ストーリーが二転三転し、何を描きたいのか曖昧になっていく人間ドラマ。妻を亡くし、暴走する主人公を見ているとイライラしてきます。33点(100満点)
雨の日は会えない、晴れた日は君を想うのあらすじ
ウォール街のエリート銀行員ディヴィス(ジェイク・ギレンホール)は順調に出世し、リッチで何不自由のない生活をしていた。ある日、交通事故で美貌の妻が他界するが、涙を流せず、感覚を失っていることに気付く。彼は義父の言葉をきっかけに、身近なものを壊し始め……。
シネマトゥデイより
雨の日は会えない、晴れた日は君を想うの感想
「わたしに会うまでの1600キロ」、「ダラス・バイヤーズクラブ」、「カフェ・ド・フロール」、「ビッグ・リトル・ライズ」、「C.R.A.Z.Y.」などで知られるジャン=マルク・ヴァレ監督の家族ドラマ。妻を交通事故で失った男が、精神的に崩壊し、やがて立ち直るまでを描いた自分勝手な話で、まとまりがないストーリーがいまいちです。
物語は、エリート金融マンのディヴィスが同じ車に乗っていた妻を交通事故で亡くすところからスタートします。
いざ、妻が死んでもディヴィスは意外と普通で、涙も流さず、深く悲しむこともなく、すぐに仕事に復帰しようとします。周囲が絶望に浸っているのも理解できない彼は、きっと自分は妻を愛していなかったんだ、と思い始めます。
そんなディヴィスはしかし感情の壊れた自分を治すために、次々と物を破壊していきます。水漏れを起こしていた冷蔵庫を壊し、会社のトイレを壊し、自分のオフィスを壊すと、彼は会社から追い出され、やがて破壊行為で得られる爽快感を得るために解体屋で働くことになる、というのがあらすじです。
原題が「Demolition」なのは主人公の破壊行為を指しているわけですが、なぜか邦題は「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」などという、余計に映画の趣旨が伝わらないタイトルになっていますね。映画のどの部分を取って、このタイトルを考え付いたのかちょっと想像がつきません。印象深い雨のシーンなんてあったっけ?
「ねえねえ、佐藤部長『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』ってタイトルよくないですか?」
「なにがいいんだね?」
「なんていうか、その言葉に隠された空気感とか、世界感とか。等身大の自分を表してるっていうか。ポジティブなエナジーを感じるんですよ」
「よし、それで行こう」
こんな会議で決まってそうで怖いんですが、実際は車に落ちていたメモに書いてるメッセージの日本語訳だそうです。(読者さんのコメントで気づきました)いずれにしろなんであのフレーズをタイトルに持ってきたかはやはり理解に苦しみます。
主人公ディヴィスは未亡人になってから精神に病をかかえ、奇異な行動に出るキャラになっていますが、それをジェイク・ギレンホールが演じると、なにを考えているか分からないキモい男になってしまい、「ナイトクローラー」とか「複製された男」の役柄とも被ってしまっていました。
ディヴィスのキャラ自体も悲劇の末に取り乱すのはいいとしても会社の物を壊したり、電車を緊急停車させたりって、人に迷惑かけてる時点でふざけんなよ、って話なんですよ。
不幸なことがあったら、ああやって何をやっても許されると思っている傍迷惑な奴いるけど、見ていてイライラしますね、そういう奴。
ディヴィスと恋人役のカレン(ナオミ・ワッツ)の出会いも、そんなまさかという展開でした。自動販売機が壊れていたのをディヴィスが管理会社にクレームを入れたら、クレーム担当のカレンが深夜に電話をかけてきて会うことになるって。どっちもまともじゃないですね。
それもカレンには男がいて、ときどき家に帰ってくるのにその家にディヴィスを半同棲させてしまう、というトラブルメーカーっぷりには開いた口が塞がりませんでした。
ディヴィスの場合は妻を亡くしたという明確な原因があるけど、あの女の場合はナチュラルで精神に異常をきたしていました。それもいい歳したおばちゃんが、「別々に寝ましょう」だって。気持ち悪ぅ。
一方でディヴィスの奥さんは生前不倫をしていたようで、ディヴィスに内緒で中絶までしていたそうです。不倫なのに子供作るのもそうだけど、それ内緒にしちゃだめだろ。この映画、真面目な奴一人も出てこないじゃん。
コメント
むかーし、デモリションマンという脳筋映画がありましたよね。アレのイメージがあるとチョットなー、な原題ですよ。大昔のしょーもない映画なのに、タイトルのインパクトで覚えてる自分が嫌過ぎるw
邦題もゼロ年代のロマコメ邦画みたいなサブいセンスですね、わたしがクマにキレた理由、には敵わないと思うけどw
アリアさん
コメントありがとうございます。そういえばそんな名前の映画ありましたね。まさにこの映画のほうが「デモリションマン」に相応しいですね。
邦題は奥さんの最後のメモから来てるんじゃないですか?
