老女が50年前に生き別れた息子を探すイギリスの家族ドラマ。上品で、宗教的で、退屈で、普通すぎるアカデミー賞ノミネート作品です。42点(100点満点)
あなたを抱きしめる日までのあらすじ
1952年アイルランド、未婚の母フィロミナは強引に修道院に入れられた上に、息子の行方を追わないことを誓約させられてしまう。その後、息子をアメリカに養子に出されてしまった。
それから50年、イギリスで娘と暮らしながら常に手離した息子のことを案じ、ひそかにその消息を捜していたフィロミナ(ジュディ・デンチ)は、娘の知り合いのジャーナリスト、マーティン(スティーヴ・クーガン)と共にアメリカに旅出つが……。
シネマトゥディより
あなたを抱きしめる日までの感想
「疑惑のチャンピオン」、「ハイ・フィデリティ」などで知られるスティーヴン・フリアーズ監督による、ノンフィクション「The Lost Child of Philomena Lee」を基にした映画で、日本でもすでに原作が出版されていますね。
娘と一緒に暮らすフィロミナはある日、50年間秘密にしてきた息子の存在を告白します。それを聞いた娘はジャーナリストのマーティンに接触し、自分の母親のストーリーを取り上げてもらおうとします。
マーティンはすぐに興味を示し、その話をマスコミに持ち掛けます。マスコミからの支援を得たフィロミナとマーティンは修道院を経て息子が移住したとされるアメリカに渡り、取材を続けます。
やがて二人はフィロミナの息子がアメリカで政治家になっていたことを知る、というのがおおよのストーリーです。
物語のほとんどがフィロミナとマーティンのやり取りに終始します。となるとこの会話に全力を捧げないとならないはずなんですが、言葉の掛け合いも、出てくるエピソードも薄く、なんの味もしないお菓子を次から次へと食べさせられているような気分になりました。
修道院にいただけあってフィロミナは宗教心が強く、対するマーティンは無宗教家というコントラストで勝負しているものの、そこの対決もやり取りもやっぱり薄い。なにより上品に作りすぎた感がありますね。
イギリスやアメリカ映画で汚い言葉がほとんど出てこないのはすごいことです。登場人物が怒ってもほとんど罵ったりもしないです。 宗教家であるフィロミナですらキレたら手が付けられないぐらい汚い言葉を発するというほうが真実味があって面白かったですけどね。
展開にも特にアップダウンもなく、最後まで老夫婦のピクニック的にゆっくりと緩やかに進んでいきます。あの感じで行くのならラストに衝撃のオチを持ってこないとつまらないですね。
修道院のシスターたちを一列に並べて引っ叩くとか、フィロミナには実はほかにもたくさんの生き別れた子供がいるとかサプライズがないとダメです。
フィロミナは50年前に生き別れた息子について色々な想像をかきたてます。やれ、彼が肥満だったらどうしようとか、やれ彼がホームレスになっていたらどうしようとか、ネガティブなイメージをどんどん膨らませていきます。
それだけ息子のことを気にかけている一方で、息子のお父さんである行きずりの男についてはほとんど気にもかけないところが悲しかったです。
息子もいいけど、男のことも探せよって思いました。あの辺りはやはり女性本来の母性本能なんでしょうね。昔の男のことはきっぱり忘れられるけど、自分が産んだ子供のことは一生忘れられないという。
僕的には50年ぶりに男を探し出して、「責任取ってよ」って言って欲しかったですね。50年前にはらませた女に責任を突き付けられた男の反応が見てみたかったです。
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