マーク・オブライエンが書いた記事「On Seeing a Sex Surrogate」に基づいて製作された愛について本気で考えさせられる大人の恋愛映画。ストレートに障害者の性の探求を描いた笑いあり、感動ありの一本。80点(100点満点)
映画セッションズのあらすじ
詩人でジャーナリストのマーク・オブライエンは幼少期に患ったポリオのせいで首から下が動かせず、人工呼吸器を付けてベッドに寝たきりの生活をしている。
そんなある日、身体障害者の性についての取材をすることになり、様々な障害を持つ人たちをインタビューする。
そのうち自分自身も未知の世界である性体験をしてみたいという衝動に駆られるようになったマークはセラピストの存在を知る。セラピーのセッションを受ける当日、そこに現れたのは美人で思いやりのあるシェリルだった。
映画セッションズの感想
「500ページの夢の束」のベン・リューイン監督が撮った、ちょっといい話。タブーとされている障害者の性を勇敢に取り上げていました。
「やりたい」という気持ちを隠さずに、正直に自分の欲求と対峙し、そして果敢に恐ろしくもある未知の世界に飛び込んでいくマーク・オブライエンの心意気が男前です。
ここでいうセラピーは考えようによっては売春です。しかしマーク・オブライエンが神父さんに相談すると、神父さんは悩んだあげくやるべきだ、と背中を押してくれます。
聖書の教えがどうだではなく、マーク・オブライエンのことを一人の友人として考えてくれる、そんな神父さんが側にいてくれたら最高ですね。
セラピーが始まり、セラピストのシェリルは文字通り体を張ってマーク・オブライエンに性教育をします。最初は授業のようなセッションもマーク・オブライエンの緊張が解けていくにつれ、そこに快楽が生まれてきます。しかしマーク・オブライエンはあまりにも敏感すぎてすぐに行き果ててしまう。
それでも機械的にではなく、親身になってマーク・オブライエンと頑張ろうとするシェリルが優しすぎて、当然のごとくマーク・オブライエンは彼女に恋心を抱きます。
断言できますが、あの状況でベッドであんなに優しくされたらマーク・オブライエンじゃなくても男なら絶対に惚れます。
不思議だったのはマーク・オブライエンだけでなく、シェリルもまた二人が挿入を達成できたのを境にある種の感情を抱き始めたことです。
シェリルはプロなんだからそこは冷静にならないといけないのにまんまと本気になっていましたね。マーク・オブライエンのことを好きになった女性はなにも彼女が初めてではありません。
その前にも介護をしていたアマンダが彼に好意を持っていました。二人に共通しているのは二人とも彼が好きだという気持ちと同時に深い悲しみを感じていることです。
好きだけど、やっぱり一緒にはいられない、という複雑かつ正直な気持ちが介在しているのが分かり、余計にせつないです。
この映画を見ていてまず最初に思ったのは、いくらなんでもセラピストがヘレン・ハントのような美人のわけがないだろ、ということです。優しいのは分かります。
でも外見で言ったら八百屋のおばちゃんみたいな女性が来るのが現実ではないのか、という偏見を持ったのです。
しかし実物のシェリル・コーエンの写真を見ると、普通に美人だったので嫉妬しました。ふざんけんなよ、マーク・オブライエン。ずりいなあ、この野郎と思ったのです。
シェリル・コーエンは実生活において最初の旦那と離婚後、客の男性と結婚したそうですが、結婚後も旦那の理解を得たうえで同じ仕事を続けているそうです。
劇中では一人の客につきセッションの数は6回までと定めていました。実生活でも6回から10回を限度にしているとインタビューで答えていました。
それを超えると感情が入るため職業倫理上よくないのでしょうが、そこはやはり人間、旦那とはその一線を越えてしまったんですね。ぜひ旦那とのもう一つのラブストーリーも見てみたいです。
ヘレン・ハントはこの美人セラピストを見事に演じていました。脱ぐのはもちろんのこと、教える側の立場なために恥ずかしがったり、緊張を見せたりすることができないシーンばかりで難しそうでした。仕事とはいえ尊敬しますね。
シェリルは劇中にこんなことを言います。「セラピストと売春婦は違うのよ」。これに関しては人それぞれの捉え方があるでしょう。違うのかもしれないし、同じなのかもしれない。どちらだとしてもプロの仕事ができる人はやっぱりすごいですね。究極の介護であり、癒しであり、なにより他人に深い慈悲と愛がなくては務まらないでしょう。
マーク・オブライエンは上手く初体験ができたときのことをこう振り返りました。「もうすぐで泣くところだった」と。そしてマーク・オブライエンとシェリルの二人がお互いに「愛してる」と自然体で言ったのも嘘ではなかったはずです。性の喜びの瞬間をあれほど見事に描いた映画は初めて見ました。
コメント
映画館でも見ましたが、TSUTAYAでレンタルDVDでふたたび見ました。ボクがマークのようにポリオなら セックスどころか 外に出るのもイヤですね。
段差のハンデにへこたれるのも そうですが 自分の足で颯爽に歩く人たちの姿も 見てて つらくなります。
>しかし実物のシェリル・コーエンの写真を見ると、普通に美人だったので嫉妬しました。ふざんけんなよ、マーク・オブライエン。ずりいなあ、この野郎と思ったのです
ハハハ (^◇^)確かにきれいです。しかも シェリルさん 実生活でも お子さんがいる
“セックスママゲート” “ママピスト”…大胆
zebraさん
コメントありがとうございます。映画館でもDVDでも何度も見たくなる映画ですよね。共感していただけて嬉しいです。
初めまして。
観ました!この映画、すごく素敵でした⌒☆
ヘレン・ハントが見事!
