クリスマスに恋人や家族と見るべき群像ラブコメディー。イギリスの豪華キャストを勢ぞろいさせた、笑いあり、せつなさあり、暖かさありの作品。68点(100点満点)
ラブ・アクチュアリーのあらすじ
新たに就任したイギリス首相のデイヴィッド(ヒュー・グラント)は若く、ルックスも良く、独身。しかし秘書の1人、ちょっと太めのナタリー(マルティン・マカッチョン)に一目惚れしてしまい、仕事に身が入らない。
最愛の妻を亡くしたダニエル(リーアム・ニーソン)は、義理の息子サム(トーマス・サングスター)がまったく口を利かなくなってしまったことが気がかりでならない。しかしサムが口を利かない理由は母の死ではなく、学校で一番人気の女の子に対する片思いによるものだった。
弟に恋人を奪われてしまった作家のジェイミー(コリン・ファース)は、傷心を癒すため南仏のコテージに向かう。そこでメイドとして働くポルトガル人のオーレリア(ルシア・モニス)には、英語もフランス語も通じないが、ある事件を切っ掛けに、ふたりは惹かれ合うようになる。
会社を経営するハリー(アラン・リックマン)は、しっかり者の妻カレン(エマ・トンプソン)や3人の子供たちと一緒に幸せに暮らしていた。だが突然、部下のミア(ハイケ・マカッシュ)が、彼にアプローチをかけるようになってしまった。
そんなハリーの会社に勤めるサラ(ローラ・リニー)は、入社以来2年7ヶ月のあいだ、同僚のカール(ロドリゴ・サントロ)に恋心を抱いている。しかし奥手なサラは、勇気を絞り出そうにも告白の言葉が出てこない。
ビリー(ビル・ナイ)は、かつての持ち歌をクリスマスソングにアレンジしてカムバックを果たそうとする老いぼれのロック歌手。マネージャーのジョー(グレゴール・フィッシャー)が必死に売り込みを続けるも、スター気取りなビリーの過激で下品な発言が世間を騒がせてばかり。
画家のマーク(アンドリュー・リンカーン)の親友ピーター(キウェテル・イジョフォー)が結婚式を挙げた。ピーターのお相手は、美人なジュリエット(キーラ・ナイトレイ)。親友を祝福するも、ピーターとばかり喋ってジュリエットにはよそよそしいマーク。ジュリエットは夫の親友となんとか仲良くなろうと思い悩むが、マークには彼女に知られたくない秘密があった。
ケータリングの仕事をする若者コリン(クリス・マーシャル)は、頭の中が女の子と卑猥なことでいっぱい。彼女いない歴を更新中の彼は、冷たいイギリス人相手のナンパに限界を感じ、友人が止めるのも構わず、アメリカ娘を狙いに単身でウィスコンシンに発つ。
ラブシーンのスタンドインを演じるジョン(マーティン・フリーマン)とジュディ(ジョアンナ・ペイジ)は、気まずくなるようなシーンを、他愛もない会話で楽しく撮影できることに喜びを感じていた。次第に親しくなった彼らは恋に落ちる。
9つのストーリーは、クリスマスを舞台にどのような結末を迎えるのであろうか。
Wikipediaより
読者のyuiさんのリクエストです。ありがとうございます。
ラブ・アクチュアリーの感想
「アバウト・タイム」などで知られるリチャード・カーティス監督によるイギリス発のクリスマスムービーです。
イギリスの様々な男女の物語を同時進行で映し、クリスマスに恋がクライマックスを迎える、というストーリー構成になっていて、早いテンポで登場人物が次々と入れ替わるので好き嫌いがわかれそうな映画でもあります。
群像劇が好きな人は文句なしに気に入るでしょう。それに対して一人の主人公にフォーカスした映画を好む人には向いていないかもしれません。
僕は群像劇は好きなのでとても楽しめました。2003年公開の映画ですが公開当時に一度見て、最近再び見ました。10年以上経っても面白さが色あせていないことを考えると、今後も長い間クリスマスのおすすめ映画として挙げられるでしょう。
クリスマス映画は音楽の使い方がかなり重要なのはいうまでもありません。どこでクリスマスを感じられる歌を挿入するかが演出の鍵になってくるけれど、上手い具合にベタな歌を次々と投入していましたね。
特に学校の発表会で少女が歌ったマライア・キャリーは良かったですね。クリスマスソングじゃないけど、結婚式の「All You Need Is Love 」も良かったし。
物語は空港からスタートします。空港は再会と別れの場所であり、愛が転がっている、といった感じでナレーションが進み、「love actually is all around. 愛は実際のところ至る所にある」として「love actually」の箇所が浮かび上がります。
昔に一度見たときはタイトルがどうして「love actually ラブ・アクチュアリー」といった中途半端な英語の文章になっているのか不思議だったんですが、もう一度見てみて意味がやっと分かりました。
