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アイム・スティル・ヒアは軍事政権下の悲しい家族の物語!

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芸術路線の軍事政権ドラマ。全体のクオリティーは高いものの見ていて面白いと思えるエンタメ映画ではなく、ただただ辛いだけの話です。59点

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アイム・スティル・ヒアのあらすじ

軍政の第1号法令によって議員資格を剝奪された元連邦下院議員のルーベンス・パイヴァは、海外に亡命後、妻のエウニーセと5人の子供たちとともに再びブラジルに戻ってくる。帰国後ルーベンスは再びエンジニアとしての仕事に従事し、事業に取り組みながらも、家族や友人と過ごす時間を大切にしていた。

その裏でルーベンスは家族には内緒で政治亡命者たちの手助けをしていた。そんなある日、軍関係者を名乗る男たちが家に押しかけ、ルーベンスを連行していってしまう。エウニーセをはじめ、家族はすぐに釈放されるだろうと思っていたが、それから彼が家に帰ってくることはなかった。

その後、エウニーセや娘まで連行され、夫の活動について自供するようにと拷問を受ける。母子はなんとか釈放されたが、ルーベンスに何があったのか、どこにいるのかを知ることができず、一生苦しみ続けることになるのだった。

アイム・スティル・ヒアのキャスト

  • フェルナンダ・トーレス
  • セルトン・メーロ
  • アントニオ・サボイア
  • ヴァレンチーナ・ヘルスザージ

アイム・スティル・ヒアの感想と評価

オン・ザ・ロード」、「モーターサイクル・ダイアリーズ」、「セントラル・ステーション」などで知られるウォルター・サレス監督による家族ドラマ。軍事政権下にあった1970年代のブラジルを舞台に一家の主を失った家族の苦悩を描いた実話ベースのストーリーでアカデミー賞ノミネート作品です。

物語は、家族がビーチで楽しく過ごすシーンから始まり、前半はあえて幸せなエピソード満載にしてあります。それは間違いなく後半から始まる悲劇のコントラストのためで、ある意味長いフリにもなっています。

テンポはかなりゆっくりで本題に入るまでに大分時間がかかります。エンタメ要素は低く視聴者を楽しませるより、実話を忠実に描きたかったのか、家族の状況を淡々と映しているようなところがあって見る人をかなり選ぶ作品になっていました。

幸せで比較的裕福な家族に不幸が訪れたのは、父親のルーベンスが軍関係者に連れて行かれた日のことで、それを機に物語が一気に暗くなり、陽気なブラジル人家族のイメージとはかけ離れた苦しくて悲しい現実だけが残ります。父親は戻ってくると言い続ける母親。大人たちから詳しい事情を何も教えてもらえない無邪気な子供たち。どっちの心境も見ていて辛かったです。

ルーベンスが中心だった家族が彼がいなくなったことで母親のエウニーセ中心になっていく過程が興味深く、ある日突然5人の子供を一人で育てて行かなければならなくなった母親の強さがにじみ出ていました。覚悟を決めた母親の意思、決意、根性はフェルナンダ・トレース扮するヒロインの表情から嫌というほど伝わってきて、彼女の演技はアカデミー賞ノミネートにふさわしいものでした。特にアイスクリーム屋でほかの家族を見ながらしんみり泣くシーンとか良かったですねえ。

ちなみに「セントラル・ステーション」でもお馴染みの本作終盤にも登場するフェルナンダ・モンテネグロは彼女の実母で、彼女もまたかつてアカデミー賞にノミネートにしています。親子揃ってすごいですよね。

ウォルター・サレスは1970年代のリオを再現するのにコレクターたちからわざわざ古い車を借りて当時の情景を再現したそうです。リオの町にはそれこそフォルクスワーゲンのビートルが多く走っていて車のシーンだけでも情緒がありました。街並み、家、人々の服装も味わい深いです。

ただ、これをブラジルとは無縁の人々が見てどう思うかというと、おそらくあまりピンと来ないでしょう。おそらく軍事政権を経験している、あるいはその名残を受けている中南米諸国の人々にはぶっ刺さるんでしょうけど、そうじゃない人にはやっぱり遠い世界の話で終わってしまうような気がしますね。だからアカデミー賞も外国語映画賞は獲る可能性はあっても作品賞は獲らないんじゃないかなあ。

商業的にも世界的に考えたら大ヒットにはならないでしょう。「セントラル・ステーション」のような万人受けする話じゃないからです。家族な物語だから普遍的かと思いきや違います。軍が父親を誘拐してそのまま何があったか一生分からないとかやっぱり特殊な状況ですもんね。

全体的には上映時間が長い、という印象を受けました。実際は2時間15分ほどなんだけど、3時間ぐらいに感じました。見ていてここで終わっておけばいいのに、という終わり損ねた箇所が2、3回あって、「え、まだ続くの?」って思っちゃったもん。

一つ目は家族がリオから引っ越すシーン。正直、あれが本作のクライマックスにして最大の名シーンだったと思います。あそこで終わったらもっといい映画になっていたのに。それから25年後とかいらなくない? それこそテロップで何があったか説明すればいいのに。

その一方で実話として、ルーベンスの死が正式に認められたこと、その後エウニーセが一人でもしっかりと子供たちを育て上げたことを強調するためにも必要だったのは理解できました。理解はできるんだけど、最後がダラダラしちゃったんだよなあ。

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