カナダ発、飛行機事故を軸に繰り広げられる運命と奇跡と神をテーマにした群像劇。映像、演技、演出はいいものの、期待を抱かせる割には最後に大きなオチがないのが惜しかったです。60点(100点満点)
神のゆらぎのあらすじ
ある日、飛行機事故が起こり、多くの患者が病院に連れてこられる。多くの犠牲者の中で奇跡的に生き残ったのはたった一人。看護婦でエホバの証人の信者であるジュリーはその患者に特別な興味を寄せるようになり、細心のケアを与える。
一方でジュリーには白血病で輸血を必要としている婚約者がいた。しかしエホバの証人の教えでは血が汚れるとして輸血ができず、自分の信仰か婚約者の命のどちらかを優先するかの選択で苦しむ。
ベネズエラから帰国したサイモンは、麻薬入りのカプセルを飲み込み密輸を図ろうとしていた。空港に到着し、組織のメンバーと落ち合い、ホテルに向かった彼は、ホテルの部屋の中で60個のカプセルを排泄して取り出そうとする。
裕福な夫婦マーティンとエベリンはそれぞれギャンブル、お酒に溺れる毎日を送り、毎年必ずキューバで休暇を過ごすというのが習慣だった。カジノで働くレイモンドはマーティンからその話を聞いてからというもの不倫関係にあるリーゼをキューバに連れて行こうとする。
神のゆらぎの感想
すごく面白そうな雰囲気があり、今にも何かとんでもないことが起こりそうな予感をさせる演出をしておきながら、結局最後に大した展開もなくそのまま終わっていく惜しい作品です。
奇跡や神といったテーマを基に、それぞれ訳ありの人々がこれから事故に遭おうとしている飛行機に乗るまでを、過去と未来を行ったり来たりさせながら描いていく方法は斬新で見ごたえがあります。
映像はきれいだし、音楽はいいし、俳優たちの演技は上手いし、序盤からかなり引き付けられるんですが、大事なオチを忘れていて、大声で呼ばれたから行ってみたらそこに誰もいなかったみたいな気持ちにさせられました。いい映画だけにもうちょっとで名作になりえたのにと思うと悔んでも悔やみきれません。
物語の中心となるのは、エホバの証人の信者である看護婦ジュリーです。ジュリーは自分のフィアンセが白血病で輸血を必要としています。また、職場の病院では奇跡的に飛行機事故を生き延びた患者と接しながら、日々自分の信仰と現実との葛藤と戦うことになります。
ジュリーは飛行機事故でも死ななかった患者に神秘的なものを感じ、強い興味と憧れを抱いていきます。そしてたまたま患者と自分の血液型が一致し、人命を取るか、宗教を取るかで決断を迫られます。それはちょうど恋人の命を守るかどうかにもつながる決断でした。信仰心の強い彼女はしかし終始無表情で冷たく、恋人以外にはまるで優しさが感じられないのが印象的でしたね。
他のキャラクターたちもそれぞれ問題を抱えた人たちばかりで不倫、ギャンブル、アルコール、犯罪などに手を染めていき、最後は飛行機に乗るか乗らないかといった運命のいたずらのような結末を迎えるストーリー仕立てにしてありました。テンポは遅くてじれったさもあるんですが、あの辺のストーリーの流れは上手いですね。
「飛行機が落ちたら、それはすなわち全能の神がいないということ」。そんなセリフが劇中、繰り返し登場しますが、物語の中ではエホバの証人がかなりのキーポイントになっています。神は存在するのか、輸血拒否は宗教的に、またはモラル的にどうなんだ、といった議論を起こしそうな内容で、視聴者の信仰や考え方によっても解釈が変わってきそうです。
僕が高校生だったとき同級生の女の子にエホバの証人の信者がいました。その子とかなり仲良くなって、さあこれから思う存分あんなことやこんなことをしてやろうと思っていたら、異性と交際することも認められていないことを知って愕然としました。
モルモン教のいい身体をした女の子と仲良くなって、手をつないだだけで他のことは一切ダメダメと言われて意気消沈したこともありました。
宗教が酒やタバコや輸血を禁止するのは大いに結構なんですが、どうかお願いだから恋愛だけは禁止してくれるなよって思います。この映画のジュリーは輸血するしないで真剣に悩んでいましたが、その前に死に行く恋人に一度でいいから性の喜びを与えてやってほしかったです。
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