麻薬の売人をしている二人組の不良を描いた犯罪ドラマ。荒削りな部分はあるものの、無名監督と俳優たちの可能性を感じさせる作品です。55点(100点満点)
あらすじ
ケン(カトウシンスケ)とカズ(毎熊克哉)は自動車修理工場で働きながら、裏では覚せい剤の取引をしていた。ケンは恋人の早紀が身ごもっており、彼女と生まれてくる子供のために人生をやり直そうと考えていた。一方、カズは母親のことで問題を抱えていた。カズは密売ルートを増やすべく、敵対グループと手を組もうと画策するも……。
シネマトゥデイより
文句
小路紘史監督による低予算クライムムービー。映像がきれいで、演出が良く、暴力描写がとてもリアルです。なにより無名の俳優たちを集めたキャスティングのおかげで、先入観なくストーリーに入っていけるところが評価できます。
日本映画の不良ものとか、犯罪ものって有名俳優たちが格好つけているだけのが多いけど、この映画は違います。暴力を美化することなく、また主人公を美しく描こうともしていないところに好感が持てました。
物語は、痴呆症の母親を持つカズと妊娠中の恋人を持つケンを軸に回っていきます。二人ともまとまったお金が必要で、犯罪に手を染めるぐらいしか稼ぎ方を知らないという点では共通しています。
カズの母親は過去にカズに暴力を振るっていたDV癖のある母親で、そのことを今もカズは強く根に持っています。できることなら殺してやりたいという思いと、やっぱり一線は越えられないという愛憎を抱えながら、自分が受けてきた暴力を他人に吐き出すようなところがあり、彼のそんな暴力性を表現するのに母親のエピソードはとても説得力がありました。
それに対し、ケンの過去に触れているエピソードがあまりなく、彼のことを理解するには恋人とのやり取りぐらいしかヒントがないのは物足りませんでしたね。
カズ役を演じた毎熊克哉は、眼つきが鋭く迫力のある、いかつい男を上手く作り上げていました。セリフは棒読みでまだまだ俳優としては成長段階という感じはしますが、存在感があります。
一方のケン役を演じたカトウシンスケは演技は自然だけど、不良っぽさが足りなかったですね。どう見ても普通のお兄ちゃんで悪い人の目をしていません。最近の麻薬の売人はもしかすると案外普通の兄ちゃんなのかもしれませんが、せめて犯罪で生きている男の怪しいオーラが欲しかったです。
それと暴力団の組織があまりにも小さいのが気になりました。構成員は組長と若頭の二人ぐらいしか出てこなかったのは、おそらくエキストラや俳優を雇う予算がなかったんでしょう。
組長が末端の犯罪にまで手を貸していたのを見ると、やくざというよりギャングや半グレという設定のほうが良かったですね。
全体的にできるだけ少ないキャストで作ろうとしているのが分かりました。ただ、予算の少ないなかアイデアだけで上手く一本の映画にまとめたなという感じがして、もっとスポンサーが増えれば今後いい作品を作ってくれそうな期待が持てます。
日本のインディーズの監督はもっとクラウドファンディングなどを使って知り合いやファンや企業からお金を募って映画を作っていくべきですね。職人気質や芸術家気質の人に限ってそういうサービスをあまり積極的に使わないからとてももったいないです。
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