事実を基にした、感動狙いの映画。インドのキムタクがメソメソするだけで、悲しい演出に偏りすぎていて、いい話を台無しにしている作品です。41点(100点満点)
LION/ライオンのあらすじ
インドのスラム街。5歳のサルーは、兄と遊んでいる最中に停車していた電車内に潜り込んで眠ってしまい、そのまま遠くの見知らぬ地へと運ばれて迷子になる。やがて彼は、オーストラリアへ養子に出され、その後25年が経過する。ポッカリと人生に穴があいているような感覚を抱いてきた彼は、それを埋めるためにも本当の自分の家を捜そうと決意。わずかな記憶を手掛かりに、Google Earth を駆使して捜索すると……。
シネマトゥデイより
LION/ライオンの感想と評価
2017年のアカデミー賞ノミネート作品で、数年前にネットでも話題になった、25年ぶりに自分の生みの親と再会したインド人青年の物語です。元ネタはニュース記事を始め、グーグルのユーチューブ動画などにも取り上げられ、世界中で報じられましたね。
主人公のサルーは5歳のとき兄と出かけていった矢先、駅で一人取り残されてしまいます。そのまま列車の中に迷い込み、何キロも離れた土地に行ってしまい、ストリートチルドレンになる、という悲劇が起こります。
サルーはストリートや施設を転々とし、やがてオーストラリア人の夫婦に養子として引き取られます。いつしか彼は英語を覚え、その一方でヒンズー語を忘れていったものの、母親と兄の記憶だけは薄っすらと残り、彼らを探さなければという使命感に捕らわれます。
そしてグーグルアースを使って子供の頃の記憶を頼りに何年もかけて自分の家を突き止める、という奇跡の物語です。話自体はグーグルのユーチューブチャンネルをはじめとする、多くのメディアが伝えているように、信じられないような素敵なストーリーです。
しかしこの映画では、キャスティングや演出のせいで、大分印象が変わってしまいました。まず主人公を演じたデーヴ・パテールが男前すぎるんですよ。「スラムドッグ・ミリオネア」に出ていた少年がこんなイケメンになったんですね。でもせめてもうちょっと本人に似てる人を起用しようよって話なんです。
どちらかというと顔のタイプはこっち系ですよね。
また、デーヴ・パテールにかなり格好つけた演技をさせていて、海を見て涙を浮かべながら物思いにふけるみたいなシーンがしつこいぐらい連発するのがうざいです。
前向きな話なのに悲しい演出ばかりしているせいで途中で白けてくるんですよ。感動を狙いすぎて、逆に感動しなくなる、というのはよくある話で、ベタな恋愛を織り交ぜたり、家族同士を喧嘩をさせたり、といったエピソードにリアリティーが感じられませんでした。
いい話だなあ、と思うのは元ネタの話で、この映画自体はそこからアイデアを取ってきただけに過ぎません。それにしてもハリウッドの事実ネタに対する飛びつきようがすごいですよね。ちょっとネットで話題になったらすぐに映画化するもんね。そんでもって元ネタをこれでもかっていうぐらい脚色して売る商売根性が恐ろしいです。
ちなみに実際にはサルーにはこの映画に登場する兄グゥドゥーのほかにもう一人兄がいるそうです。しかしその兄の存在は、ばっさりカットされていましたね。
元々いないことにされてしまった本人がこの映画を見たら一体どういう気持ちになるのかを想像すると笑えてきます。「あれ、俺が出てこないけど? ちょっと、どういうこと? ねえ、お母さん?」といったような心境になるのは確実です。
そんな兄を慰めるインドのお母さんと最後にちょっとだけスクリーンに登場した妹の複雑な心境を想像すると、家族の絆を深めるどころか関係を悪化させる映画なんじゃないかとすら思えてきます。
コメント
ガラにもなく、こんなお涙ちょうだい映画を観てしまいました。
新米カップルさんらが観るにはいいんじゃないでしょうか。
良い話なのに、貧困や格差に深く思いを馳せていくような作りにはなってませんね。
そこは残念、というか商売優先のハリウッド。分かりやすい^_^