スポ根映画の最高傑作ともいえる、涙なくしてはとても見られない感動のアメフト映画。
貧困にあえぐ、黒人生徒たちの集まる弱小アメフトチームが熱血コーチの指導を受けて生まれ変わる過程を描いた、あまりにもできすぎた信じられない物語。88点(100点満点)
アンディフィーテッドのあらすじ
テネシー州メンフィスのマナサス高校にあるアメフト・チーム“マナサス・タイガース”は、結成されてから一度も試合で勝ったことのない弱小チームだった。だが2004年にボランティアコーチとしてやって来たビル・コートニーの驚異的な指導から、無敗(undefeated)のチームへと生まれ変わっていく
シネマトゥディより
アンディフィーテッドの感想
アカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー映画賞受賞作品です。これやばいやつです。一度でも部活に熱中したことのある人なら泣きます。
そうじゃなくてもスポーツが好きなら、アメフトに興味なくてもはまります。教育者とはなにか、指導者とはなにかといったことから、コーチと生徒たちの苦悩や葛藤を通じて愛や友情や夢や希望を一度に見せ付けられました。
僕はアメフトのルールすらろくに分かりません。どちらかというと、体の大きな選手が活躍するいかにもアメリカ的なスポーツとして抵抗を感じるくらいです。それでもこの映画には釘付けにされました。
スポーツという一つの枠を超えてこの映画はときに学園ドラマになったり、ときに不良映画になったり、ときに家族映画になったり、と様々な側面を持ち合わせています。
舞台はテネシー州メンフィスにある、生徒のほとんどが貧しい黒人の学校。そこにボランティアとしてやってくるのが白人のコーチ、ビルです。
アメフトチームは歴史上一度も地区大会のプレイオフ(勝ち抜き戦)の試合に勝ったことがないぐらいの弱小チームで、ビルはそこで一から生徒たちにチームワークの大切さや心構えを教えていきます。
選手たちのほとんどは厳しい家庭環境の中で育ってきた者ばかりで、「親戚や家族の中で刑務所に入ってた人はいるか?」と聞かれると、ほぼ全員が手を上げるぐらいです。
ある生徒は父親が蒸発していなかったり、またある生徒は子供の頃に親が死んでいたり、というのが当たり前で、中には少年院から出てきたばかりの誰構わずすぐに喧嘩をふっかける、という生徒までいます。
そもそも生まれつき希望やチャンスといったことから無縁に生きてきただけに一見肉体的には強靭でタフに見えても実際精神的にはとても弱く、物事が上手く行かなくなると、自暴自棄になってすぐに諦めてしまう生徒たち。体こそ大きくてもやはり傷つきやすいごく普通の高校生なのです。
そんな彼らにコーチのビルは規律とはなにか、成功とはなにか、人の価値を決めるものはなにか、といったことを徹底的に叩き込んでいきます。実際には戦術やテクニック的なことも指導しているんだろうけれど、カメラは特にビルが伝える根性論や精神論にフォーカスしていきます。
その言葉がまた上っ面で話しているのではないことが伝わってくるので画面を通じて心にずっしり響いてきます。自分の家族をも犠牲にし、生徒たちのことをここまで本気に思っている教育者がまだ存在するということに心から感謝したくなりました。
とにかく信じられないエピソードの数々が登場します。勉強に遅れがちの有望な黒人の生徒を自分の家に住ませてあげて家庭教師までつけてあげる白人の家族。
少年院から学校に戻り、散々チームに迷惑をかけて、最後には心を入れ替え仲間思いになる少年。ありえない点差から大逆転勝利した実際の試合映像。あまりにも映画的で、フィクションっぽくて、美しくてドキュメンタリーであることを忘れます。
もちろん実際はこんなにいいことばかりじゃなかったでしょう。美化して美化してやっとまとめた一本でしょう。それでも見てよかったし、教育に携わる全ての先生たちに、そして希望を失いかけている全ての学生にぜひ見てもらいたい映画です。
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