雰囲気があって、映像がきれいで、十分な娯楽性を兼ね備えているスペインで大絶賛された刑事ドラマ。ラストのオチには色々な意見が出そうなサスペンススリラーで、鑑賞後犯人が誰なのかそれぞれの意見をぶつけ合う楽しみが残されている作品。60点(100点満点)
マーシュランドのあらすじ
1980年、スペインのアンダルシア。湿地帯にある小さな町で、2人の少女の行方がわからなくなる。やがて彼女らは激しい拷問を加えられた果てに殺される。ベテラン刑事のフアン(ハビエル・グティエレス)とマドリードから左遷されてきたペドロ(ラウール・アレバロ)は、これまでにも似た事件が起きていたことを知る。調べを進めていくうちに、貧困、汚職、麻薬密売、小児性愛といった町と住人が抱える闇を目の当たりにするフアンたち。そんな中、新たな少女失踪事件が起きてしまう。
シネマトゥディより
マーシュランドの感想と評価
久々にまともに見られたスペイン映画です。最近のホラーばかりの風潮に逆行してくれて、とても嬉しいです。俳優たちも十分にインパクトがあり、しっかり演技ができる役者ばかりを集めているうえ、映像やストーリーにも凝っていて、結構な製作費もかかっているような印象もあり、スペイン映画であることをふと忘れさせます。
ストーリーは、小さな田舎町で二人の美人姉妹が突然行方不明になっり、二人の刑事が真相を追う、という単純なものです。しかし捜査を進めるうちに、その町の深い闇と凶悪な組織に複数の事件が関連しているものだということを突き止めます。町の住民は多くを語ることを嫌がり、地元の有力者や警察まで信用できなような雰囲気の中、やがて二人の刑事は一人の男の存在を知る、というのがあらすじです。
刑事の二人はどちらも渋くてよかったです。背の高いペドロはショーン・ペンを彷彿させるようなクールな男。もう一人の刑事フアンは背が低いけれど、暴力的なオラオラ系。フアンのほうは事件の容疑者はもちろん証人たちさえもじゃんじゃん殴り倒して、本音を吐かせようとする、という手荒なタイプで、パートナーのペドロさえも恐れています。
この映画が巧みなところは、一見連続少女誘拐事件を扱っているだけのように見せかけておきながら、実は様々な伏線を張り巡らせて視聴者を混乱させ、核心の部分をぼやかしている点です。最後に二人の刑事はある男と対決しますが、それだけで事件が解決したとは誰も思わないでしょう。本当の黒幕は誰なのか。その謎こそがこの映画の醍醐味です。しかし最後の最後まで真の犯人については語られません。それは視聴者のあなたが推測しなくてはならないのです。
こういう映画は、推理好きのファンには大うけするはずです。僕は犯人とか結構どうでもいいタイプなので、もうちょっとで、この映画の趣旨すらスルーしてしまっていたところです。それでも何かひっかるものがあったので、何度か見直してみたら、3つの説が浮上しました。
セオリー1 ハットを被った老人アルフォンソ・コラレスが犯人説
金持ちであり、町の有力者であるアルフォンソ・コラレスがロリコンで、イケメン青年キニに少女たちを斡旋させていた。未成年たちに手を出している事件が明るみになるのを恐れて、やばくなると手下に殺害させていた。もちろん地元警察にも賄賂を払っていて、町ではアンタッチャブルな存在だった。
セオリー2 ベテラン刑事フアンが少女たちを殺した説
フアンは誰構わず暴力を振るうほどの暴れん坊で、フランコ政権事件にもデモの参加者を射殺するなど、いわば拷問のプロ。少女たちの足の指が切断されていたのは実は彼の仕業だった。川で女がフアンの顔を見て、怪訝な顔をしたことや「あなたのことは見たわ。死体があなたを待っているわ」などと意味深なセリフを残したのもその伏線。フアンはバーに行くと酔っ払って、売春婦たちと遊んだりする女好きでもあることから、少女たちをレイプした後に残虐な行為に及んだと考えられる。なにより終盤にジャーナリストが渡した、写真の男の腕にはフアンがつけているのと同じ腕時計が写っていた。
セオリー3 監督が意地悪説
この作品のアルベルト・ロドリゲス監督がとにかく意地悪な性格の持ち主で、視聴者に犯人を教えるのが嫌いなために、わざと意味のない伏線を張りまくった。その結果、意味深なシーンが多くなりすぎて、なにがなんだか分からなくなってしまった。
この3つの説の中で一番有力なのは「セオリー3」です。伏線は張ればいいってもんじゃないです。女が男に「あなたに話さないといけないことがあるの」などとわざわざ前置きしてから、しょうもないことを話すのと似ています。ただ、びびらせたいだけなのです。どうせ大した意味なんてないんです。
コメント
>>女が男に「あなたに話さないといけないことがあるの」などとわざわざ前置きしてから、しょうもないことを話すのと似ています。
余計なこと書いて興ざめさせんなボケカス