エミリオ・エステヴェス監督による感動狙いの旅物語。演出がバレバレで引きます。 35点(100点満点)
星の旅人たちのあらすじ
息子のダニエル(エミリオ・エステヴェス)が、ピレネー山脈で嵐に遭遇して死んだと知らされたトム(マーティン・シーン)。キリスト教巡礼地サンティアゴ・デ・コンポステーラを巡る旅を果たせなかった息子をとむらい、彼が何を考え巡礼に臨んだのかを知ろうとトムは決意。
ダニエルの遺品と遺灰を背負い、 800キロメートルの道を歩く旅に出る。その途中、夫のDVに苦しんだサラ(デボラ・カーラ・アンガー)や不調に陥った旅行ライターのジャック(ジェーム ズ・ネスビット)と出会い……。
シネマトゥデイより
星の旅人たちの感想
巡礼地サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指すロードムービー。息子の果たせなかった夢を父が代わりに叶える、というコテコテの“いい話”で途中からいい話を通り越して、寒くなってしまう惜しい映画。
巡礼映画といえば、「ルルドの泉で」や「長い旅」を思い出しますが、それらと比べるとこの映画は演出が「アメリカだなぁ」と思わせる下手さがあり、巡礼の旅がただの観光になっていました。
もしくはあのルート自体がすでにただの観光地になり下がっているといえなくもないです。立ち寄る宿泊所でその都度スタンプを押してもらうなんて、まるで電車の駅を回るスタンプラリーで、宗教色より商業色が上回ってしまっています。
そのせいか巡礼者それぞれの宗教観が全く見えてこないのがなにより浅い映画になった原因でしょう。
特にひどかった演出は、スペインの田舎で主人公トムが荷物をジプシーの子供に盗まれ、後からその親が謝って荷物を返しにくる下りです。
「盗みなんてジプシーとして恥ずかしい。申し訳ない」と子供の父親がトムに謝罪し、「お返しといってはなんですが、私たちのパーティーにあなたがたを招待します」などというありえないオファーを出します。
そしていざパーティーに行ってみたら、ジプシーたちみんなが焚き火を囲んでフラメンコを踊っている、というさらにファンタジーな展開になって目を伏せたくなりました。
ほかにも、気難しくて、人好き合いの苦手なトムがなぜあの3人と共に行動するのかが解せませんでした。
みんな一人で巡礼に来たはずなのに、いい歳したおっさんおばさん観光客がお互いに依存し合って、最後まで一緒に行動している姿が大学生のバックパッカーのようで気持ち悪かったです。
巡礼している間にトムが孤独を求め、とことん自分と向かい合い、また死んだ息子との関係を悔いるような内容だったら、もっと深みが出たように思います。
外国を一人で旅行していると、宿などでやたらと行動を共にしたがる一人旅の旅行者に遭遇しますが、ああいう輩は理解に苦しみます。
おそらく寂しさもあるし、大勢でいたほうが安心だという心理なのでしょう。その手のタイプは今後一切絶対に会わないだろうな、というときでもしっかり連絡先を聞いてきたりします。
別れ際にハグをしてくる日本人もいます。おそらく自分の国ではそれほどフレンドリーでもないし、ハグなんてしないし、連絡もマメじゃない人のほうが旅行中に限ってそういった一連の行動に出るのはなぜなのか。なんでもっとサラっと出会って、サラッと別れられないかなあ。
そう、この映画はそういうサラッとできないジメジメの中年男女を描いた、カビ臭い映画なのです。
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