何事にも動じず、粋な生き方に美徳を感じる妊婦が雲のように流されながら生きていく姿を追った、コメディードラマ。
昔の日本の義理と人情を感じさせる登場人物たちがちょこちょこ笑わせてくれるハートフルな映画です。63点(100点満点)
ハラがコレなんでのあらすじ
妊娠9か月の原光子(仲里依紗)。子どもの父親はアメリカ人の元カレの可能性が高いが行方知れず。お金もなく行くあてもないが、昔住んでいた長屋に行ってみることに。そこには貧乏で優し過ぎるがゆえに、パッとしない住人たちが昔と変わらず住んでいた。人のことなど構っていられないはずの光子だったが、彼らのために一肌脱ごうと決意する。
シネマトゥディより
ハラがコレなんでの感想
「舟を編む」、「川の底からこんにちは」、「夜空はいつでも最高密度の青色だ」などで知られる石井裕也監督の作品。ヒロイン光子のキャラクターに対してどういった反応を持つかによって楽しめるかどうかが変わってきそうな映画ですね。
光子はおんぼろの長屋が集まった貧しいコミュニティーの中で育ち、助け合いと人情こそが粋な生き方だという考えの持ち主で、自分のアパートの隣に誰かが引っ越してくればずかずかと家の中に入っていってたくあんをあげたり、公園にリストラされたサラリーマンがいれば自分のなけなしの全財産を渡したり、と何事にも無頓着な女で、いわゆる常識は欠けている分だけ、思いやりと情に溢れる人間です。
そんな光子を含め、近代社会の中でこんな人たちが今の時代にもいたら素敵だな、嬉しいな、と思える人間味のある長屋の住人たちばかりが出てきます。
ある意味彼らはみな”理想の貧乏人”といったような美化された人たちばかりで、現実味はこれっぽっちもありません。終始「貧しい人たちは優しい」みたいな描き方しかしていないので、あそこはもうちょっと自分勝手な貧乏人たちと対比させてもよかったですね。
それでも全体的に微笑ましいからか、僕的には十分に楽しめました。光子の言うことは逆説的なことも含めて、物事の核心をついていたりすることがあるので、うじうじ小さいことに悩んでしまう人には教訓になりそうです。
- 風向きが悪いからとりあえず昼寝しよう
- 私も迷惑かけるから、私にもたくさん迷惑かけてくれ
彼女の考え方は、深く考えてもしょうがないから風の流れに身をゆだねて、問題は一人じゃなくてみんなで解決していけばいいじゃん、というのが基本で、今の日本には珍しいんじゃないでしょうか。でも横のつながりが固い南国とかにはこういう人たちが普通にいますよね。
借金を抱えてても悲壮感のかけらもなくヘラヘラ過ごしている人とか、できないことは全部人に頼んでしまえっていう人とか僕の周りにもいます。
凄いのになると借金数億円っていう人もいたりして、逆に問題もそれぐらいまで膨らむと現実感がないから全然平気なんだそうです。
そういう人たちを見てると、物事を深刻に考えるのが馬鹿馬鹿しくなってきて、自分の悩みやこだわりがどれだけちっぽけかを痛感します。
逆になんでもかんでも「どうしようどうしよう」と悩み、「人の迷惑になるから」などと心配するタイプは光子のような人間を見習うべきですね。物事が上手くいかなくなったらとりあえず寝たらいいんですよ、寝たら。
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