もうちょっとで良質なホラーになってるところだった惜しい映画。現実味がなさすぎて冷静に見ると、すごい間抜けで滑稽です。35点
映画「胸騒ぎ」のあらすじ
イタリアのトスカーナでの休暇中、デンマーク人の夫婦ビャアンとルイーセと娘のアウネスは、オランダ人の夫婦パトリックとカリンとその息子エイベルと出会う。アーベルは先天性の無舌症で舌が生まれつきないとのことだった。パトリックとカリンと意気投合したビャアンとルイーセは、オランダの彼らの家に遊びに来ないかと招待される。
ビャアンとルイーセはオランダ行きを決め、人里離れたオランダ人夫婦の家に宿泊することにする。しかし着いてすぐに二人はパトリックの態度を見て唖然とする。彼はアグネスに対して虐待的なだけでなく、ビャアンとルイーセにも横柄な態度を取るのだった。
パトリックはルイーセがベジタリアンだと分かると批判的になった。外食したらその代金はビョルンに全部払わせた。帰りの車では大音量で音楽をかけながら酔っ払って運転するなど、まるでビャアンとルイーセのことを考えていない様子だった。
挙句の果てにはルイーセがシャワーを浴びている間にパトリックがバスルームに入ってくる始末。挙句の果てには夫婦の知らないところでパトリックは裸のまま娘のアウネスと同じベッドで寝ていたのだった。さすがのビャアンとルイーセもこれを見て黙って家を出ていくことにする。
ところが道中、アウネスが彼女のウサギのぬいぐるみを失ったことに気付き、どうしても引き返したいと駄々をこねる。仕方なく彼らはまたオランダ人の家に戻ることにし、そこで帰らないようにオランダ人から説得されてしまうのだった。
映画「胸騒ぎ」のキャスト
- モルテン・ブリアン
- スィセル・スィーム・コク
- フェジャ・ファン・フェット
- カリーナ・スムルダース
映画「胸騒ぎ」の感想と評価
クリスチャン・タフドルップ監督によるデンマークとオランダ合作のヒューマンホラー。サンダンス映画祭で絶賛され、ハリウッドリメイクも決まっているほど評価されているのに対し、実際のところはリアリティーがなくてかなり残念な映画になっていました。
プロットはとてもいいです。旅行先で出会った夫婦の家に泊まりに行ったら、実はとんでもないクレイジーな夫婦で、怖くなって逃げだしたくなるけど、逃げられないという十分にありえそうな話ではありました。
これは誰にも言えることだけど、旅行中とか気分があがってるときに新しい人と知り合うと、冷静にその人の人柄を判断できないことって結構ありますよね。それでノリで知り合ったばかりの人の家に行ったはいいけど、実はめちゃくちゃ気持ち悪いやつだったとか後から気づいたりしたことありませんか?
本作の夫婦の場合、ただ遊びに行くのではなく、いきなり泊まりに行っちゃったせいで、帰るにも帰れない雰囲気になり、夫婦そろって「やばいよ、なんか変だよ」って言ってるうちにどんどん蟻地獄にはまっていく、という心理状態を描いていきます。
ただ、もうちょっと自然にちょっとずつ薄気味悪さを出していけばいいのに、もうデンマーク人の夫婦がオランダに着くや否や、オランダ人夫婦はアクセル全開で気持ち悪さを出してきて、普通の感覚の持ち主ならまず泊まる前に帰るよって言いたくなるエピソードばかりでした。
特にオランダ人の夫パトリックがとにかくやばいんですよ。息子には虐待するし、飲酒運転するし、下品だし、攻撃的だし、デリカシーがないし。なんであいつの家のバスルームはカギがかけられないんだよって。招待客の女性がシャワーを浴びてるのに、普通に小便しに入ってくるんだから。その時点でこいつやばいってなるだろ。
いわば危険信号点滅しまくりなのにデンマーク人の夫婦が気が弱すぎて、ずっとおどおどしてるんですよ。彼らにとってはこれが普通なんだよみたいな感じで。普通なわけないから。あんなビビリのデンマーク人いるのかなあ。
あれならいっそのこと主人公夫婦は日本人にしたほうがマッチしそうですけどね。英語が片言な日本人夫婦で、言葉もあまり通じないし、文化の違いに戸惑って、ビビり倒してなかなか本音を言い出せないみたいなことは海外旅行慣れしていない日本人だったらさもありそうです。でもYES、NOがはっきりしている自己主張の強い西洋人が登場人物だと、現実感がなくなりますね。
くだらない映画なので、さくっとネタバレするので、知りたくない人はこれ以上読まないでください。
実はオランダ人夫婦の正体はシリアルキラーで、家に招待した夫婦たちを次々と殺していく、という設定になってるんですが、シリアルキラーにしてはそれほど殺すことに執着してなさそうなのが笑えました。あるいはポンコツすぎて簡単に獲物を逃がしてしまうんですよ。
デンマーク人夫婦は、一泊した時点で一度は家から逃げていきます。そのときもホラー映画にありがちな後ろからシリアルキラーが追いかけてくるっていうこともありません。そのまま逃げていればめでたしめでたしなんだけど、ホラー映画としては成立しなくなるので、なにかと言い訳をつけて逃げないようにしてありました。
気味が悪くなって滞在先の家主に黙って家を出てきたくせに、娘のぬいぐるみのためにまたそこに戻ってくる意味が分かりません。もう関係切るつもりで逃げたんでしょ? なぜ戻るよ? それとぬいぐるみと命どっちが大事なんだよ。
それからずっと逃げられるのに逃げないという流れが最後まで続き、見ていてまあイライラしました。こいつらドMなのかなって思ったもん。
手足を縛られて監禁されてるんじゃないんですよ。家のドアにもロックがかかってないから出放題。それぐらい逃げるチャンスいくらでもあるのに絶対逃げないんですよ。
そのせいで本来怖いはずの状況が、はやく逃げればいいじゃんっていうふうにしか思えなくなり、気づけば恐怖もなくなっていました。それどこかこの夫婦は一体どんな頭の悪さなんだろうか、といった謎が浮かんできて、滞在初日でストックホルム症候群にかかったのかなあっていうぐらい、怖い目に遭いたがってるのが笑えました。
最終的には夫婦ともども投石の刑に遭って命を落とします。石を投げられている最中も彼らは決して逃げようとせず、じっと耐えてるのが印象的でした。そんな様子を見て加害者のオランダ人夫婦よりもむしろ被害者のベルギー人夫婦のことが怖くなったのは言うまでもないです。なぜ逃げない?
コメント
現実にもなんかどうやっても話が噛み合わない人っていますよね。
そんな何とも言えない違和感、不気味さをテーマにどう着地するのかな、と思っていたのだけど、あぁ、こういう着地なんですね。
ヒューマンサスペンスからただの不条理ホラー(というやつですかね)になってちょっと残念でした。
あの夫婦は子供が欲しくてやってるのかと思ったのですが、子供は戦利品みたいなもんなんですね。
この夫婦はどうやって生計を立ててるんでしょうかね。
妻が最初に違和感MAXで逃亡を言い出して人形で戻ったのは映画的ご愛嬌だとしても、その後旦那が血相変えて逃亡②をして、車が動かなくなった助けを妻があの夫婦にするのはさすが変ですよね。
それもあの恐怖のダンス説教のあとに。
なぜ、旦那も逃げ出そうとしたか妻察しろよ、ってか理由聞けよって思っちゃいました。
いまいち乗れませんでしたね