アンドリュー・ヘイ監督による老夫婦による愛と嫉妬と情の物語。微妙な表情と会話が全てを物語る大人向けの芸術路線の人間ドラマで、熟年カップルが見るべき映画です。67点(100点満点)
映画さざなみのあらすじ
結婚45周年を記念したパーティーを土曜に予定しているジェフ(トム・コートネイ)とケイト(シャーロット・ランプリング)の夫婦。だが、月曜に届いた手紙がきっかけとなって、山岳事故で命を落としたジェフの昔の恋人の存在が二人の間に浮き上がってくる。
かつての恋人との記憶をよみがえらせてはそれに浸るジェフと、すでにこの世にはいない彼女に嫉妬を募らせていくケイト。次第に彼女はジェフに対する不信感を抱くようになり、長い夫婦生活で育んできた愛情や絆も揺るぎ始める。
シネマトゥディより
読者のshさんのリクエストです。ありがとうございます。
映画さざなみの感想
若者が見たら、「何も起こらねえじゃん?」と退屈してしまうタイプの映画です。それに対し、長年連れ添ったパートナーがいる人にとってはしんみり、ずっしり来る内容だと思います。
イギリス製作の作品ですが、テンポはまるでスローなフランス映画といったところで、話はゆっくり、そして一つ一つのシーンにディテールを含みながら進んでいきます。出演者の演技が上手で、主演女優のシャーロット・ランプリングはアカデミー賞にノミネートされています。
ある日、老夫婦の下に手紙が届き、そこにはスイスの氷山で亡くなった夫の元恋人の死体が何十年ぶりに発見されたと書いてあります。
その女性はかつて夫が結婚を考えていた女性。手紙を読んでからの夫の行動や態度の変化に気づいた妻は、冷静を装いながらも徐々に猛烈に嫉妬を覚えるようになり、結婚45年目にして夫に対する見方が根底から変わってしまう、というのが話の流れです。
夫婦の年齢は70代ぐらいでしょうか。70代の女性がいまさら夫にあれほどの嫉妬を覚えるのかどうかは疑問ですが、もしかしたら女性にもよるのかもしれませんね。男の僕からしたら「そんな昔の話、許してやれよ」って思える話でしたね。
ただ、屋根裏部屋なんかを探索してみると、亡くなった夫の昔の恋人のスライド写真が出てきたり、よく見ると彼女が妊娠してるかのような写真もありました。それを見た妻はさらに気が気じゃなくなっていきます。
やっぱり男女関係は赤ちゃんが介入してくると、急に話の流れが変わってしまうほど深刻化しますね。どんなに寛容な人も相手に自分以外の男、あるいは女の赤ん坊がいるというのは動物の本能として耐え難いのか、どのようにその状況を受け入れていいか分からない人がほとんどじゃないでしょうか。
ただ、このカップルの場合は論点が何十年前の出来事という点において多くのカップルの嫉妬とはタイプが違いますね。
そういう意味では妻のケイトはあの年齢にしてもなおとても女らしい女性だと言えそうです。珍しく熟年夫婦のベッドシーンまでありましたもんね。ああいった”現役”感を出す演出とかかなり細かかったです。
男か女かで言ったら、どちらかというと男のほうがうじうじ過去にしがみつき、女は執着しない性質なのだと思っていました。心の切り替えで言ったら女性のほうが圧倒的に上手いじゃないですか。
それでもこの映画に共感できる女性がいるということは、案外人によってはそうでもないんですかね。
あるいは妻が過去にこだわっているというより、過去をひきずっている現在の夫の態度に嫉妬しているのかもしれませんね。あの辺の男性心理、女性心理を両方の立場から想像していくのがこの映画の醍醐味でしょう。
それにしても大人の映画だなあ、という感じがしますね。この映画が面白いと思うようになったら、それは歳を取ったということなのかもしれませんよ。
コメント
早速、リクエストに応えて頂き、有り難うございました。
「大人の映画」まさしく同感です…!
ただ、私はケイトのことを特別に嫉妬深い女性だとは感じなかったんですよね。むしろ夫の側の無神経な言動には本当に苛々させられました。個人的には初めて手紙について打ち明けるシーンで、もうアウトでしたね。
「僕のカーチャ」ってなんだそれ(・o・;
ケイトが許せないのは夫の過去ではなく,今現在の彼のそういう態度なのですが、それすら分かってもらえない。でも、何か言えば単なる嫉妬としてしか感知してくれないから何も言えない。その辺りの葛藤が同性として非常にリアルに感じられました。
あぁ、でもやっぱり男性にとっては所詮、嫉妬は嫉妬でしかないのかな(汗)映画男さんの批評を読んで、そんな風に思いました。ケイトも下手に我慢しないで最初から皿でも割って大暴れした方がよかったのかもしれないですね(笑)
どうもありがとうございました!
これからも楽しみに読ませて頂きます。
shさん
コメント&リクエストありがとうございます。女性の解釈はやっぱり違うんですね。興味深いです。確かにケイトは感情をあまり出さないタイプで、逆にそれが男からすると怖かったです。
アマゾンプライムで見ました。
子供がいない夫婦ってお互いの存在がよりどころで良くも悪くもいつまでもカップルなんだなぁって思いました。
夫はもう昔に死んだと思ってた20代の元彼女が現れて(死んでますが)浮かれちゃったんですね、同窓会みたいなもんで、20代の恋愛ってやっぱちょっと特別だから。
ラストの奥様が、怖かったです…
女はいくつになっても女だっていうのを表した映画ですね。怖い。