さえないおっさんが超能力を使うヒーローものと家族ドラマをミックスしたようなジャンル分けしにくい映画。47点(100点満点)
あらすじ
実家暮らしでまともに働こうとせず、酒と女とドラッグに溺れながら連日のようにパーティーに明け暮れているメルヴィン(スティーヴン・ドーフ)。彼は特殊なパワーを持つ能力者だが、その力を使った余興でこづかいを稼ぐ始末。別れた妻に親権を奪われて息子との対面もままならないメルヴィンは、心を入れ替えようと決意する。やがて、街のギャングが少年たちを犯罪に巻き込もうとしているのを知った彼は……。
シネマトゥデイより
文句
ニック・ラヴ監督によるシュールなヒーロー物語。酒とドラッグと女に夢中のダメ男が、親権を失った息子と再会するために、心を入れ替えて悪者たちに立ち向かう、コメディータッチの人間ドラマです。
ゴリゴリのコメディーではなく、微妙な笑いを小出しにするタイプの映画で、ツボにはまる人にははまり、そうじゃない人には掴みどころのない作品になるでしょう。
時間帯によってはダレる箇所も多々あり、テンポもそんなによくないです。僕はコメディーとしてより、不思議な人間ドラマとして、ときどきフフフと笑いながら見ました。
映像が綺麗で一見すると芸術路線の映画なのかなあと思ってしまうほどです。かといってシリアスな映画ではないし、ふざけまくっているわけでもないし、中途半端なところを行ったり来たりするユニークな雰囲気をかもしています。
タイトルが「アメリカン・ヒーロー」のくせに、ろくに仕事もせず、パーティーに明け暮れ、別れた元妻や息子とも接見禁止の処分にされている中年のクズ男を主人公にしたのも意外性を狙ったのでしょう。
主人公のメルヴィンは外見も行動もヒーローにはほど遠いです。それでも彼が”ヒーロー”である理由は手を触れずにどんな物でも動かす超能力を持っていることに尽きます。椅子やテーブルを宙に浮かすことは朝飯前。その気になれば自動車を放り投げることだって可能です。
しかしどんなにすごい能力を持っていてもメルヴィンはそれを上手く活用する術を知らず、路上で通行人を集めてマジックショーとして披露するアイデアぐらいしか持ち合わせていません。それよりもマリファナを吸っていい気持ちになって、女たちと戯れているほうが好きなのです。
ところがある晩、メルヴィンはパーティーでドラッグの過剰摂取により、心肺停止に陥ります。それがきっかけで自分の能力を人々のために役立てることを誓い、地元で麻薬の売買などをしている悪名高いギャングたちを成敗しようと立ち上がる、というのが話の筋書きです。
主人公を演じたスティーヴン・ドーフがまた微妙な路線を行く俳優ですよね。コメディーもやるけど、完全なコメディー俳優かというとそうじゃないし、演技はしっかりしているけど、顔もキャラクターもあまり印象に残らないのが惜しいです。
セリフの中にはちょこちょこ笑えるものがありました。前から二人の女の子が来るシーンで、メルヴィンは親友のルシールにこう聞きます。
「お前の好きな女ってあの二人のうちのどっちなんだい?」
「水牛みたいな奴じゃないほうだ」
まもなくして前から本当に水牛みたいな女とセクシーな女が二人歩いてきます。水牛って英語で「water buffalo ウォーター・バッファロー」っていうんですが、あの例えが絶妙すぎて後から笑いがドドドと込み上げて来ました。あのシーンはよかった。
コメント