社会派、音楽もの、友情もの、ドラマ、恋愛などさまざまなジャンルが上手くミックスされた力作。無駄がなく、細かいシーンのひとつひとつにちゃんと意味がある観賞のしがいのある作品。88点(100点満点)
扉をたたく人のあらすじ
大学教授のウォルターは亡くなったピアニストの妻のことが忘れられず、年甲斐もなくピアノを覚えようと努力していた。しかし彼には才能がなかった。ピアノの先生を雇っても気が合わず、すぐに首にしてしまうほど社交性もなかった。
そんなウォルターが久しぶりに自分の借り住まいであるアパートに帰ると、見知らぬ外国人のカップル、タレックとザイナブが何気なくそこで生活していた。彼らは知人からその場所を借りたと主張するが、すぐに事情を理解し、出て行こうとする。
だが、ウォルターは可哀相に思って二人を泊めてあげることにする。ウォルターはタレックがアフリカンドラムの奏者であることを知ると興味を示し、手ほどきをうけることに。何事にも無関心だったウォルターだが、アフリカンドラムを始めたと同時に活力を取り戻す。
タレックとの間にも友情が芽生え、新たな喜びに浸っている矢先、タレックが警察に逮捕されてしまう。実はタレックは不法滞在者だったのだ。その日からウォルターは仕事も忘れて、ありとあらゆる手を尽くし、友達を救い出そうとするが・・・・・・。
扉をたたく人の感想
「スポットライト 世紀のスクープ」、「スティル・ウォーター」で知られるトム・マッカーシー監督による、恋愛と友情のスパイスがかかった感動的な移民ドラマ。
たった一つの出会いで、人生なんて簡単に変わってしまうというのを絶妙な手口で表現している作品です。
前半は大学教授のウォルターと不法移民のアフリカンドラム奏者タレックの友情物語。そして後半からはウォルターとタレックの母親の大人の恋愛を描いた恋物語になっています。
ウォルターからすればタレックとの出会いは、人生の再起となるきっかけでしたね。その一方でタレックからすれば、ウォルターと出会ったせいで警察に捕まってしまいます。
しかしタレックは自分が捕まったことをウォルターのせいには決してしません。それどころか拘留所にいても「ちゃんとドラムを練習しているのか?」と気にかけるほどいい奴で、二人の友情には思わず胸が熱くなりました。
でもなんていっても一番良かったのはタレックの母親ですね。母親のモウナ役を演じたヒアム・アッバスがとにかく綺麗すぎ。気品と礼儀と教養と美しさと優しさをいっぺんに感じさせてくれる女優を久しぶりに見ました。
アラブ系の女優はほとんど知らないけど、ヒアム・アッバスのことを勝手にアラブの女王と呼ばせてもらいます。
映画に出てくる登場人物の女に惹かれることは滅多にないけど、彼女が演じたモウナには惚れてしまいましたよ。
ウォルターのアパートに泊まっていけと言われても、頑なにそれを断るプライド。親切にしてもらったら朝新聞を買っておき、食事を作るなどしてきちんとお返しをする礼儀。新しいめがねをかけてきた男に褒め言葉をいう気遣い。
なにより感動的だったのは、ウォルターが「自分は忙しいフリを、仕事をしているフリをしているだけで、実際はなにもしていないんだ」と告白したときに、「それを私に打ち明けてくれたことを感謝します」といった一言。最期の晩になにも言わずにベッドに上がり込んできたシーン。完全にやられた。降参です。
コメント
この映画は、確かにヒアム・アッバスですね。
中年女性にこれだけ惹きつけられるのは、稀有なことです。
ヒアム・アッバスはいいですよね。
モーナに惚れてしまいます。
普段、ワイン飲まなくてちゃんとカベルネってオーダーするのも素敵でした。
ワインの下りは気づきませんでした。でもモーナには惚れますよね。
こりゃ確かにいい映画。
観賞後は心に沁みたね。
今の時代にこそ観てほしい。
これいいですよね。