リー・ダニエルズ監督による、つらい家庭環境に育った女子高生の物語。アカデミー賞のノミネート作品で山田洋二監督の「学校」の黒人版ともいえるアメリカのスクールドラマです。45点(100点満点)
プレシャスのあらすじ
1987年のニューヨーク・ハーレムで、両親の虐待を受けながら希望のない日々を生きる黒人少女プレシャス。レイン先生に読み書きを習い、つたない文章で自分の心情を綴り始めたプレシャスは、ひたむきに人生の希望を見出していく。
(eiga.comより)
プレシャスの感想
これでもかというほど悲劇を重ねたせいで、ただの可哀相な話になってしまった女子学生の物語です。
不幸な家庭に生まれた少女、プレシャスが苦境にも決して屈せず、勉強、クラスメイト、先生を通じて少しずつ心を開いていき、希望を見出していくという筋書きになっています。
他の映画でも見たことがあるような気がして新鮮さがなかったですね。ラストシーンに辿り着くまで特に見所がなく、甲高い声でギャーギャー騒いでる人たちの会話がうるさくてしょうがないです。
学校ドラマとなると、家庭の事情が複雑な少年少女たちが焦点となりますが、日本だと両親の離婚、家庭内暴力、不登校、不良などを度々取り上げるのに対し、アメリカでは家庭内に必ず薬と性が介入してくるのが特徴です。アフリカのライオンですら近親相姦はしないというのにアメリカではそれが日常茶飯事なんでしょうか。
いずれにしろそういう過激なストーリーを出してこないと、アメリカではいまいちインパクトに欠けるのかもしれませんね。
その点この映画は父親に犯され、その子供を二人も出産し、そのうえHIVまで移された高校生という、これ以上ない不幸エピソードを題材にしているだけあって、監督、プロデューサーが二人でガッツポーズをしながら「こんなに不幸な話はそうあるまい、どうだ参ったか、ははは」と高笑いしているような、不幸自慢されているような気にもなりました。
そのためなんだかただ可哀想なだけの女の子の映画、という印象のまま終わってしまったのが最大の欠点だったのじゃないかと思います。
とはいえマライア・キャリー扮するソーシャルワーカーやプレシャス、そして彼女の母親との3人によるラストシーンはなかなか見ごたえがありました。
マライア・キャリーのリアクションも良かったし、プレシャスの母親のぶっ飛び方もすごかったです。
特にプレシャスの母親はハーレムから本当に連れてきた人みたいな迫真の演技で、常識もモラルも理屈もへったくれもない無学の女になりきっていましたね。あのおばさんこそオスカーを受賞するべきでしょう。
この映画もいわゆる黒人映画で、キャストのほとんどが黒人という構成になっています。
一方でマライア・キャリーやレニー・クラヴィッツなど黒人と白人のハーフの出演者を出して黒人映画の枠をほんのわずかだけ越えようとしているような意気込みが伺えました。
ちょうどそれはハーフの大統領を迎えて「チェンジ、チェンジ」と口ずさんでいるアメリカ国民とかぶるような気がしなくもありません。
しかしどうせマライア・キャリーとレニー・クラヴィッツというミュージシャンをゲストに迎えたのなら先生役を武田鉄也風の熱血教師になぜしなかったのか非常に悔いが残ります。
黒人の女生徒たちを金八先生が「この馬鹿者が」とか叱ってくれればそれだけでいいのに。
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