サンダンス映画祭で絶賛されたらしい、ポーランド発のダークミュージカル。いままで見たことのないようなオリジナリティー溢れる作品でした。58点(100点満点)
ゆれる人魚のあらすじ
時は1980年代のポーランド。人魚の姉妹ゴールデンとシルバーはある晩、ビーチで歌っていたバンドのメンバーと出会う。
その日からゴールデンとシルバーはナイトクラブでバンドのメンバーと共にショーに出演するようになり、たちまち大人気となる。
最初はただのストリッパー兼バックシンガーだったゴールデンとシルバーはそのうち自らのことを「The Lure」と名乗り、バックバンドをつけてメインを務めるようになる。
そんな中、バンドメンバーの男ミエテックがシルバーと恋に落ちてしまう。人魚にとって人間と恋に落ちることは危険なことでゴールデンはそれをよく思わなかった。
シルバーがミエテックと恋をしている間、ゴールデンは人間を食べたくて仕方がなくなり、ある晩、ナイトクラブに現れた男を食べて殺してしまう。
やがてゴールデンは、同じく人魚である男トリトンと出会い、もしシルバーが人間と恋をし、その相手がシルバーを振って他の人と結婚した場合、シルバーは海の泡となってしまうと忠告を受ける。
また、魚の尻尾を除去しようものなら声を失ってしまうという。それでもシルバーはミエテックと結ばれるために下半身の移植手術を受け、人間の体を手に入れようとする。ところがミエテックは、手術跡から出血したシルバーを見て、彼女を拒絶するのだった、、、、
ゆれる人魚の感想
アグニェシュカ・スモチンスカ監督によるユニークでシュールなミュージカルホラー。雰囲気、音楽、衣装、演出の全てがどこかダサ格好いい映画です。
なんとも形容しがたい新しいジャンルの作品で、先が全く読めません。一見、ふざけているかのように見えたりもするし、シリアスになったりもするし、可笑しくて、また同時に悲しげでファンタジックな物語です。
物語の軸となるのは人魚と人間の恋、人魚の人食い、そして歌の3つです。人魚の姉妹は美貌と美しい声の持ち主で、外見でも人間の男を魅了し、歌を歌えば文字通り世の男たちの心を奪ってしまいます。
そんな姉妹には人間を食べたくなる、という強い欲求があり、人間の世界ではそれを隠しながら生きていきます。人魚なのに本当は人間を食べることは悪いことなんだよ、という背徳感が備わっているというのも笑えるんですけどね。
アグニェシュカ・スモチンスカ監督が狙ってやっているのかどうかは定かではありませんがちょくちょく笑えます。つぼにはまったら爆笑してしまう人もいるかもしれません。
人魚が突然ギター弾いたりするんですよ。雨の日なんかレインコート着たりして、人魚なのに水に濡れたくないのかよって思いましたね。
ナイトクラブのオーナーがパフォーマーたちを舞台に送り出すときに、全員に弱い膝蹴りをかまして送り出すところとか無性に可笑しかったですね。なんだろう、あの可愛さは。
ホラーのテイストが加わっているけれど、不気味さがちょっとあるぐらいで怖さはほとんどありません。一番強いのはミュージカルのテイストで、音楽シーンはもうちょっと減らしてもいいかなと思えるほど、歌って踊ってのシーンが続きます。
音楽のセンスはなかなか良くて、80年代のポーランドの音楽なのか、あるいはそれっぽく作ったやつなのか、古くてダサ格好いいんですよ。
アメリカのミュージカルのようにきっちりみんなが動きを合わせて踊るのではなく、どこか自由で、なにより楽しそうな雰囲気が伝わってきます。
人魚の姉妹を演じた二人は、10代に見えるほど童顔で、ロリコン体型をしていて、人魚だけにその脱ぎっぷりがいいです。
ただし、二人の裸のシーンはかなり多いものの、不思議とセクシーはありませんでした。なんでだろう。やっぱ人魚だからかなぁ。
人魚になりきって、あそこまで堂々と脱がれたら、逆に変な気持ちが沸いてこないという心理なのかもしれません。そういう意味では素晴らしい役作りだったと言えそうです。
ラストは、シルバーの失恋と共に童話のような悲しくもせつない終わり方をして、幕を閉じます。愛する人と出会えたシルバーの満足そうな表情が印象的で、憎しみよりも、自分の命よりも、愛を優先したんですね。
人間の女もあのぐらい命がけで恋をしてくれると嬉しいんですけどね。まあ、男側の勝手は言い分ではあるんですが。
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