スティーヴン・ホーキングと彼と結婚したジェーン・ホーキングの関係をつづった大人の恋愛物語。
序盤こそキザで甘ったるくひどい映画になるかと思っていたら、中盤からすさまじい勢いで巻き返し、いつの間にか引き込まれて、釘付けにさせられる、ちょっといい話。80点(100点満点)
博士と彼女のセオリーのあらすじ
天才物理学者として将来を期待されるスティーヴン・ホーキング(エディ・レッドメイン)はケンブリッジ大学大学院に在籍中、詩について勉強していたジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)と出会い恋に落ちる。その直後、彼はALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し余命は2年だと言われてしまう。それでもスティーヴンと共に困難を乗り越え、彼を支えることを選んだジェーンは、二人で力を合わせて難病に立ち向かっていく。
シネマトゥディより
博士と彼女のセオリーの感想
スティーヴン・ホーキングについては、重度の障害者であり、ブラックホールについて語った世界的有名な学者といった程度の予備知識しか僕にはありませんでした。しかしそのおかげで、新しい発見もあり、インパクトも十分でした。
まず僕が知らなかったのは、生まれつきの障害者であると思っていたのが、実はそうではなくスティーヴン・ホーキングは大学時代に急に病に倒れ、体の自由を失った、という経緯でした。そのとき医者に余命2年だと告げられたそうですね。
そんな中で知り合った女性ジェーンが愛を貫き、どんな苦労も買って出る決意をします。あの度胸にもう尊敬と脱帽とそして自分にはない器の大きさに圧倒されると同時に自分の小ささに恥ずかしくなりました。
物語は二人の出会いから始まります。しかし話が面白くなっていくのは二人が若者らしくイチャイチャしている冒頭ではなく、スティーヴンが病に犯され、問題に直面してからです。病の重さを実感しているスティーヴンは自分の未来に絶望し、一度はジェーンを拒絶します。
しかしジェーンはたとえ残り短い人生だろうと、一緒にいたい、といって決して引き下がりません。障害が悪化するスティーヴン・ホーキングと結婚することはすなわち彼の介護をすることも含まれています。さらに夫の死を間近に感じながらも子供が生まれ、育てていかなければならなくなりますが、ジェーンはそんなことにも決して怖気づきません。
さらにつらいのが体の自由だけでなく、スティーヴンはコミュニケーションの自由も奪われていきます。ろれつが回らなくなったかと思ったら、やがて声まで失い、しばらくの間、瞬きで会話をせざるを得なくなります。
これからは瞬きで会話するんだ、となったときのジェーンの決意の表情が忘れられません。涙をうっすら浮かべ、さあ頑張るわよと言わんばかりの少し怖い顔をします。
もしかしたらスティーヴンにとっては奥さんの強靭な精神力がプレッシャーだったのかもしれません。やがてスティーヴンに二人目、そして三人目の子供が生まれ、学者として名声を得ると、生活にも変化が表れます。奥さんだけでは手に負えず、お手伝いやナースを雇うようになり、スティーヴンはナースの一人と恋に落ちるのです。
その一方で奥さんのジェーンは教会でコーラスの指揮をしていたジョナサンと出会います。ジョナサンは家に遊びに来るようになり、子供にピアノを教えたり、スティーヴンとも仲良くなり、家族ぐるみでの付き合いが始まります。
スティーヴンはこのときジェーンとジョナサンの関係についてどのように考えていたのか気になるところです。嫉妬といった安っぽい感情を超越した関係がそこにありました。ジェーンはもちろん、子供たちやスティーヴンまで気が付けばジョナサンのことが好きになっていた、という不思議な状況でしたね。
美しい映画にするためか、誰が誰と浮気した、といったシーンは省かれています。ベッドシーンも一つもありませんでした。夫婦のベッドシーンがあってもいいところですが、それもなしです。
ただ、ジェーンがジョナサンと子供を連れてキャンプに行ったときにジョナサンのテントに入ろうとしたシーンがありましたね。あれは浮気を示唆しているようでよかったですね。あのシーンだけはもっと引き伸ばして欲しかったですね。わずか数秒の間にジェーンの激しい息遣いと、迷いが感じられる名シーンでした。
しかしどういうわけかジェーン、あるいはスティーヴンが別の人を好きになっても裏切っている感がないのが不思議です。二人の間に、またはほかの人との間になにが起ころうとお互いのベストを望んでいるようなあの関係。お互いのことを本当の意味でリスペクトし、愛していれば人はあんな境地に到達できるのでしょうか。
結局、スティーヴンはジェーンと離婚し、ナースのエレインと再婚します。一方でジェーンはジョナサンと再婚します。それでもスティーヴンは元妻のジェーンと連絡を続け、現在でも友達の関係にあるそうです。別れた夫婦が「今でも仲の良い友達です」などというと薄っぺらく聞こえるけれど、この二人だったらそうなのかもしれないなと思えるようなところがありますね。
映画では触れられていませんが、スティーヴンは結局ナースのエレインとも離婚したそうです。スティーヴン・ホーキングは恋多き、やり手の男なのです。あれだけの重度の障害を負いながら三人の子供を作ったということからしても、その生命力はもちろん、雄としても相当な実力者であることが分かります。
さて、この映画は奥さんのジェーンが書いたノンフィクション「Travelling to Infinity: My Life With Stephen」を基にしているそうなので、現実は全然違って、奥さんが自分を美化しまくった、という可能性も十分にあるでしょう。
もしかして家事や子育てなんて全くしなかった女性だったりするかもしれません。スティーヴンを家に置いたまま、パブで飲んだくれて夜な夜な他の男たちと不倫していたかもしれません。しかしたとえそうだとしても、十分に素晴らしい映画でしたし、おそらくジェーンはそんなことしてないんじゃないか、いやそんな女性であるはずがない、と思えるほど感動と愛情溢れる作品でした。
そんな映画だからこそ夜な夜な不倫している女性にこそぜひ見てもらいたいです。そしてジェーンがジョナサンとした浮気と自分たちが普段している軽率な浮気が同じレベルの浮気じゃないことを思い知ってもらいたいです。
コメント
映画男さん。またまた感動しました。
スティーブンとジェーンの夫婦というか男女の関係がすごく新鮮でした。ラストのスティーブンがジェーンに言った言葉が胸にドーンってきました。
また、いい映画に出会えました。ありがとうございました。
ところで、エディ・レッドメインの演技は凄かったです。
ラミ・マレックもいいですけど・・・・
エディ・レッドメインは安定の演技ですよね。彼が主演している「リリーのすべて」もぜひ見てください。