恋愛と失恋とサプライズで締めくくる、見る人をほっこりさせたかと思うと、次の瞬間にはせつなくさせる男女のあるある物語。感情移入しやすい演出が見事でした。71点(100点満点)
(500)日のサマーのあらすじ
LAで、グリーティングカード会社で働いているトムは、地味で冴えない毎日を送る青年。ロマンティックな出会いを期待するも、大学で建築を学んでいた彼にはグリーティングカード会社での仕事はつまらなくて、職場にはおばさんばかり。
そんな彼はある日、秘書として職場にやってきたサマーに一目惚れしてしまう。出会いから4日目、トムが偶然サマーと同じエレベーターに乗り合わせたとき、ふいにサマーは「わたしもザ・スミスが好き」と声をかける。そしてそこから二人の交流が始まる。ストーリーはトムの空想と、サマーとの実際の関係を絡めてどんどん進んでいく。
会社のパーティーの帰りがけに、トムはサマーに好意を寄せていることを告白するのだが、サマーは「友達になりましょう」と言うだけであった。34日目、イケアで新婚夫婦ごっこをしたり、ランチピクニックをしたりと徐々に親密になっていく二人だが、期待するトムに対してサマーに「真剣に付き合う気はないの」と言われてしまう。そしてトムは、不本意ながらも「気軽な関係でいいよ」と妥協してしまう。
そして109日目、サマーの部屋に招き入れられたトムは、サマーとの関係が一気に進展したと感じるのだが……。
(500)日のサマーの感想
「さよなら、僕のマンハッタン」、「gifted/ギフテッド」のマーク・ウェブ監督による、リアルなコメディータッチの失恋物語。大好きな恋人との出会い、別れ、そして立ち直るまでの500日間をまとめたセンスのいい恋愛ドラマです。
物語は、トムがサマーに職場で出会い、心を奪われるところから始まり、ラブラブの関係に発展していく過程とすっかり冷め切った状況を1日ごとにランダムに振り返っていきます。
トムとサマーにまつわるエピソードは恋人あるあるばかりでストーリーがリアルで細かいのがいいです。エレベーターの中で「その曲、私も好きなんだ」とたった一言で相手との距離感を縮め、カラオケの帰りにはすっかりいい感じになって積極的にトムに告白させようとするサマーの手口が、嫌味なくかつ自然体すぎて恐怖でした。
気になっている女の子からあんな手順で近づいてこられたときには、男なんてなすがままにノーガード状態で心を鷲づかみにされてしまいます。
しかしいざ男のハートをがっちり掴んだサマーが口にすることといえば「真剣な付き合いは求めてないから、カジュアルに付き合いたい」などという、気持ちが上がりまくった男に冷水をぶっかけることばかりで、徐々にそして確実に主導権を握っていくあたりがさすがでした。やっぱり女は強いなぁ。
トムもトムで好きなら好きでカラオケの帰りにそう言えばいいのに精一杯背伸びして「友達として好き」とかミエミエの嘘を言ってましたね。
結局最初から最後までトムがサマーとかけ引きらしいかけ引きができたのはあのときだけで、あとはストレートに自分の思いを相手にぶつける彼を応援したくなった人も少なくないでしょう。男から見てもサマーより、トムのキャラのほうが可愛く見えるほどでした。
恋愛と失恋のシーンのバランスが絶妙で、ノリノリのときはイケアの中で家具を見ながら芝居染みたボケをかましても、相手がちゃんと乗ってくれます。
それに対し、関係が微妙なときはどれだけボケたところで冷たく無視されるトムの可哀相な姿といったらなかったです。
女には分からないだろうなあ、あの気持ち。よかれと思って、楽しませようと必死でボケてるのにろくなリアクションも返さずに平然と顔をそむけられるんだから。ホルモンだか、気分のせいだか知らないけど、トムの厚意をなんだと思ってんだよ、サマーさんよ。
なんて文句が言いたくなるぐらい、結構リアルなエピソードが続きましたね。撮り方や見せ方にも工夫が感じられます。
選曲もすごく良かったですね。心地よい音楽がロマンチックなデートやせつない傷心のエピソードを引き立てていました。
特にフランス語の歌なんて最高じゃないですか。なんて言ってるかは分からないけど、なんだろうこの響き。フランス人、色っぽいなー。
同僚の結婚式で流れた曲もいい感じです。
途中でミュージカルになったり、映画館で流れるフランス映画に自分自身が登場したり、遊び心満載ですね。特にパーティーに行くときのトムの期待と現実を二分割にして同時に見せる手法は斬新でした。
そりゃあさあ、好きな女の子からパーティーに誘われたら、てっきり自分とがっつり話してくれるのかと勘違いするわな。それなのにいざ行ったら、全然相手にもしてくれないし、プレゼント持って行ってもさほど興味を示さないし、挙句の果てには結婚指輪までしてるって、悪いわー、あの女。だったら呼ぶなよー。嫌い。あー嫌い。
結局、サマーにとってトムはなんだったんですかね。好きだったけど、本気にはなれなかったってことなんでしょうか。それならなんで結婚後も公園のベンチにわざわざ会いに来て、愛おしそうにトムを至近距離で見つめるんだろう。
ああいう女って「別れたけど、彼は今でも私にとって特別な人」とか言いそうで、好意を見せつつ突き放すナチュラル悪女の素質がありますね。そんな女を男が理解しようとすること自体が無駄なような気がします。
ラストの締めくくりはシャレが効いていて、そのおかげで悲しい失恋話に太陽の光が差し込んできたような明るさをもたらしていました。
夏(サマー)が終わり、秋(オータム)が訪れるなんて粋な演出ですね。ただ、オータムもなかなかの悪そうな女だったのが気になりました。トム、大丈夫かなぁ。また、もてあそばれないといいけど。
コメント
昔、歌舞伎町の某居酒屋で都内№1のSMクラブ経営者とSM嬢(女王様)のトークショがあったんですけど、ガチのS(女王)には①店に来るMの客②旦那(恋人)③プライベートの奴隷の3種類の男がいると聞きました。
質疑応答タイムに客の一人が「あの、『プライベートの奴隷』って何なんですか?」と尋ねましたが、「奴隷は奴隷でしょ…」と一蹴、ちなみにその女王様の奴隷は某航空会社の幹部でチケットとかはほただで入手できるとか言っていました。
サマーにとってのトムは要するにこれでいう所の③なのではないかと。
そこまでひどい扱いではないかと。