芸術路線の不気味すぎるフレンチホラー。終始音が小さく、セリフが少なく、ストーリーの説明はほぼなく、視聴者に解釈を委ねた不思議で気持ち悪い映画。68点(100点満点)
映画「エヴォリューション」のあらすじ
住民は少年と女性だけの島で、10歳のニコラ(マックス・ブレバン)は、母親と2人で生活している。全ての少年が不可思議な医療を施されていることなど、島での日常に違和感を覚えるようになった彼は夜中に家を出て行く母親の後をつける。海辺に向かった母親が、ほかの女性たちと始めたある行為を目にするニコラ。それを機に、彼は思いも寄らなかったおぞましい事態にのみ込まれ……。
シネマトゥデイより
映画「エヴォリューション」の感想
大人のホラー映画です。ハリウッドのホラーと違って登場人物がキャーキャー叫ぶことはありません。むしろ登場人物たちはほぼ無言で無表情を貫き、誰が何を考えているのかすらよく分かりません。
舞台は静かな海辺の町です。そこには大人の女性と少年しか存在せず、少年たちの生活は常に大人たちに監視されています。子供たちの食事にはミミズを混ぜたピューレのようなものが与えられ、食後には青い色をした液状の薬を飲まされます。「僕は何の病気なの?」と聞いても母親からはぐらかされるだけ。
誰も本当のことを教えてくれず、少年たちも何も知らないまま、自分の母親となんとなく時を過ごしています。そんな生活の中、ある日少年ニコラは海辺で水死体を見つけます。しかし母親に話しても取り入ってもらえず、また海に戻っても死体はなく、赤くて大きなヒトデがあるだけでした。
別の日に病院に連れて行かれたニコラは注射を打たれ、入院させられます。やがてお腹にエコーを当てられ、そこから鼓動が聞こえてくるのでした。
つまりその町では少年に赤ん坊を出産させることが強要されていて、用無しになった少年たちは次々と殺されるか、海に沈められるようです。
一連の種付け、手術、出産といった過程を大人の女性たちが少年たちに何も説明せずに当たり前にやらせていく様子と閉鎖されたその世界こそがこの映画が作り出している恐怖です。
物語は静かにゆっくり進んでいくので、アメリカンホラーに慣れている人にはスローでちょっぴり眠くなるかもしれません。でも僕からするとギャーギャーいう恐怖なんて大したことないと思っているので、こういうジワジワと心理を突いてくる方が好きです。さすがフランス映画という感じがしますね。
色々な謎が残されているのもいいですね。例えば大人の女たちはなんだったのかとか。背中に吸盤のようなものがついていたけど、あれは人魚だったんですかね。海の中で呼吸できるようだったし。
そういえば題名の「エヴォリューション」は「進化」という意味があるので、やはり人間から進化した形が彼らなのでしょうか。手術には麻酔を使っている様子もなく、少年が手を切ったときも直で針を通していましたね。それも釣り針みたいな、いかつい針を。彼らは痛みにも強いのかもしれませんね。
海辺で女たちが裸になってクネクネ動いていたのはなんだったんでしょうか。あれは欲望に溺れた行為なのかそれとも一種の儀式なのか。うーん、分からない。でも分からなくても十分面白いです。
コメント
面白かったですね。
「エコール」も観ましたが、私はこちらのほうが好きです。
私は第二次性徴前夜の少年が漠然と抱える性に対する不安と恐怖を描いているのかなと・・・
私は女ですが、この映画を観て、幼い頃、妊娠するんじゃないかという恐怖がつきまとっていたことを思い出しました。
もしよかったら私の記事をお読みいただけたら嬉しいです^^
Zeldaさん
ブログ読ませていただきました。すごく深く分析されていますね。なるほどなあと思いました。
映画男様
当方のブログをお読み下さり、またコメント返信をいただきまして、ありがとうございました。
これからも映画男さんの映画の記事楽しみにしております^^