tomさん
ご指摘ありがとうございます。確かにメモにそう書かれていましたね。奥さんが書いたメモなら「君」じゃなくて、「あなた」と訳したほうがよさげですが。
映画男さん、こんにちは。
私も、この映画タイトルが
ややこしくしてるんじゃないかと思いました。
でも、どうしても腑に落ちないことばかりだったので、
いてもたってもいられず、もう一度見返しました。
そしたら、いくつか気が付いたことがあり、
なぜこの『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』がタイトルに使われたか、
わかるような気がしました。
そしたら、どっと泣けました。
「ディヴィスの奥さんは生前不倫」に関してですが、
想像しているものと、まったく違うかもしれません。
それに気がつくことができたので、
彼が奥さんのメモを見つけたシーンからもう、泣きっぱなしでした。
是非是非、本当に、是非、
気が向いたときにもう一度チャレンジしてみて下さい。
映画男さんの”文句”がどう変化するか楽しみにしてます。
meiさん
ぜひmeiさんの解釈を教えてください。鈍感なので、もう一度見てもおそらく僕なら気づかないと思うので。
奥さんの不倫に関してですが。私の解釈は、
『妊娠していたのは確か。
でも、その子の父親は不倫相手ではなく、デイヴィスの子供である。
そして、何らかの理由で中絶せざる得なかったため母親に不倫をしていたと嘘をつき、
中絶する際の保証人になってもらった。』です。
“何らかの理由”が、ハッキリとはわからないのですが、
ダウン症だったのではないか?という解釈ができるかもしれません。
ラストのシーンで奥さんの父親に
「死んだ妻の思いを引き継いで…」のようなことを言っていた気がします。
だから、解体されるはずだった古いメリーゴーランドを引き取って、
ダウン症の子供たちに楽しんでもらう活動をしたのではないでしょうか。
ただ、そうすると“なぜ、ダウン症の胎児を中絶しなくてはならなかったのか?”
という疑問が残ってしまいました。
1、奥さんは特別支援学級の教師をしていたはずです。
ダウン症の子供たちと繋がりが深そうですが、
それが故に自身の子供は健康体がよかったのでしょうか。
2、もしくは、もう愛情というつながりを感じることのできないデイヴィスと、
子供を育てるのは無理だと思ったからでしょうか。
3、はたまた、何らかの障害を持っている子を妊娠しているということを
打ち明けられることに、夫が耐えられないと判断したのでしょうか。
もし、3が答えなら、奥さんのデイヴィスへの愛はとても深いと思いませんか?
そして、“不倫相手は存在しない”説を強めたのが、
奥さんのお墓で出会った事故を起こした人物です。
デイヴィスも、私たち観客も、あの車の持ち主が不倫相手だと思い込んでいましたが、
そうではなかったのです。
ということは、不倫相手はもともと存在しなかったのではないでしょうか。
もし、そうなら、『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』のメモを見つけたとき、
デイヴィスはすべて理解して、奥さんの深い愛情に気が付き、
自分自身の壊れようを悔やみ、泣いたのではないでしょうか。
meiさん
詳細な説明ありがとうございました。もう一度、見直してみますね。
新たな文句、楽しみにしてます♪
もう一度見ましたが、やはりよく分かりませんでした。ただ「母親に不倫をしていたと嘘をつき、中絶する際の保証人になってもらった。」というのはちょっと無理があるかなと。そもそもアメリカでは成人が中絶するのに保証人は必要ないからです。未成年でも州によっては親の許可なしでも中絶できるところもあります。もし妻がデイヴィスの子供を妊娠していたなら、ダウン症でも中絶しなかったんじゃないかと僕は感じました。
また、タイトルの「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」はあくまでも日本側が勝手につけたもので、オリジナルのタイトルは「Demolition」です。つまりあのメモに深い意味があるというのは製作側の意図するところではないでしょう。あのメモのあとにすぐに冷蔵のメモのシーンが出てくるので、奥さんのメモを残す癖を思い出し、懐かしく、愛おしくなったというシーンじゃないかと僕は解釈しました。ちなみにもうひとつのメモには「Stop being such a drip and fix me already. 嫌な奴になるのはやめて、さっさと私(冷蔵庫)を直してよ」でした。正確には彼が泣き出したのはその冷蔵庫のメモのシーンの後です。
メモのシーケンス
恋人の存在
僕はこんな風に考えました。
冒頭、車でデイヴィスを送るシーン
空は今にも降り出しそうな曇り空でした
妻は雨が降る日はいつも、デイヴィスを車で会社まで
送り届けていたのではないでしょうか
雨の日は会えない(夫を送らなければならないから)
時間的な制約?から恋人に会えない状況になっていたのでは
そして、そんな気持ちを妻はあのメモに残していた
デイヴィスは興味を失い、まるで記号の様な存在になってしまっていた妻の一面を知り、
かつては愛した人をないがしろにしていた自分に気付いたんではないでしょうか
私見です。
まとハズレかも笑
sunnyさん
コメントありがとうございます。meiさんの解釈も、sunnyさんの解釈もすごく面白いと思います。それぞれが色々深読みしてしまいがちな映画なんですね。
確かに、成人が中絶するのに、保証人は要らなそうですね。
確かに確かに。
ん~考えれば考えるほど混乱してしまう映画ですね。
皆さんの見解を拝見できて楽しいです♪
ジェイク・ギレンホール、ナオミ・ワッツは名演でしたが、やはりシナリオはチープかもしれないですね。。少し違いますが、グラントリノと比べてしまいましま。
演技は悪くないんですけどね。
最初は「意味わからないし、まともな人いないじゃん」と思って
観終わった後もぽかんとしていました。
なので解説やレビューをいろいろ読んでみて自分以外の視点に立って考えてみたところ
自分の気づけなかったことばかり出てきて面白い映画だなと思いました。
とくに「この店は雰囲気がいいからカクテルが高いんだ」と唐突に言い出すシーンは
環境に目を向けることに気づいた主人公が
倒木などにも気づき始めて自分を重ねて
他人に興味を持つ下りにつながっていく(空港のシーン)
という視点などは面白いなと感じました。
だけどメリーゴーランドはメタファーのためだとしても
盛り上がるのは初日くらいだろうなって現実的に考えてしました。
支援のほうがよかったのでは…
メタファーばかりで自分にはよく分かりませんでした