スポンサーリンク

ビリー・リンの永遠の一日はアメリカ的戦争心理ドラマ!感想とネタバレ

※当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています
※当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています
この記事は 約4 分で読めます。

イラク戦争の帰還兵の心理に鋭く切り込む人間社会ドラマ。アメリカやアメリカの戦争を一風変わった視点で描いた面白い作品です。67点(100点満点)

スポンサーリンク

ビリー・リンの永遠の一日のあらすじ

2005年。19歳の青年ビリー・リン(ジョー・アルウィン)は、イラク戦争における活躍がメディアで紹介されたことで、一躍ヒーローに。アメリカに帰国して凱旋(がいせん)ツアーで各地を回るうちに、自分が英雄として扱われている事実に違和感を抱くようになる。戦地へ戻る前日、彼は感謝祭に開かれるアメリカンフットボールのハーフタイムイベントにゲストとして招かれる。会場に集った大観衆の歓声を浴び、ショーが進んでいく中、ビリーは戦争の記憶と現実が混濁するような感覚に陥り……。

シネマトゥデイより

ビリー・リンの永遠の一日の感想

ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」、「ラスト、コーション」、「ブロークバック・マウンテン」などでお馴染みのアン・リー監督による同名小説を基にした戦争もの。

イラク戦争で活躍し、アメリカに生還した兵士たちがメディアや国民から英雄扱いされ、アメフトのハーフタイムショーに招待される様子を描いた、派手さはないもののじわじわくる軍隊あるある物語です。

主人公は、イラクの戦場で危険をかえりみず仲間を救おうとしたビリー・リン。銃弾が飛び交う中、勇敢に仲間のもとに駆け寄る彼の映像がメディアで報じられると、ビリー・リンは一躍有名人に。彼の部隊「ブラボ」は帰国後、凱旋ツアーを行い、テキサスのアメフトチームからも招待を受けます。

一般市民が熱狂し、エールを贈る中、しかしブラボの兵士たちはどこか冷めた様子で、アメリカで普通の生活をしている人々と戦場にいた自分たちとの間にある強い温度差を隠し切れません。

アメフトの試合会場でビリー・リンはチアガールの子と出会い、恋に落ちますが彼女もまたビリー・リンのことを英雄として、一人の兵士として見ているような気配があります。

ハーフタイムイベントでは言われるがままデスティニー・チャイルドと共演させられ、複雑な気持ちになったビリー・リンは自分のしてきたことや、これからのことを考え始めます。

そんなとき姉からメールが届き、精神病を理由に軍から除隊することをすすめられ、ビリー・リンは大きな決断に迫られる、というのが筋書きです。

主人公目線でイラクの戦場と平和なアメリカのシーンを交互に見せるようにして物語は進みます。戦争映画とはいえ戦場のシーンは一部で、アメフトの試合会場のシーンが大部分を占めています。

そのため戦争アクションは極力省かれていて、主人公の心理状態にフォーカスしているのが特徴です。かといって「マイ・ブラザー」のようなトラウマを感情的に表現するのではなく、静かに淡々と主人公の心の中を覗いていくような雰囲気がありました。

生還した兵士たちを英雄扱いする人々の会話がさもありそうで、アメリカをよく表現しているなぁという感じがします。

人々が国のために戦った軍人を賞賛するのはいいんだけど、薄っぺらいからちょくちょく失礼なことを聞いたり、言ったりするんですよね。

「人を殺したことある? どんな感じなの?」とか「軍隊にはゲイがいるの?」などといったことをチャカしたように聞く人がいたり、「実際のところアメリカ軍はイラクでまともな任務をしているのか?」といったことに疑問を向ける人もいます。

その対応に疲れ果てる兵士たちのリアクションも見所の一つでしょう。自分が何のために戦っているのか意義を見出せなくなる主人公の心理には真実味があるし、それでも他にやりたい仕事もなく、軍隊こそが自分の居場所だという兵士たちの状況も現実味があって考えさせられます。

除隊したい気持ちもあるけど、命がけで一緒に戦ってきた仲間たちをいまさら見捨てられない、という集団心理も当然芽生えるでしょうね。使命感や仲間愛を優先したら、ビリー・リンのように軍隊から抜けられなくなるのでしょうか。

ブラボの活躍を映画化して金儲けを企む大人たち、自分の社員だった若者も戦争に行ってるからイラク戦争は人事じゃないと豪語する石油会社の社長など、色々なキャラクターが出てきますが、中でも一番胡散臭かったのはチアリーダーですね。

可愛いくて色っぽいけど、あいつが一番ビリー・リンを偶像化して悦に入っているような印象を受けました。除隊するなら別れるわ、とか平気でいいそうだもん。あー怖い。

コメント

  1. 加藤 より:

    なすべきことをやれ!と繰り返し言うてましたが、戦争に対する欺瞞より、傍観者に対する欺瞞を冷酷に描いてますね。戦争映画も描き方が多様になりました。ヒトラーの忘れものも観ましたが、視点を変えると全く違うものがみえる。なすべきことをやれ!という雑念否定が、傍観者に対しての皮肉になる。やっぱ、チアガールが一番アホにみえました。かなり皮肉効いてますねぇ。笑笑