ストーリー、キャスティング、演出、BGMの全てにおいて前作を大きく下回る、がっかりな作品。38点(100点満点)
あらすじ
1974年、アンソン(井坂俊哉)は病気の息子の治療のため、一家で京都から東京に移り住む。妹のキョンジャ(中村ゆり)は芸能プロダクションにスカウトされ、甥の治療費を稼ぐために芸能界入りを決意する。彼女は先輩俳優の野村(西島秀俊)と出会い、彼に恋心を抱く。
シネマトゥデイより
文句
「パッチギ!」に続く、「名作は続編を作っちゃダメ」という見本のような作品。いい話にしようと頑張っている意気込みは感じられるものの、全てにおいてスケールダウンしています。
舞台は京都から東京に変わり、テーマは芸能界における人種差別一点に絞られたせいもあって、感情移入できる箇所がほとんどなくなり、ただの悲劇に成り下がっています。
そこには前作のような青春もなければ大人社会のいい話もなく、愛と友情のエピソードも薄いです。9割ネガティブな話でラスト1割の感動シーンでポジティブに転換させようといった演出をしていますが盛り上がるのが遅く、中盤にダレます。
物語は、ホルモン屋でスカウトされた美女キャンジャが自分の出自を隠しながら理不尽な芸能界でスターダムへと上り詰めていく過程と、病気の息子のために犯罪に手を染め、なんとか治療費を工面しようと奮闘する兄アンソンのサイドストーリーと平行させて描いていきます。
キャンジャのパートはいわゆる芸能界あるあるの集約で、いかに在日出身のタレントが肩身の狭い思いをしながらをショービジネスの世界を渡り歩いているかにフォーカスされています。
新人女優が俳優やプロデューサーに気に入られて恋人になったり、枕営業したりしながら、瞬く間に人気女優になるという展開はあまりにもありきたりです。たとえ枕営業したところで、あんな簡単に主演になれないだろって話ですよね。
正義感強そうで案外簡単にプロデューサーと寝たり、新人のくせに脚本にケチつけたりするキャンジャのキャラ設定にブレがあって、何がしたいのかよく分かりませんでした。
挙句の果てには俳優と一度関係を持っただけで家族に会ってくれとか言い出したり、舞台挨拶で誰も聞いてもないのに泣きながら自分のお父さんのヒストリーを語りだしたりして、ただの痛い女でした。
実際も完成試写会とかでよく泣き出す女優いるけど、僕あれ大嫌いなんですよ。あれってすごい日本特有の「私、この映画のために頑張りました。でも実はつらかったんです」アピールですよね。
お前が頑張ったとか知らねえよって話じゃないですか。中身がどうかが問題なんであって。そういう作品に限ってまた出来が悪いから余計に腹が立つんです。
完成試写会で泣き出すハリウッド女優いますか?いないでしょ。なんで作り手側が視聴者より感情的になってるんだよって。その温度差が視聴者を興ざめさせるってなんで分からないのかなぁ。それだったらまだ撮影現場で泣けよ。
話を戻します。内容は違うものの展開や雰囲気はどことなく前作を引き継いでいます。特に男気溢れる在日朝鮮社会の中にナヨナヨした日本人の男を放り込んで、在日の女の子に恋愛させるという展開は全く同じでした。
この映画の最大の失敗は、ストーリーは前作を引き継いでいるくせにキャストを一新して全くの別の俳優陣で臨んだことでしょう。
前作の最大の成功はキャスティングであったことを感がれば、そこを省いたらどうなるか想像に難しくないはずです。もしかしたら井筒和幸監督は過信したのかもしれませんね。俺だったらどんな俳優でも面白い映画撮れるって。
本作では普通にいい俳優は出演しているのにどのキャラクターも印象に残らなかったです。あれだけオラオラ系だったアンソンがただのいい人になっていたのが寂しかったし、キョンジャは可愛かったけど、魅力的ではなかったです。
もし高岡奏輔と沢尻エリカが出ていたらどうなっていたでしょうか。それでもやっぱり前作の足元にも及ばなかったでしょう。それだけいい映画を撮り続けるのは難しいことなんでしょう。
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