思わせぶりで、スローなドロドロ裁判物語。是枝裕和監督の作品の中では大分つまらないほうです。44点(100点満点)
三度目の殺人のあらすじ
勝つことを第一目標に掲げる弁護士の重盛(福山雅治)は、殺人の前科がある三隅(役所広司)の弁護を渋々引き受ける。クビになった工場の社長を手にかけ、さらに死体に火を付けた容疑で起訴され犯行も自供しており、ほぼ死刑が確定しているような裁判だった。しかし、三隅と顔を合わせるうちに重盛の考えは変化していく。三隅の犯行動機への疑念を一つ一つひもとく重盛だったが……。
シネマトゥデイより
三度目の殺人の感想
「海よりもまだ深く」、「海街diary」、「そして父になる」、「空気人形」、「万引き家族」、「真実」などでお馴染みの是枝裕和監督の裁判ドラマ。
様々な解釈ができるという点では深読みドヤ顔馬鹿野郎たちが大喜びしそうな作りになっているのに対し、テンポは悪く、間を取りすぎた会話がじれったいです。
会話を中心に物語が進んでいくのはいいとしても、その会話にいちいち必要以上の時間を割いているので興奮が感じられず、途中何度も寝落ちしてから起きては見返すというのを繰り返してやっとのことで最後まで鑑賞しました。
是枝裕和監督は最近守りに入っているなぁ、っていう感じがしますよね。特にキャスティングが。なんで福山雅治と役所広司なんだろう。お馴染みの人たちばかり起用しないでもっと新人を発掘しろよって思うんですよ。
「誰も知らない」で柳楽優弥を見つけ出したように実力と名声のある監督だからこそ、新しい俳優たちを起用して世に出していくべきなのに安全路線走ってますよね。
物語は、勤務先の社長を殺した容疑で逮捕された三隅が、公判中に供述をコロコロ変えることによって弁護士の重盛をはじめ、検察官、裁判官、被害者家族らを翻弄していき、いつの間にか真実が闇の中へと葬り去られていく様子を描いていきます。
いわゆる犯人探しのストーリーというより、犯人の動機探しの物語といった印象を僕は受けました。なぜ三隅は社長を殺したのかを追求していくと、三隅と社長の娘咲江の関係が浮かび上がり、咲江は父親である社長から性的虐待を受けていたことが発覚します。
やがて強盗殺人だと主張していた三隅は、本当は咲江を父親の性的暴行から守るために社長を殺したのではないかという推測が上がります。あるいは咲江も共犯で彼女をかばうために三隅は一人で罪を背負ったという考え方もできますね。
咲江が一人で父親を殺したと解釈をする人もいるようです。犯人は一体、誰なのかはその人の解釈によっても違うだろうし、あえて触れないようにしているところは戦略的に成功したといえそうです。
それによって視聴者が意見を交わしてギャーギャー騒いでくれるんだから、作り手としてはしてやったりでしょう。
ただ、演出的にはよくても、突っ込みどころはありますよね。最大の突っ込みどころは、三隅が自分の娘と重ね合わせて見ていた咲江と肉体関係を持ったという部分です。
お前は娘とやれるのかよっていう話なわけで、三隅が咲江に手を出したら、彼が正義感を振りかざし、父親を殺す意味が完全に消滅してしまいます。
咲江からクズな父親のことを相談されて、「なんて悪い奴だ。俺が殺してやる」ってなりながら自分は自分で咲江をやっちゃうって絶対ダメだろ。
「大丈夫、大丈夫。俺はお父さんみたいに乱暴なことはしないから」とか言ったのかなぁ。ゲスいわー。それこそ極悪人だろ。それをなに美談にしてんだよ。
三度目の殺人の解説
さて、犯人は誰なのかを考えたとき、僕の解釈では三隅の単独の犯行だという結論に至りました。共犯の可能性はあるけど、少なくとも咲江の単独犯はないでしょう。
劇中では三隅は決して感情で殺人を犯していないことが強調されていて、それはまるで空っぽの器という表現がされていました。
つまり彼は自分の利害関係のために殺しているんじゃなくて、世のため、人のために殺しているのです。だからこそ彼なりの大義名分があれば人を殺すことに対して抵抗がないのでしょう。
また、必ずしも正義が報われない、真実が優先されない理不尽さを嘆く彼は裁かれるべき者が裁かれない世の中にも嫌気がさしたのでしょう。
そしてラストは弁護士重盛が言うように、やはり咲江につらい証言をさせないためにも、彼女に変な疑いが向けられないようにと証言を変え、死刑を選んだと考えられそうです。
死刑判決を受けた三隅の顔がやけに清清しい表情をしていたのはそのせいだったんじゃないのかと感じました。
ほかにも色々と比喩的な表現が見られたけど、それをヒントにするまでもなく、そもそもタイトルが「三度目の殺人」なんですよ。この「三度目」というのがポイントです。
一度目の殺人は、三隅が大昔に取り立て屋を殺害した事件
二度目の殺人は、三隅が社長を殺害した事件
三度目の殺人は、三隅自ら死刑になるのを導いた裁判
もしそれぞれ犯人が違うなら、あえて「三度目」とは言わないでしょう。三度目って一度目、二度目を経験している人が使う言葉だから、あくまでも三隅目線のタイトルってことです。
コメント
僕もこの映画はつまらなかったです。 そもそも犯人が誰かがオチではない映画や解釈を他人に委ねるタイプの映画は「隠された記憶」や「殺人の追憶」などすでにあるから決して新しくはないし その二作と比べて緊張感に欠けていたから映画男さんと同じく半目を開けるのがやっとでした。
眠くなりますよね。
咲江と三隅がそういう関係になるシーンってありましたっけ?
今見終わったばかりなんですけど。
U-nextで見たからカットされてたのかな?
暗示されてるだけで、具体的なシーンはなかったですね。
まあ最大の謎はこの弁護費用がどこから出ているかでしょう(笑)。国選弁護では完全に足が出ます。
咲江が北海道の大学を志望しているのも全部ぶちまけて母親から去っていくという暗示かもしれません。
まあ、なかなか面白かった。
深読みドヤ顔馬鹿野郎たち、受けました!
福山の演技も役所広司の演技もあまりよいと言えない、そう思いました。
早送りを我慢するのが辛かった。