心理的に怖くなる、センス溢れる、芸術路線サイコスリラー。才能溢れる監督と若手俳優によるコラボのおかげで、いい作品に仕上がっています。76点(100点満点)
聖なる鹿殺し・キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのあらすじ
心臓外科医のスティーブン(コリン・ファレル)は、美しい妻(ニコール・キッドマン)と二人の子供と一緒に郊外の豪邸に住んでいた。しかしある少年(バリー・コーガン)を家に招いたことをきっかけに、子供たちが突然歩けなくなり目から赤い血を流すなど、異変が起こり始める。スティーブンは、究極の選択を強いられることになり……。
シネマトゥデイより
聖なる鹿殺し・キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアの感想
「籠の中の乙女」、「ロブスター」などの作品で知られるヨルゴス・ランティモス監督による怖くて、キモくて、ちょっぴり色っぽいサイコスリラーで、ギリシア悲劇の1つ「アウリスのイピゲネイア」が基になっているそうです。
心臓医の男が、かつて自分が手術を担当した患者の息子と仲良くしたことが原因で、家族に次々と異変が起こる様子を描いた、ホラー映画と呼んでもいい怖い物語です。
物語の軸となるのは、心臓医のスティーブンと元患者の息子マーティンの二人です。スティーブンはアルコール依存症だった昔、マーティンの父親の手術を担当。しかし手術前に飲酒をしたせいもあって手術は失敗に終わり、マーティンの父親は命を落としています。
術後、スティーブンはある種の罪悪感を抱き、マーティンと定期的に会うようになります。マーティンはスティーブンを父親のように慕うようになる一方で、父親が死んだのはマーティンのせいだということを知っており、密かに彼を恨んでいるのでした。
やがてスティーブンがマーティンを自分の家族に紹介すると、その日を境にスティーブンの息子と娘が突発的な奇病に襲われ、身体が痺れ、自分で歩くこともできなくなっていく、というのがストーリーの流れです。
常に何かが起こりそうな危険な雰囲気が漂っていて会話や間の取り方が絶妙ですね。前半に出たセリフが後半でつながっていく感じは快感ですらあります。
映像がきれいで、ひとつひとつのシーンが芸術的な写真みたいでした。ほとんどのシーンを引きで撮っている撮り方も面白かったです。
キャストの中ではコリンファレルやニコールキッドマンといった有名どころを抑えてマーティン役を演じたバリー・コーガンの演技が群を抜いていましたね。上手すぎてびびりました。オタクっぽくて、華奢で、弱そうなのに怖いってすごいな。
「ダンケルク」にも出演した彼ですが、本作ではなにをやらかすか分からないストーカー少年といった役柄。暴力を振るわけでもなければ、汚い言葉を使うわけでもなく、気味の悪い言動だけで視聴者を恐怖のどん底に陥れます。
マーティンの虚言ともいえる言葉が次々と現実になっていく様はまるで黒魔術か呪いのようで、どこまでが彼の仕業か分からないところがいいですね。挙動不審で、キモキャラなのに、それでいて話術があって、言葉巧みに人を操っていくキャラが最高です。
ヨルゴス・ランティモス監督は独自の世界を創り上げることに関してはもはや天才ですね。登場人物やストーリーがとにかく気持ち悪いんですよ。よく考えつくなこんな話っていつも思います。
また、気持ち悪いだけでなく、必ずある種の色気を含ませているところにセンスを感じます。がっつりベッドシーンがあるわけではないんですが、妙に色っぽさと怪しさがあります。
コメント
観ました。
謎でしたど、復讐劇なんですよねこれは。インチキ野郎を呪いで苦しめるってのはよかった。
謎でしたね。不可解なところが嫌味じゃないので、僕は楽しめました。
ほんとうですね、こういのがいい映画っていうか上手いですね。
本当だったらそこ突っ込みたくなるけど、不思議にそれはOKなっちゃう。
不思議と悪役のバリーコーガンに感情移入してました。
良い役で観る者に共感や好感を抱かせるより、悪役で惹きつけるほうが難しいじゃないかなと思いました。
悪役のほうが難しいのは間違いない