海外の良いところを掻い摘んで紹介し、いかにアメリカのシステムに問題があるかを皮肉を込めて描いた社会派ドキュメンタリー。前半は面白い事例が出るものの、後半かなりダレます。44点(100点満点)
マイケル・ムーアの世界侵略のあらすじ
これまで政府に目の上のたんこぶ扱いされてきた映画監督のマイケル・ムーアは、ある日、アメリカ国防総省のお偉方たちにある相談を持ち掛けられる。
彼らの必死の訴えに心を動かされた彼は、国防総省に代わり自分が侵略者として世界中に出動することを提案する。ムーアは空母ロナルド・レーガンに乗り込み、ヨーロッパへと向かう。
シネマトゥディより
マイケル・ムーアの世界侵略の感想
「キャピタリズム~マネーは踊る」、「華氏119」などで知られるマイケル・ムーア監督による海外あるある物語です。やれイタリアでは1月以上有給休暇がもらえるだの、やれフランスでは給食が豪華だの、やれスロベニアでは学費が無料だの、といった事例を持ち出して、アメリカ社会の欠点を浮かび上がらせたドキュメンタリー映画です。
前半はそこそこ面白いエピソードが登場し、世界各国の様々な国の制度を知ることができるという意味では勉強になります。
ただ、前半こそアメリカとの比較も上手く機能していましたが、後半になるとアメリカとの比較はどこへやら、いつのまにかアイスランドの金融危機で銀行員が逮捕されたことやチュニジアで男女平等の革命が起きたことなどを取り上げだし、テーマから大分逸れていきます。
エピソードの見せ方もマイケル・ムーアが得意とする、都合のいい部分だけを紹介するプレゼンテーションで、アメリカを批判することで注目を浴びようといった手口はすっかりお馴染みになりましたね。
「キャピタリズム~マネーは踊る」のときにも言いましたが、マイケル・ムーア監督は特定の人を攻撃するのは上手いんですが、仕組みや法律を批判するとなると、途端に言葉にパワーがなくなり、説得力が薄くなります。
特に本作は外国の実情を表面的にしか知らない人が作ったという印象が強かったですね。その国に住んでもない人が、適当に情報だけ集めてまとめると、こういう映画ができるんですよ。
劇中では例えばスロベニアと同じくブラジルも”学費が無料の国”として紹介されていましたが、無料なのは国立の学校だけで、私立の学校は先進国並みの高額な学費がかかるし、無料の学校は大学以外はどれもお世辞にも教育レベルが高いとはいえない現状があります。
よくどこどこの国は医療が無料だなどと言って、その部分だけを聞いて賞賛する人も多いけれど、無料の病院は行列ができていて、入院患者は通路で寝させられ、医師不足で予約を取るまでは1ヶ月先だったりする、といった実情には触れなかったりしますよね。
国の制度や社会保障だけにフォーカスしても現実は到底見えてこないです。数人の国民にインタビューして、愛国心を確認したところで、国民の満足度なんて分かりやしないです。
マイケル・ムーア監督の映画が最近ヒットしなくなったのは、彼のパターンに多くの人が飽きてきたからでしょう。もうみんな分かってるもんね、彼がアメリカ批判を繰り返すのはキャラだってことぐらい。
散々外国を賞賛してアメリカをこき下ろしても、いまだにアメリカに住んで、アメリカで金儲けして、アメリカの恩恵を受けているっていうのがマイケル・ムーアの最大の皮肉ですね。
コメント
ドキュメンタリ映画監督というよりも、「プロパガンダ映画監督」と言う印象。
それはありますね。