リアリティーと臨場感に溢れる、少年兵を描いたアメリカの戦争映画。少年がいかにして武器を持ち、戦争へと繰り出されていくのかを上手く描いていて、映像にもこだわりが見られるクオリティーの高い作品。65点(100点満点)
ビースト・オブ・ノー・ネーションのあらすじ
内戦が勃発したものの、まだ平穏に毎日を過ごすことができていたある日、少年アグーの暮らす村に、反乱軍を弾圧すべく政府軍がやってきたことから、ささやかな日常は崩壊する。アグーは命からがら逃げ出したものの、武装集団の指揮官に見つかり、強制的に一味に加えられてしまう。弾薬を運ぶ係として否応なしに戦闘に参加させられたアグーは、いつしか機関銃を掲げる兵士へと変わり、その手を血に染めていく。
映画ドットコムより
ビースト・オブ・ノー・ネーションの感想
「闇の列車、光の旅」の日系人監督キャリー・ジョージ・フクナガによるネットフリックス製作の映画です。政府軍に家族を目の前で殺された少年アグーが逃亡中にゲリラ集団に捕まり、強制的に兵士にされ、戦い方や思想を植えつけられていく過程を上手く描いていました。
ゲリラ兵たちのアホっぽさと、残虐性が上手くマッチしていて、余計に恐ろしいです。兵士たちはほとんどが10代から20代の若者たちばかりで何で戦っているのかさえよく分かってなさそうな感があって、盲目的に人を殺していきます。
そんな若者たちを率いるのはカリスマ性があって頭の切れるリーダーで、彼が様々な方法で子供たちを洗脳していきます。
ときには原始的な原住民のおまじないのような儀式をしたり、戦いの前には歌を歌ってリズムを取って士気を高めたり、ドラッグをやったりして、兵士たちを興奮状態、あるいはトランス状態に持って行きます。その辺の一連の洗脳術はカルト宗教のようで面白かったです。
その一方で戦いの目的や、敵との関係性、戦況についての情報がほとんどなく、何の、誰の、どこの戦いなのかが見えてきませんでした。敵側に分かりやすいボスキャラとかがいればよかったんですが、監督としてはそういう幼稚な映画にはしたくなかったんでしょうね。
ラストはゲリラ集団のリーダーがカリスマ性を失い、兵士たちが仲間割れを始め、少年アグーたちが国連軍に身柄を拘束され、施設に送られて物語が終焉へと向かいます。
戦うことしか知らない少年たちの中には施設にいても体がうずき、再び戦場に戻りたがる少年もいたりします。果たしてそんな彼らに心の平和は訪れるのでしょうか。彼らの将来を思うと絶望的な思いになるような幕の閉じ方がまた味わい深かったです。
コメント
Netflix初のオリジナル作品だそうですね。
これをオリジナル1作目に掲げる、さすがです。
この状況下、NOという事は死しかない訳で、行いに対して何が正しくて何がそうじゃないのかわからなくなります。
下手に感動を誘うこともせず淡々と伝えていくのが良かったです。
戦場にいても、施設にいてもトンネルの様な先が見えない精神状態のアグーに少しだけ光が見えたようなラストにほっとしました。
衝撃的な話でしたね。