可愛くて、優しくて、チェスが天才的に上手い少年のうそ臭い伝記ドラマ。特に盛り上がる箇所はない作品です。43点(100点満点)
ボビー・フィッシャーを探してのあらすじ
1970年代に、米国人として初めてチェスの世界チャンピオンになった伝説的な天才ボビー・フィッシャー。奇行を繰り返したフィッシャーは、1980年代から長く行方不明となっていたが、人々は彼を忘れていなかった。
心優しい野球好きの少年ジョッシュ・ウェイツキンは、7歳のときに公園で男たちが競うストリート・チェスを見たことがきっかけで、チェスの魅力に取りつかれる。
公園に住むヴィニーとの交流などを通じてジョッシュの並外れた才能に気づいた父親のフレッドは、かつてのチェスの名手であるブルース・パンドルフィー二に息子のコーチを依頼する。
wikipediaより
読者の翡翠さんのリクエストです。ありがとうございます。
ボビー・フィッシャーを探しての感想
脚本家として知られるスティーヴン・ザイリアンが監督した、同名ノンフィクションの実写化です。一見、天才チェス少年の成長物語に見えるものの、実態は父親目線の子育て日記です。
自分の息子にチェスをやらせたら、ものすごい才能の持ち主であることに気づいた父親が、有名なコーチを付けて熱血指導をさせ、息子をトップへと導いていくお話です。
途中、息子が勝負に負けるのを怖がるようになったり、チェスに対しての情熱を失いかけたり、とスランプの時期を描きつつ、最後に劇的な復活を遂げるといったベタな展開になっています。
あれで、息子の才能に気づいた両親が、息子の奪い合って、裁判で親権を争いだしたりしたら、いかにもアメリカ的な話になってたんですが、多少の家族間の衝突はあるものの、最初から最後まで美化しまくりの演出にまとまっていました。
ぶっちゃけタイトルにあるアメリカ人世界王者のボビー・フィッシャーは物語とはそれほど関係がありません。ただ、チェス好きの人たちがボビー・フィッシャーのことを伝説として持ち上げ、主人公の男の子も彼に強い憧れを抱いているといった程度です。
それでもボビー・フィッシャーにまつわるエピソードや映像がちょくちょく入り込んできては、どこか主人公の少年と対比させているかのようでした。
そもそも同レベルでもない二人を対比されることの意図が良く分かりませんでしたね。親父目線で自分の息子を見たら、過剰な期待を描いてしまうのはしょうがないけど、ちょっとおこがましいというかなんというか。これならボビー・フィッシャーを基にした映画「完全なるチェックメイト」を見たほうがいいですね。
とはいえ主人公のモデルになったジョッシュ・ウェイツキンはなかなか面白い人物で、チェスの実力はさることながら、20代前半で早々にチェスの世界から足を洗い、格闘技に目覚め、太極拳の推手という種目で2004年世界王者になっているそうです。
ちなみにブラジリアン柔術も黒帯だそうです。なんでもとことんやり込む性格なんですね。どうせ彼を映画にするなら、少年時代のパートだけで終わらせずにその後も描いたら良かったのにと思えて仕方がありません。
この映画が物足りないのは、純粋で可愛い少年のちょっといい話に終始しているところで、全国大会の決勝で勝利を確信したのに相手の少年に引き分けをオファーしたり、ちょくちょく胡散臭いエピソードが出てくるのが嫌でした。
ゴリゴリの心理戦であるチェスが得意な少年が、あんなに素直で、優しくて、可愛くないと思うけどなぁ。もっと憎たらしいガキにしないと。
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