同時に「空港」という場所に人々の「愛」や「ドラマ」を感じ取っているこの映画のつくり手に共感を持ちました。僕も空港ってなんか好きなんですよ。飛行機に乗るのはそんなに好きじゃないけど、空港の雰囲気が好きでときどき空の旅がしたくなります。空港が放つあのなんともいえない緊張感とか、ワクワク感とか、寂しさとかが人々の出発や到着を必要以上にドラマチックにしますよね。
空港で知らない男女や家族の行き来を見ているだけでついつい感傷的になってしまう人がこの映画を見たら思わず泣いてしまうでしょう。
友人、親子、恋人、愛人たちによるありふれた愛の物語ですが、クリスマスという年に一度のその日に実る愛もあれば、上手くいかない愛もある、そのバランスが絶妙でしたね。
それにしてもキャスティングは本当にすごい面子が揃っていますね。トップどころはほぼ揃えているからね。人によって好きなエピソードとそうじゃないエピソードの意見が割れそうで、鑑賞後にそれを話し合うのもいいでしょう。
一つ驚いたのは家族で楽しめるクリスマス映画なのに裸のシーンが多いことです。不思議とそれが全然いやらしくなく、むしろなにか温かみを感じさせるほどでした。特にベッドシーンの撮影に挑む俳優と女優のやり取りを笑いにするってすごいですね。
様々なカップルが出てくる中で一番いいなあ、と思ったのもあのカップルです。ヌードシーンのダブルという役を淡々とこなし、恥ずかしさを隠しながらも撮影の合間に世間話をする二人のやり取りがとても微笑ましかったです。確かにあの現場をわきあいあいとこなすことができれば嫌でも男女の距離が近づきそうなものです。
ちなみにサラが職場で恋心を抱く同僚のカールはブラジル人俳優のロドリゴ・サントロが演じています。ブラジルを代表するイケメン俳優ですが、このときが一番ハンサムだったときなんじゃないかな。
サラはせっかくカールと上手くいきそうになったのに行為の最中に二度も電話に出たりして、ロマンチックな雰囲気を自らぶち壊していましたね。いくら弟思いだからといってもあれは絶対やっちゃだめでしょう。
サラのような女って優しくて真面目な自分に酔っているふしがあって、そのせいで状況、状況に上手く順応できないんですよね。ここぞというときにも道徳が邪魔するから優先順位がめちゃくちゃになって恋が実らないんです。あの恋が実っていたら、僕はこの映画が嫌いになっていたことでしょう。
一番せつない恋はサラではなく、間違いなく親友の奥さんジュリエットを好きになってしまったマークのエピソードでしょう。親友に気づかれずに告白しようと、画用紙にペンで文章を書いて思いを伝えた、あの告白シーンはいまだに映画史上に残る名場面として語り継がれているシーンです。
おそらく日本人がやったら文化的にもノリ的にも合わないでしょうが、ぜひ誰かあの告白を真似してやってみたらいかがでしょうか。
あのシーンが名場面として挙げられるのはそれに続くシーンが素晴らしいからだと僕は思っています。告白を終えたマークは「メリー・クリスマス」といってその場を後にする。そこにジュリエットが飛び出してきて彼に慰めのキスをする。そしてマークは自分にこう言い聞かせます。
「(伝えることは伝えたし)もう十分だ、もういいだろう」
あのセリフがやけに潔くて、せつなかったですねぇ。
さて様々な恋物語を見せた後、カメラはまた物語のスタート地点でもあった空港を映します。主要登場人物たちが一通り空港のゲートを出てくると、ラストは一般の人たちの再会のシーンを細切れで画面一杯に映すという演出で終わっていきます。
どこか「ニュー・シネマ・パラダイス」を彷彿させるあのシーンは「love actually is all around. 愛は実際のところ至る所にある」をテーマにした群像劇の幕を閉じるのに申し分のないラストでした。
コメント
これはすごく同意。
なんか有名な映画をかたっぱしから批判してるように見えるけど、この感想はすごく的を得ていて読んでておもしろかったです。
クリスマスっていいですよね
空港でのラストシーンが好きすぎてニコニコしちゃいました。登場人物が全員かわいくて嫌味なく見れるラブストーリーを久々に見たかもしれません。
時期外れでも楽しめたけど、クリスマスに誰かと見るのもよさそうです。
これ、好きなクリスマス映画の一つです
クリスマスなんで久々に見ました。改めてイギリスの有名俳優をこれでもかと集めた豪華さで、9つの話がバラバラと同時並行に進むけど役者の知名度のお陰で迷子にならずに済みます。全ての話がちょっとずつ地続きなのが憎かったです。
ウィスコンシンに行ったコリンの話はそんな訳ないだろ的なうますぎる展開で、何回見てもコリンの妄想?夢オチだったっけ?と思ってしまいます。
これは何度でも見れちゃう名作ですね