車椅子ラグビーの選手たちを追った実録ドラマ。障害者のイメージを根底から覆す強くて格好いい男たちの物語です。75点(100点満点)
マーダーボールのあらすじ
交通事故に遭い、四肢マヒ障害を負ったズパンは“車椅子ラグビー”のアメリカ代表選手だ。同じくアメリカ代表チームの仲間、ホグセットはケンカ、ルハノは幼いころの病気が原因で車椅子の生活を送っている。彼らは2002年にスウェーデンで開催された、車椅子ラグビー世界選手権大会で世界ランキング5位のカナダと対戦する。
シネマトゥディより
マーダーボールの感想
「ディス/コネクト」のヘンリー=アレックス・ルビン監督によるドキュメンタリー映画。
別名マーダーボールとして知られる車椅子ラグビーの代表選手やその周囲の人々の生活を追った衝撃の物語で、これまで映画やTVが取り上げてきた”車椅子の人々”のイメージを覆す爽快でエネルギッシュな内容が元気を与えてくれること間違いなし。
ヘンリー=アレックス・ルビン監督は登場人物の車椅子の人たちを不運で可哀相な人々としては決して扱いません。
もちろん事故や病気によって下半身不随になった彼らの経緯には触れていくものの、あくまでもそれを乗り越えた今の彼らを取り上げていて、とてもポジティブな内容でした。
偽善的な部分も少なく、いわゆるステレオタイプの心優しい身体障害者などは出てきません。強烈なキャラを持った人たちばかりをチョイスしていて、彼らのアグレッシブさに驚かされました。
カナダ代表を率いることになったアメリカ人のジョー、アメリカのスター選手マークなどは口も悪いし、顔もいかつく、喧嘩上等といった感じのちょい悪な雰囲気があって、自信に満ち溢れたあの姿には女性もホロっときちゃうんじゃないでしょうか。
インタビューでは表面的な車椅子の生活だけでなく、女性関係にも突っ込んでいて、夜の生活についても赤裸々に語っていました。
それによると、病院が提供している車椅子の人たちのための夜のマニュアル動画のようなものがあり、その映像も流れます。
「いいですか、女性のほうが後ろから車いすごと男の人を倒して、こうやると、このポジションができますよ」などといって説明しているのに釘付けになりました。
また選手たちが「俺は胸の大きい女は嫌いなんだよなあ」などと話しているのが面白かったです。日常ではなかなか聞けないことを監督が代わりに聞いてくれてるようでありがたいです。
とにかくアグレッシブな人たちなので、女関係でも積極的なのかみんな綺麗な恋人を連れているのが印象的でした。
恋人たちの多くは障害者ではなく、それも美人で色っぽい体をしていて、街を歩けばさぞかし他の男たちから羨ましがられてることに違いないです。やっぱりモテる男というのはどんな状況でもモテるんですね。確かにみんな格好いい男たちばかりだったし。
もちろん彼らは様々な苦しみ、悩み、コンプレックスを乗り越えてあの境地に達したのでしょう。
アメリカ代表のマークと、車椅子生活を始めたばかりの人たちが交流しているシーンがあるんですが、いわゆるその道のベテランと新人が交わり、情報を交換している姿がとても感動的で、特にマークが患者たちを見るときに、自分も同じようにくぐってきた苦しみを再び思い起こしているような表情をするのが悲しく、美しかったですね。
ヘンリー=アレックス・ルビン監督の「ディス/コネクト」も面白いんで、ぜひこの映画とあわせてみてもらいたいです。やはりドキュメンタリー映画をちゃんと撮れる人はフィクションを撮っても上手いですね。いい監督に出会えて嬉しいです。
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