俳優たちの演技は悪くないし、全体的にハラハラドキドキするけど、時間が進むにつれてちょっとアホになっていく、惜しい韓国映画。58点
ソウルの春のあらすじ
1979年10月26日、朴正煕大統領が暗殺され、韓国は大混乱に陥った。そんな中、暗殺事件の合同捜査本部長に陸軍の全斗煥(チョン・ドゥグァン)が就任する。チョンは内政が混乱していることに便乗し、独裁者の座を狙おうと陸軍内の秘密組織「ハナ会」の将校たちを率いてクーデターを企てることに。
それに対し、大統領暗殺後、政治に無関心で国のためにすべてを捧げてきた軍人のイ・テシンは、首都警備司令官に任命された直後、チョンの暴走を目の当たりにする。チョンはあろうことか大韓民国陸軍参謀総の鄭昇和に大統領殺害の共犯容疑をかけて誘拐してしまったのだ。これを機に各軍の部隊が入り乱れる戦いへと発展していったのだった。
ソウルの春のキャスト
- ファン・ジョンミン
- イ・テシンチョン・ウソン
- イ・ソンミン
- パク・ヘジュン
- キム・ソンギュン
- チョン・マンシク
- チョン・ヘイン
- イ・ジュニョク
- チョン・ドンファン
ソウルの春の感想と評価
キム・ソンス監督による、1979年12月12日に韓国で起きたクーデター事件をもとにした政治ドラマ。前半、中盤ぐらいまではハラハラドキドキで面白いものの、後半になると一気にフィクション度が上がってリアリティーを失っていく、あともうちょっとの作品です。
あともうちょっとリアリティーを追求し、ドラマチック度を下げて、英雄ぶった感じにしなければもっと面白くなってたんですけどね。それでもまあ全体的に見れる映画には仕上がっていたと思います。
なにより史実という後ろ盾があるので、視聴者はこの映画の中で起きていることは実際に起こったことだと思い込んで見ることが容易にできる点が強いですね。
しかし冷静に見ると、やっていることは「シン・ゴジラ」とほぼ同じで、要は権力者たちが会議室でああだこうだ言い合ってるだけなんですよ。ああだこうだ言い合ってるだけなんだけど、実話ベースだから見れちゃうっていうね。ある意味、ずるい映画ともいえそうです。
韓国で大ヒットしたそうですが、韓国人からしたら自分たちがたどってきた歴史だから物語やキャラクターにより感情移入しやすいというのがあるでしょう。それに対し他国では大ヒットまでには至らないでしょうね。特に欧米人にはピンとこない話なんじゃないかなあ。
とはいえ久々にそこそこ楽しめた韓国映画であることは違いないです。悪者と英雄のキャラクター設定が非常にシンプルで、ハリウッド映画並みに悪者はこれでもかというほど悪い顔をしていて、英雄はイケメンになっていました。それも成功の要因の一つでしょう。
特にファン・ジョンミン扮する悪役チョン・ドゥグァンのキャラが素晴らしかったです。バーコードハゲで、見るからに憎たらしい雰囲気を醸していてハラスメントの塊みたいな性格がいいです。
チョン・ウソン扮する英雄役のイ・テシンもおばさんたちにキャーキャー言われそうな甘いマスクと誠実な感じが出ていて悪役との絶妙なコントラストを作っていましたね。
国のトップが暗殺されたことによって各軍で権力争いが始まる様子は、そこそこ興奮するだけれど、問題はクーデターが始まってからですね。ソウルを守るだの、突入するだので各軍が部隊を送り込むか、撤退させるかどうかでずっとハッタリの掛け合いみたいなことしてるんですよ。
挙句の果てには首都警備司令官のトップであるイ・テシンが橋まで一人で歩いて行って、部隊の戦車を気合で止めるなんてことし始めて笑っちゃいました。あの瞬間、一気に質が下がりましたね。あれでそのまま車にひかれて死ぬっていう流れだったら大歓迎なんだけど、なんであんな漫画みたいにしちゃったんだろう。
それ以降、司令官たちが電話やメガホンで延々と命令を怒鳴り散らすだけで、どいつもこいつも腰抜けばかりでなかなか攻撃をしかけないのがじれったかったです。ときどき銃撃戦に発展するんだけど、あんなにスケールの大きな話の割には銃撃シーンがしょぼかったですよね。機関銃に拳銃で対抗する軍人とかね。もっと強力な武器ないのかよ。
ラストはこの手の映画には珍しくバッドエンドになっていて、悪者たちが権力を奪い去っていくところで幕を閉じているのはなかなか素敵でした。これ下手したら悪党チョン・ドゥグァンを主役にして、あと2、3本映画作れそうですね。続編あるかもよ。
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