未成年たちの施設を舞台にした心温まる、センスのいい人間ドラマ。ストーリーや見せ場の作り方などはありきたりで先が読めるものの嫌味がなく、自然体で、格好つけていないところに好感が持てました。71点(100点満点)
ショート・タームのあらすじ
問題を抱える子供のためのグループホーム「ショートターム12」で働くグレイス(ブリー・ラーソン)。グレイスは、新入りのジェイデン(ケイトリン・デ ヴァー)という少女を担当することになる。
グレイスは施設の同僚メイソン(ジョン・ギャラガー・Jr)と付き合っていたが、ある日、妊娠していることが判明する。そんな中、グレイスはジェイデンが父親に虐待されていたことに気付き……
シネマトゥディより
ショート・タームの感想
デスティン・ダニエル・クレットン監督によるリアルな人間ドラマ。
場所を学校から施設に移しただけで、生徒と先生(スタッフ)の関係を描いた学園ドラマといってもいいかもしれないです。
その中に上手い具合に恋愛を織り交ぜているところなんかが涙と共感を呼ぶんじゃないでしょうか。号泣とまではいきませんでしたが、僕も久々に映画でポロッといってしまいました。
問題児をテーマにすると、登場人物の設定は大体決まってきますね。両親がいない少年、性的虐待を受けた少女などといったパターンがほとんどで、またそれがアメリカの現実でもあるのでしょう。
「ショートターム12」で生活する少年少女たちは塞ぎこんで他人とコミュニケーションが取れなかったり、人を信用できなかったり、といった子供たちばかりで、施設の中で様々な問題を起こします。喧嘩、ドラッグ、自殺未遂とここでもお馴染みの展開が続きます。
一方でそんな少年少女たちの世話をするのがスタッフである若者の男女4人です。特に経験豊富なグレイスは親身になって子供たちの面倒を見、ときには体を張って暴れる彼らを止めに入ります。
お決まりのエピソードで溢れるこの映画にユニークさがあるとしたら、このグレイスの素朴さと飾らない優しさ、そしてそこに秘めた強さが、今までの映画と違ってやけに自然に描かれていたことでしょうか。
仕事中は気を張っているからか、タフな顔をつきをしているのに、家に帰ると急に女の甘えた顔になるところなんかが絶妙でした。
物語はグレイスやほかのスタッフに対してもバックグラウンドに子供たちと同じような過酷な家庭環境で育ったといった設定を与えています。
だから子供たちの気持ちが良く分かって親身になれるんだ、というのもやはり出来すぎで、いかにも映画的な設定という感じがするけれど、あの辺はドラマを作るためにそうするしかなかったのでしょう。
僕的にはグレイスが父親から性的虐待を受けていたせいで、父親が刑務所にいるという下りより、恋人で同じスタッフのメイソンがメキシコ人の両親に育てられた、という下りのほうがインパクトがありました。マイノリティーの夫婦がマジョリティーの子供を養子に引き取るといったシチュエーションが新鮮でしたね。
それにしてもメイソンが優しすぎる男で、女性が見たら惚れ惚れしちゃうはずです。女のわがままをなんでも受け入れてくれる器のでかい男。特にグレイスが喧嘩してから家に帰ってきたときに、なにも言わずに毛布を開けて招き入れるシーンなんかは格好良かったです。
グレイスはことの最中に自分から誘っておいて、いざやるとなったら急に拒絶してメイソンの顔をひっぱたいたりしますが、それでもメイソンは怒りません。男が本当に自分を愛してるかどうかを判断するために女性は一度グレイスと同じことをしてみたらいいと思います。まあ、大概がキレると思いますけど。
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