絶妙に表現していて、暴力描写にしても性描写にしても、いい意味で容赦がないです。
裸のシーンは多々あるのに不思議と興奮はせず、どこかいつも暴力と隣り合わせな裸ばかりでした。
それもそのはず劇中の女性たちは風俗嬢だったり、やくざ者の女だったり、政治家の妻だったり、いずれも男たちに利用されている気配があります。あれは田舎の男尊女卑社会を象徴しているのかなとも思えました。
三兄弟が一郎、次郎、三郎というベタな名前なのが最初ちょっと気になったんですが、大人になった三人の関係性を過度な説明を加えずに浮かび上がらすのにはあの名前が最適だったのかもしれません。
あれが武、勉、勝とかだったら誰が長男で、誰が次男だよってなっていたでしょうね。しかし一郎、次郎、三郎の名前だけで関係性が伝わるのは日本人だけなので、外国人が見たらどうなんでしょう。もしかしたら分かりにくいのかな。
なんでそんなことを考えたのかというと、どこか外国の政治マフィアドラマを見ているかのような錯覚に陥ったからです。これは外国人にも受けるんじゃないかなって思ったわけです。
今の時代、あれだけやくざと政治家がずぶずぶの関係だったらすぐに問題になるだろうから日本のリアリティーとはかけ離れている部分も少なくないですが、広大な土地に地元の権力者たちが施設を建設し、利権をむさぼって、私腹を肥やしていくなんていうのは国内外問わず、よくありそうな話ですよね。
脚本もさることながら、この映画の功績は俳優たちによるものが大きかったかなとも思えました。
三兄弟のうち鈴木浩介と桐谷健太はコントラストが効いていて良かったです。鈴木浩介の涙ながらのスピーチシーンとかすごかったですね。
あと印象的だったのはギャングのリーダー役を演じたラッパーの般若。何をしだすか分からない危なっかしさとオーラがプンプンしていて、リーダーに相応しい迫力がありました。
般若に限らず、全体的に気迫とパワーを感じる面子ばかりでしたね。そんなメンバーをひとつにまとめて面白い映画に仕上げた入江悠監督。今後彼は一体どうなるのか。
つまらない企画物の映画なんて撮らずにぜひ自分で書いたオリジナルの脚本でこれからも勝負してもらいたいですねぇ。
コメント