起承転結の付け方がものすごく上手な感動のイギリス映画。バレエダンサーを目指す少年と、それに反対する家族の葛藤と心の変化を描く、子供を持つ父親が見たら涙すること間違いなしの作品。77点(100点満点)
リトル・ダンサーのあらすじ
1984年、イギリス北部の炭坑町。11歳のビリーは炭坑労働者のパパと兄トニー、おばあちゃんと暮らしていた。ある日、ビリーの通うボクシング教室のホールにバレエ教室が移ってきた。ふとしたことからレッスンに飛び入りしたビリーは、バレエに特別な開放感を覚えるのだった。教室の先生であるウィルキンソン夫人もビリーに特別な才能を見出した。それからというものビリーはバレエに夢中になるのだが……。
シネマトゥディより
読者の大澤さんのリクエストです。ありがとうございます。
リトル・ダンサーの感想
「愛を読むひと」、「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」、「TRASH」のスティーヴン・ダルドリー監督による、ハートフルドラマです。
大げさにせず、素朴で、ユーモアがあって、泣ける、という優れたイギリス映画特有の要素満載の作品です。2000年公開の映画ですが、今見ても全然面白いし、感動しますね。時間が経っても廃れないんだなあ、いい映画って。
一度見たことがある人でもぜひ見直してみてください。僕がこの映画を見るのは今回が2,3回目でしたが、結構忘れているシーンとかもあって、なかなか新鮮な気持ちで見ることができました。
10代の若者がこの映画を見たらおそらく少年ビリーの視点で見ることになるでしょう。それに対し子供を持つ年齢になったら、父親の視点で見てしまうのではないでしょうか。公開当時は気づきようもなかったことですが、この映画はかなり世のお父さんたちの心の琴線に触れる映画だということが今になって分かります。
物語の展開がわざとらしくなく、臭くなくかつドラマチックに進んでいくのが見事ですね。序盤では鉱山労働者の父親とふてくされた兄に囲まれたどうしようもない家庭環境を描き、中盤ではバレエの練習に没頭するビリーを映し出し、終盤にオーディションのために家族が一致団結する、という流れがよかったです。
家族愛を描くにしても、イギリス映画の家族はアメリカンな「I LOVE YOU」しか言わない馬鹿家族とは違います。父親は口が悪く、子供を殴り、酒飲みで、男はバレエなんかやらないで男のスポーツをやるべきだといった昭和の日本男児のような親父だったりします。
しかし、ただの口が悪い頑固親父ではなく、ときには体を張って息子を守る優しさを持ち合わせているのが素敵です。その鬱陶しさと優しさの絶妙なバランスが妙に懐かしいからこそ、この映画が日本人に共感されるのかもしれませんね。
少年ビリーのダンスもユニークで良かったですね。アメリカ映画ならいかにも振り付けといった派手で見栄えの良いダンスをさせているところですが、そこをあえてあの分かりにくいダンスにしたのがセンスありますね。アドリブで踊っているみたいでした。
物語は少年ビリーが鉱山の田舎町からロンドンに引っ越し、バレエスクールに入団して立派なダンサーに育っていく、いわばサクセスストーリー風に幕を閉じていきます。バスターミナルで11歳の息子を送り出す家族。普通に考えても寂しくて、つらいですよね。
僕も16歳のときに一人で海外に出たので、ついつい当時のことを思い出してしまいました。僕はアホだから不安もほとんどなく、ただただ海外に行くことにワクワクしていたけれど、今思うと家族は寂しかったんだろうなぁ。
コメント
久しぶりにコメントさせてもらいます。
「リトルダンサー」は私も大好きな映画で何度見ても泣かされます。
が、まさか、映画男さんがこの映画に70点を付けるとは!
こういうストレートに親子や兄弟の愛情を見せる映画には点が辛い
という印象があったものですから・・・(申し訳ない)
こうなってくると、私の「生涯BEST1」に対するご意見も、
是非、聞いてみたいです。
(でも、あまりにもベタな映画なので、怖いから別の機会に)
とにかく、「リトルダンサー」が高得点で良かったです。
かめさん
コメントありがとうございます。ぜひ「生涯BEST1」教えてください。
以前「わたしを離さないで」をリクエストした者です。
あの時は「映画男さんに無駄な時間を使わせてしまったかな」と反省する日々でしたが、シェア数が多いことを知り(勝手に)気持ちが楽になりました。
私も(映画評論ではなく日記的な)ブログを書いていますが、そこに「リトルダンサーが最も好きな映画だ」と書いた時「もっとダンスのうまい子役を使えばいいのに」というようなコメントを頂いたのを思い出しました。
私はあのビリーのステップに心が震えるほど感動したんですけどね…。
映画男さんもあのダンスが良かったと書いてくださったので嬉しいです!
メイプルさん
「わたしを離さないで」の文句は意外と好評で自分でもびっくりしています。リトルダンサーのビリーのダンスの良さが分からない人は、アメリカ映画ばかり見て、マクドナルドとスターバックスにしか行かない人なので、気にしないでいいですよ。
「フットルース」等でも感じるのですが、葛藤をダンスで爆発させる、感情がダンスに現れるところが素晴らしいですよね。
講評ありがとうございました。
大澤さん
リクエストありがとうございました。ビリーの感情むきだしダンスは心に響きますよね。