浮気、裏切り、自殺未遂など愛情の薄いエピソード満載の家族群像劇。スローでちょっと難しい大人向けフランス映画です。44点(100点満点)
映画ハッピーエンドのあらすじ
13歳のエヴァはスマホで母親のことを隠し撮りしている。自分勝手優しさに欠ける母親にエヴァはやがて鎮静剤を飲ませて、意識を失わせてしまう。
一方、アンヌが経営する建築会社の工事現場のカメラは、土砂崩れの瞬間を捕らえていた。これにより作業員が土砂に巻き込まれ、大怪我を負い、命を落としてしまう。
その頃、母親が昏睡状態に陥ったことで誰も面倒を見る人がいなくなってしまったエヴァは、両親の離婚後離れ離れになっていた父親トーマスと再会し、一緒に暮らすことに。
トーマスは新しい妻と赤ん坊、姉のアンヌ、彼女の息子ピエール、父親のジョルジュと大きなお屋敷で一緒に暮らしていた。
アンヌの息子ピエールは、酒癖が悪く、何かとトラブルに見舞われることが多かった。アンヌは彼に会社を継いでもらいたいと考えていたが、土砂崩れの責任を追及されるとすぐに取り乱してしまう。ピエールは事故の被害者家族の家に出向くも、逆に被害者の息子から暴力を振るわれ、ますます自暴自棄になっていく。
そんな中、エヴァの母親は息を引き取ってしまい、エヴァは新しい家族と窮屈な生活を強いられることになる。やがて一番近いはずの父親が浮気をしていることを知ると、エヴァは誰も信じられなくなり、ある行動に出る、、、
映画ハッピーエンドの感想
「愛、アムール」、「白いリボン」、「ファニーゲーム U.S.A.」などでお馴染みのミヒャエル・ハネケ監督によるドロドロ家族ドラマ。
独特のテンポと複雑かつ微妙な人間関係の描き方は健在で、描写がいちいち細かいです。演技、演出の完成度も高いです。
一方で面白いかといったらあまり面白くなかったですね。撮り方は上手いし、話の流れも上手くできているんだけど、それほどハラハラしないし、話の中に引き込まれなかったです。
強いていうならもうちょっと映像で見せてくれたら良かったのに、と思いましたね。映像的にインパクトがあったのは土砂崩れのシーンぐらいです。
あれはリアルだったし、どうやって撮ってるのか想像がつかないぐらいすごかったです。しかしそれ以外は、会話中心でストーリーが進むだけで、肝心なところは見せないっていうスタンスです。
例えば、エヴァが母親に鎮静剤を飲ませるシーンがあってもよかったし、トーマスが浮気をするシーンも見たかったですね。
一番やらかしてくれたのはピエールだったけど、彼が落ちこぼれていく背景が分かりません。おじいちゃんが孫に冷たいのも不思議だし、裕福で恵まれた家族がそれぞれ抱える闇。それが僕にはあまり伝わって来ませんでした。
そんな中でも終始悲しげな顔をしている少女エヴァの溜まりに溜まったストレスと愛情不足や人間不信からくる屈折した感じはよかったです。
エヴァ役のファンティーヌ・アルドゥアンは存在感あって将来が楽しみな女優ですね。泣き演技はすごかったなあ。
ラストシーンは、タイトルの「ハッピーエンド」にかけているのでしょうか。もちろんミヒャエル・ハネケ風の皮肉が込められていて、あれをハッピーと取るかどうかは解釈によって変わってきそうです。
さすがに最後のエヴァの行動は怖いですけどね。なんでもかんでもスマホで撮るなよって。
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