不幸そうなエピソードを詰め込んだだけの家族ドラマ。演技が下手すぎて、見れたもんじゃないです。16点(100点満点)
月と雷のあらすじ
幼いころに母親が家を出て行って以来、一般的な家庭を知らずに育った泰子(初音映莉子)は、スーパーのレジ係として働いている。彼女は亡き父がのこした家と職場の往復する毎日を送っていたが、婚約者もいてそれなりに充実していた。だがある日、突然父の愛人の息子である智(高良健吾)が姿を見せたことにより、彼女の生活は一変する。
シネマトゥデイより
月と雷の感想
「花芯」や「海を感じる時」などで知られる安藤尋監督による、リアリティーのない低クオリティー家族ドラマ。同名小説の映画化で、よくある、ひょんなことから男女が一緒に暮らし始める、ありえないエピソードのオンパレードです。
出演者の演技が下手で、セリフは無機質でずっと同じトーン。何を考えてるのか分からない無表情で無気力の人たちがダラダラ生活するだけのストーリーに時間を奪われます。
幼い頃に一緒に暮らし、疎遠になっていた”異母兄弟”の智がある日突然ヒロインの泰子のもとを訪ねて来ます。泰子はびっくりして逃げるものの、断りきれず食事をしてお酒を飲んで、家に泊めてあげて、なんとなく一緒に暮らし始めるってもうその時点でありえないじゃないですか。
それもヒロインには結婚を決めた相手がいて、結婚を目前に智の子供を妊娠してしまうって。いかにも状況を複雑にするためだけに作られたプロットがひどいですね。
さらにヒロインはかつて自分を捨てた母親とテレビ番組で再会し、その母親には別の男との娘がいて、なぜかその異父姉妹まで自分の家に転がり込んでくるという訳の分からない展開が続きます。
挙句の果てには自分の父親の愛人だった智の母親まで引っ越して来たりして、もうなんのこっちゃいです。とにかくかつてヒロインを捨てて出て行った家族たちが、都合良く自分のもとに帰ってきた、という状況が作りたかったようですが、なんであんな不便な田舎にわざわざみんなが住みに来るんだよって話だし、なんとなくみんなを受け入れてしまう泰子の心境が意味不明ですね。
キャストの演技が絶望的に下手で、智の役を演じた高良健吾なんて、「泰子ちゃん!」って名前の呼び方がすでに不自然だからね。日本の俳優不足は本当に深刻ですね。まともなのは泰子(初音映莉子)の婚約者を演じた黒田大輔ぐらいで、あとはもれなくひどいです。
初音映莉子によるヌードシーンもあるにはあるけど、ヒロインが妊娠するというフリに使われているだけで、ストーリー上自然に男女が結ばれるわけではありません。
あんなにノリ気じゃなかった泰子から自分で布団に入っていって、自分で脱いでおっぱじめるっていう一連の行動の辻褄が合わないし、伏線をはるために撮りました感が半端ないんですよね。こんなもんベッドシーン目当てで見たら痛い目に遭いますよ。
この手の映画がいつも同じなのは、複雑な家庭に生まれた子供は不幸で、心に深いトラウマを抱えているっていう前提で話が進んでいくところです。
ヒロインの泰子は明るくて、前向きで、婚約相手ともラブラブで、母親がクズでも全く気にしていないっていう設定では脚本が書けないんですよね。作り手が固定観念の塊だから。
それより悲しくて孤独なヒロインの不幸アピールをしたほうが共感が得られるとも思っているのでしょうか。幸せを描けよ、幸せを。
感受性が豊かな幼児期や思春期に周囲と違う自分の環境を悲観したりするのはまだいいとしても、いい大人がいつまでも過去にとらわれてウジウジ悩んでるだけの話が邦画には多すぎて、吐き気がしますね。誰が得するんだろう。
「私みたいな不幸な女は押しに弱く行きずりの男と寝て妊娠しちゃうの。でも子供は生むわ、だってそれが私の運命だから」。
この映画を簡単に説明するとこんな感じになります。分かる、分かる、その気持ちって普通ならないだろ。
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