カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した上質の同性愛映画。本格的なベッドシーンと主演二人の文句なしの演技に見惚れること間違いなし。
官能的でリアルな大人の恋愛ドラマで、今まで見た同性愛映画の中では最高傑作です。84点(100点満点)
アデル、ブルーは熱い色のあらすじ
教師を夢見る高校生アデル(アデル・エグザルコプロス)は、運命的に出会った青い髪の画家エマ(レア・セドゥ)の知性や独特の雰囲気に魅了され、二人は情熱的に愛し合うようになる。
数年後、念願の教師になったアデルは自らをモデルに絵を描くエマと一緒に住み、幸せに満ちあふれた毎日を過ごしていた。しかしエマの作品披露パーティーをきっかけに、二人の気持ちは徐々に擦れ違っていき……。
シネマトゥディより
アデル、ブルーは熱い色の感想
「クスクス粒の秘密」のアブデラティフ・ケシシュ監督によるレズビアンの枠を超えた普遍的な恋愛ドラマ。
「17歳」もそうでしたが、この映画もまた監督さんに敬礼したくなるほどの色気を視聴者に提供してくれています。「フランスの監督さんたちいつもありがとうございます」と言いたくなります。
フランス人は他の西洋人、あるいはラテン系の人種の中でも例外なんじゃないかと思えるほど、映画の中では異質のお色気シチュエーションを作り出してきますね。実際はどうなんでしょうか。フランス人をよく知る人がいたらぜひ教えていただきたいです。
日本ではどれほどの部分まで露出されるか分かりませんが、本当にしちゃってるのかな、と思わせるようなシーンもあって衝撃でした。いずれにしろ女性同士の絡みとなると、下手な見せかけが通じないため、男女のそれより本格的にやらないといけないし、「すごいなぁ」と感心させられます。それを20歳そこらの普通の若手女優がやっているから感動するのです。
なぜそこまでやるかといったら、アデルとエマは気持ちでつながっているだけでなく、体の相性でもほかの人とは全く違ったレベルでマッチしている二人だからです。
セリフにもそういった話が登場し、二人の特別な関係を言葉でも体でも表現しているところに説得力がありました。しかし気持ちが通じ合い、体の相性が良かったとしても、関係が必ずしも上手くいくわけではない、と描いているところにリアリティーが溢れていました。
アデルはこれまで普通に男性を好きだったのに、芸術家のエマと出会ったことで女性を初めて好きになります。しかしレズになったというのではなく、あくまでも好きになった人がたまたま女性だったという印象がありました。
一方でエマはこれまでもずっと女性と付き合ってきた本格的なレズです。そんな二人は同性愛に対する考えにも相違点があり、エマは堂々と人にアデルを紹介できるのに対し、アデルは家族には友達といって紹介したり、同性愛に対しての世間の目と偏見に悩んでいる様子でした。
そんな中、アデルはエマのいないときに男と浮気をしたりして、弱くて寂しがり屋の自分に負けてしまいます。
それを知ったエマのブチ切れ具合が恐ろしく、またアデルの困惑ぶりがすさまじく、二人の喧嘩のシーンは映画史に残る完成度の高いシーンでした。
なんていってもエマの役作りの出来が半端なく、ぱっと見ただけでレズだとわかるあの同性愛者が持つ特有のオーラを漂わせているのです。
最初はレズの女優を起用したのかと思ったのですが違いました。普段ではこんなに女性っぽくてそのギャップと言ったらたまりません。こんな変幻自在の演技、役作りはそんじょそこらの日本人の女優にはできないですねえ。
このレベルと比べると、金八先生の上戸彩なんてちゃんちゃら可笑しいわけで、あれで熱演とか言われてしまう低レベルさはなんなんでしょうか。
これまでもすでに数多くの同性愛映画が世に出ています。「ブロークバック・マウンテン」がアカデミー賞を獲ったりもしましたね。
しかしそのどれを見てもなんかいまいち同性愛者のための映画という気がして、感情移入に困りました。自分とは関係のない、どこか別世界の物語という感じがするのです。
その点でいうと、この「アデル、ブルーは熱い色」はどういうわけか普遍的な映画として見ることができました。それはこの映画が恋愛そのものより、それを通じた青春を強く感じさせるからかもしれません。なんというか哀愁を帯びてるんだなぁ。
コメント
唐突に上戸彩をこき下ろしていて笑いました。
よほど腹に据えかねていたのでしょうか?
デブグルさん
コメントありがとうございます。特に上戸彩が嫌いだということではないですが、書いてるときにそういえば金八先生のときに話題になってたなあ、と思い出しました。
観たいですねえ!
エマの人はミッションインポッシブル4の女殺し屋ですよね。
殺し屋からレズの美人画家まで、すごい。
84点という高得点に惹かれて観ました。本当にいい映画でした。
女性同士が一目惚れして燃えあがって、すれ違って別れるという単純な話ながら、そのすれ違いの原因が複雑です。一口にLGBTと言っても、純粋なLと少しB寄りのLとでは、やはりすれ違いが生じるのかもしれません。また芸術と日常、階級差などが複雑に絡んでいるようです。
そうしたことが、すごく自然な流れとして描かれていて見事です。
特に驚いたのは、会話が聞き取れなくて聞き返す場面が三箇所もあり、そういう一見ワザとらしい演出まで自然に見えることです。
いずれにせよ主演女優に鼻水二回も流させて、ここまで綺麗な映画にしてしまうのだから、凄い監督です。
気に入ってもらえて嬉しいです。会話が自然でしたよね。
僕はフランス語圏のスイスに住んでた時期があったのですが。現地に住んでる友人に「フランス人とスイス人を見分けるにはエロい映画を見せるといい、気まずそうな顔をしたらスイス人だ。」みたいな事は言われましたねw
その話、面白いですね。