終始、ぼんやりしていて、具体的なものはなにも見せてくれない”平和”な戦争映画。一風変わってるっていうだけが取り柄でナチス映画が好きで好きでたまらない、という人だけが見ればいい作品です。35点
関心領域のあらすじ
1943年、アウシュビッツ強制収容所の所長であるルドルフ・ヘスは、妻のヘートヴィヒと5人の子供たちと共に、収容所の隣にある豪邸で暮らしていた。ルドルフは子供たちを泳ぎや釣りに連れ出し、ヘートヴィヒは庭の手入れをする時間を過ごしていた。使用人たちが家事をし、捕虜たちの持ち物は家族に与えられていた。庭の壁を超えると、銃声や叫び声、かまどの音が聞こえたが、彼らにとっては雑音に過ぎなかった。
ある日ルドルフはすぐに稼働する新しい火葬場の設計を承認する。ルドルフは川で人の遺体を見つける。彼は子供たちを水から出し、キャンプの人員にメモを送り、彼らの不注意を叱責する。
やがてルドルフは、自分が全強制収容所の副検査官に昇進し、ベルリン近くのオラニエンブルクに転勤しなければならないことを知らされる。彼はヘドヴィヒに数日間知らせずにいた。彼女が家に愛着を持っていたからだ。案の定彼女に言うと、猛反対された。そこで彼女と子供たちをとどまらせるよう上司を説得するように頼む。要求は承認され、ルドルフは単身で引っ越すことになる。
あるときヘートヴィヒの母が家族を訪れるも夜の火葬場の炎を見てぎょっとし、去っていった。近所に住むポーランド人の少女が毎晩こっそり外出し、捕虜たちの仕事場に食べ物を隠し、彼らが見つけて食べることができるようにしていた。
ベルリンに到着して数か月後、彼の功績が称えられ、ドルフは自分の名前を冠した作戦を率いる任務を与えられる。その作戦とは、70万人のユダヤ系ハンガリー人をアウシュビッツに移送して殺すというものだった。これにより、彼はアウシュビッツに戻り、家族と再会する。彼は無表情でその作戦を祝うパーティに出席し、電話でヘートヴィヒにそこでの時間を最も効率的に部屋をガスで満たす方法を考えて過ごしたと伝える。
ドルフがベルリンのオフィスを後にする際、階段を降りながら何度も嘔吐しようとするが、吐けなかった。彼は自分が見られているかどうかを確認するために闇を見つめる。時は現代に映り、アウシュビッツ・ビルケナウ国立博物館の清掃員のグループが開館前に清掃していた。
関心領域のキャスト
- クリスティアン・フリーデル
- ザンドラ・ヒュラー
- ラルフ・ハーフォース
- ダニエル・ホルツバーグ
- サッシャ・マーズ
関心領域の感想と評価
「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」で知られるジョナサン・グレイザー監督による同名小説の映画化。2024年アカデミー賞作品賞ノミネート作品です。
第二次世界大戦中のナチスドイツ支配下にあったポーランドを舞台にアウシュヴィッツ強制収容所の隣で暮らすドイツ人将校とその家族の日々をつづった戦争映画。ナチスドイツによる残虐行為を一切見せず、音と雰囲気だけでホロコーストを伝えている珍しい作品で、その手法が国際映画祭で高く評価されています。
あえて見せない恐怖にこだわっていて、少ない情報から収容所で起こっている出来事を勝手に想像して怖がってくださいね、というスタンスで作られているのでそれにはまる人が見たら突き刺さるかもしれません。容易に壁の向こうを想像できてしまうユダヤ人視聴者、あるいは欧州人にはものすごい恐怖なのかもしれません。
その一方でどうしても映像としての直接的な恐怖を求めてしまう視聴者層にはいまいちピンと来ないでしょう。一つの壁を隔てて理想の生活と、地獄の収容所生活がある、というコントラストは素晴らしいんだけど、徹底してドイツ人家族側の情景しか見せないので、アイデア上、あるいは想像上のコントラストに過ぎず、インパクトに欠けるんですよね。
そこは見せてもいいだろっていうシーンも多かったです。川で家族で遊んでいるときに遺体の一部を発見したくだりとか、もっと寄って見せないと何を手にしたのか見えないですよね。女性囚人に性行為をさせようとする箇所とか、靴を脱いで終わりだとなにがあったのか分かりづらく、場合によっては無駄なシーンになっちゃってるんですよね。
あえて見せないせいでストーリー性やドラマ性が薄くなっているのは言うまでもなく、淡々と状況を映すだけのドキュメンタリー映画といった感じで、面白いかどうかでいったらまあ面白くないです。途中で寝てもおかしくないし、間違っても普段ハリウッド映画しか見ない人にはおすすめできないです。
「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」も奇をてらった感じがあったけど、本作にも同じことが言えます。っていうかそもそも面白い映画を作ろうとしていない意図が見受けられますね。それよりもいかにして戦争映画にありがちな人間ドラマを排除するか、どうやって収容所内で起こっている出来事を間接的に伝えるかにフォーカスしている印象を受けました。
確かにその手法は斬新だし、これまでも数多くのナチス映画が撮られてきたけど、こういうのはなかったよなあ、という感想を抱くんだけども、考えようによってはテクニックだけ、小手先だけの映画なんですよね。これこそが芸術だというなら、へえそうなのかなあっていう感じですね。
なにより単調でした。1時間40分程度なのでなんとか最後まで見られたけど、これで2時間以上あったら無理ですね。玄人向けの芸術路線を行き過ぎていてエンタメ度は皆無なのでまずアカデミー賞向きではないでしょう。
コメント
「無関心という残酷」がテーマなら、別に学校や会社のイジメ・パワハラ自殺を対象にした映画でも良かったわけで、いちいち「ナチス映画」にした所に商業アート的なコスい計算を感じた。
ナチスってだけである程度、売れるんでしょうね