エラン・コリリン監督によるノーアクション、低予算、現実的かつ感動的な作品。映画はこうあるべきだという手順を忠実に追っている映画です。85点(100点満点)
迷子の警察音楽隊のあらすじ
アレキサンドリア警察音楽隊は、文化交流のイベントで演奏するためにエジプトからイスラエルにやってきた。しかし空港には誰も出迎えに来ておらず、言葉が通じないためにどうしていいか分からなくなる。
なんとか自力でバスに乗って目的地まで行こうとしたまではいいが、着いた先は全く関係のない辺境の町だった。困り果てたアレキサンドリア警察音楽隊は、食堂の女主人の好意に甘え、家に泊まらせてもらうことに。そこからイスラエル人とエジプト人の一晩の心の交流が繰り広げられる。
迷子の警察音楽隊の感想
いい話すぎて、悪魔に取り付かれたような人間でも優しい気持ちになれます。イスラエルの殺風景がシュールですごく絵になるし、なんてことのない場所がすごく綺麗に撮影されていました。
登場人物は親切な人ばかりなのに、なぜかわざとらしさがないです。特に食堂の女主人は、男勝りでかつセクシーでもあってとても魅力的でした。
いやああ、久々にいい映画を見せてもらいました。やっぱり世界のどこかには、ちゃんと分かっている監督がいるんだなあ。
それにしても舞台になった町はダサかっこいい場所が多かった。ローラースケートを履いて入るディスコには度肝を抜かれましたね。人が全然入ってなくてガラガラなのがさびしくてなおよかったです。
この映画の一番のいい点は人と人との出会いと交流を描いているところですね。あくまで映画を通じてだけど、久しぶりに愛情溢れ、遠慮深く、誇り高い人間を観察することができました。
団長は特にかっこよかったですね。規律に厳しい団長のことだから、女主人と音楽隊の若造がやっているところを目撃したときには怒るんじゃないかと思いましたが、怒りませんでしたね。
むしろなんだか嬉しそうな表情だったのが印象的でした。あれはきっと、孤独な女主人のことを思うと、楽しんでもらえてよかったよかったと、父親のような目で見ていたんでしょう。
団長自ら女主人に手を出すこともできたのにあえてそれをしないところに団長の人柄が表れていました。
最近では人々は音楽のことなんてなんとも思っていない、それより金とかのほうがずっと大事なんだ、という彼がセリフが忘れられません。
それは人々が人間本来の喜びではなく、物質的な、作られた価値観でしか喜びを感じられなくなった、ということに違いないから。
コメント
はじめまして、トンボネコと申します。
>やっぱり世界のどこかには、ちゃんと分かっている監督がいるんだなあ。
こういう感想を持てることが、映画を観たり、音楽を聴いたりしていて得られる最上の喜びですよね!
同じく、映画ブログをやっているのですが、ぜひリンクさせていただきたく思うのですが、かまわないでしょうか?
できれば今後とも、お付き合いよろしくお願いいたします。
コメントありがとうございます。さっそくリンク張らせていただきました。
以前から「据え膳食わぬは男の恥」って、場合によるって思ってました。
食わぬのも男って。
そういう感覚が日本から遠い国にもあるのがうれしく思えました。
女主人はいい女ですね。
若造のセックスしてしまうのも人間っぽくって素敵でした。
これいいですよね。また近いうちに見なおしたい映画です。