面白いストーリーではないものの、日本映画に珍しくクオリティーの高い人間ドラマ。特に出演者の演技がいいです。53点(100点満点)
彼女の人生は間違いじゃないのあらすじ
東日本大震災からおよそ5年がたった福島県いわき市。市役所に勤めている金沢みゆき(瀧内公美)は、週末になると仮設住宅で一緒に暮らす父親・修(光石研)に英会話教室に通うとうそをつき、高速バスで東京へ行き渋谷でデリヘル嬢として働いていた。ある日、元恋人の山本(篠原篤)からやり直したいと迫られるが、別れる原因にもなった震災で死んだ母をめぐる彼の言葉を思い出してしまう。さらに、震災で妻を亡くし、仕事を失ったことから立ち直れずにいる父親にいら立ちを募らせる。
シネマトゥデイより
彼女の人生は間違いじゃないの感想
「娚の一生」、「100回泣くこと」、「きいろいゾウ」、「さよなら歌舞伎町」などでお馴染みの廣木隆一監督による、震災後の福島県民を主人公にした群像劇。
東日本大震災から5年後、福島県いわき市の住人たちは何を考え、何を感じて生きているのかをリアルなタッチで描いていきます。
登場人物たちは、震災でトラウマを受け、未来に希望を持てず、なかなか立ち直れそうもない人ばかりで、ある者はデリヘル嬢として働き、またある者はパチンコに入り浸れ、またある者は家に閉じこもってはなんとか今をやり過ごしています。
物語の主軸となるのはデリヘル嬢のみゆきで、彼女は福島から長距離バスで上京し、仕事が終わったらまた福島に戻るという生活を送っています。
わざわざ東京にまで出て行く必要もなさそうだけど、福島を出て遠くへ行くことがみゆきにとってはリフレッシュになり、福島の現実から一瞬でも離れるための手段だったのかもなぁ、とも思えました。
本当なら福島を出て行きたい。でも父親がいるし、見捨てるわけにはいけない。その父親はしかしせっかく政府から受けた保証金をパチンコで無駄遣いしたりして、自分をイラつかせる。
そんなときに昔の彼氏がまた会いたいと言ってみゆきの前に現れます。でもみゆきはデリヘルで働いている後ろめたさもあり、元彼になかなか心を開けない、という筋書きになっています。
全体的に暗く、悲しげで、悲観的な空気に包まれているため、決して見ていて楽しい話ではありません。福島県民は不幸だ、可哀相だ、といった前提で話が成り立っているのもどうかと思いますね。
登場人物の中に底抜けに明るくて、とっくに吹っ切れました、という人が一人ぐらいいても良かったんですけどね。福島=可哀相みたいなイメージって福島県の人にも、そろそろいい迷惑なんじゃないかなあって思うんですよ。
一方、撮り方が上手く、映像が綺麗で、一つ一つのシーンの見せ方にはこだわりを感じました。キャストも僕の好きな映画にちょくちょく出てくる、実力はあるけどそれほど知られていない人たちが多く出演していて、それぞれ演技が素晴らしかったです。
風俗嬢を演じた瀧内公美は、全裸になってベッドシーンに挑戦しているし、色んな意味で本気度が伝わってくる作品です。
これで絶望の話の中にももうちょっとユーモアがあって、テンポが良かったらもっといい作品になってたことでしょう。
みゆきが元彼と再会し、ヨリを戻すかどうかの瀬戸際のシーンはあれどうなんでしょうかね。
「ホテル行こう。それで私のことを昔のように抱けたら付き合おう。そうじゃなかったら忘れよう」
地震で母親が死んだとか、友達が死んだとか散々暗い話をした後で、こんなことを言われた男は一体どうしろって言うんでしょうか。
早い話が、「まだ私で勃起するの? ねえどうなのよ?」ってことですよね。それを物差しにしなくてもね。
まさかとは思ったんだけど、その後二人して本当にホテル行ってたからね。あのテンションで、昔のように抱けってどんだけプレッシャーだよ。あの状況で興奮するほうがおかしいだろ。
コメント
芸術路線の大人向け作品という感じでしょうか
現実路線ですね、芸術性があるかどうかは微妙なところです