とても温かい視点を感じられる映画で、たくさんの方に観ていただきたいな、と思います。
この映画を観て、初めて「セックスって、怖くないんだ」と
思えました。
映画男さんの“文句“も、素敵です。
yukoさん
コメントありがとうございます。確かにとても温かくて優しい映画でしたね。心が救われるようでした。
今晩は、映画男さん。
いつもこっそり拝見しています(笑)
映画男さんは私とは違う視点から映画を観ていて自分の感想だけに偏らず映画をとらえることが出来るので、とても参考になります。
「ザ・セッションズ」は昨夜たまたまWowowで観ました。
事前情報は仕入れていたので筋は判っていましたが、想像以上に素晴らしい映画で観終ってとても気持ちが温かく、穏やかになりました。
映画男さんの文句?も優しいですね。
ただ一つ気がかりなのは、女性障害者向けのセックスサロゲートはいるのかな?という点なのですがどうなんでしょう?
TTpさん
コメントありがとうございます。言われてみると、性産業は男性向けが中心なので女性向けはあまりなさそうですが、全くないこともないようです。それは日本でも女性向けの風俗が少なからずあるのと同じで特にアメリカでは女性の間でセックスサロゲートを利用する人も増えているといった記事もありました。女性バージョンの「ザ・セッションズ」の映画があったら、それはそれで面白そうですね。
つづけて コメントしますね。
ヘレンハントも「ソウルサーファー」では母親役で出てましたが、
この「セッションズ」も「ソウルサーファー」同様 体に障害があっても 挑戦する意思がこめられてます。
体の残ってる機能で できることを・・・
結果 隻腕のベサニーハミルトンは 両腕でバランスを取らないと難しいのに 片腕だけでのバランス感覚を養うことでサーフィン技術をマスターできました。
本作のマークにしても童貞喪失の目標を達成できました。
>シェリル・コーエンは実生活において最初の旦那と離婚後、客の男性と結婚したそうですが、結婚後も旦那の理解を得たうえで同じ仕事を続けているそうです。劇中では一人の客につきセッションの数は6回までと定めていました。実生活でも6回から10回を限度にしているとインタビューで答えていました。それを超えると感情が入るため職業倫理上よくないのでしょうが、そこはやはり人間、旦那とはその一線を越えてしまったんですね。
ここの引用させてもらった部分で、ひょっとしたらですが むろんセックスの分野においても 障害がある人の場合も 例外でなく 他の機能で補おうと考え努力する。
「自分だけでなく、どうしたら 相手の女性をも心と体を感じさせれるんだろう?」
「体の残された機能で シェリルさんを気持ち良くさせれないかな?」
と、考えてた客の男性もいたはずです。これも何かの縁だし。
結果 今のご主人も生涯があるから ほかの客の気持ちも 当然、理解ができるし、回数限定も 体を張ってる以上 短い回数で 客の男性も ”工夫”や”飲みこみ” の上手さで 心までつかまれてしまうのをさけるためなんですね。
”体の機能” そのものがダメなら ”話術”の上手い客の男性だっていても おおいにありえる
腕や足に障害があっても 外回りの営業セールスマンもいますし 体の障害で売り込むのは嫌だから 健常者と同じ話術を磨き 商品の性能をお客様に認めてもらうんだと意気込む人とかね。むろん商品にウソを言うのは論外として。
>ぜひ旦那とのもう一つのラブストーリーも見てみたいです。たぶん 旦那さんとは一線超えたのは うれしい誤算だったものの 旦那さん 心の大きさで言ったら強者(つわもの)でおおらかだったんじゃないかな。じゃなきゃ シェリルさんも一緒になろうとは思わないんですもの( ̄・ ̄)
zebraさん
シェリルさんの旦那さんは確かに大きな器の男ですねえ。世間体を気にせず、好きになった人と一緒になるのは簡単なようでなかなかできないことですよね。