ベルギー発美少年二人によるボーイラブっぽい大人向けの人間ドラマ。面白いかどうかは別として質が高いです。55点
CLOSE/クロースのあらすじ
ベルギーの郊外で暮らす13歳のレオとレミはいつも一緒にいる仲良しコンビ。彼らの関係は親友以上で、家族ぐるみの付き合いをしているだけでなく、相手の家に泊まりに行けば同じベッドで寝るほどひと時も離れないほど固い絆で結ばれている。
レミの両親はレオがレミとベタベタすることに対しても偏見を持たず、レオをまるで我が子のように接した。夏休みを一緒に過ごした後、レオとレミは同じ中学校に進学し、クラスメイトになった。
しかしそこであまりにも距離の近い二人を見てほかの生徒たちは彼らのことを同性のカップルだと疑った。レオはそれを真っ向から否定。レミは何も言わなかった。
それ以来、レオは周囲から自分たちがどう見られているか気にするようになり、レミと距離を置こうとする。そしてそれが二人を破滅へと導いていくのだった。
CLOSE/クロース
- エデン・ダンブリン
- グスタフ・ドゥ・ワール
- エミリー・ドゥケンヌ
- レア・ドリュッケール
- ケヴィン・ヤンセンス
- マーク・ワイス
CLOSE/クロース
カンヌ国際映画祭グランプリ受賞した「Girl/ガール」のルーカス・ドン監督による、儚くも美しく悲しい青春映画。エンタメ度は低く、テンポも遅いけど、演技、脚本、演出のクオリティーでそれをカバーしている芸術作品。商業映画じゃないし、大衆向けじゃないけど、欧州映画好きには安心して見れる内容になっています。
前作の「Girl/ガール」に引き続きLGBT映画です。物語は、トランスジェンダーともゲイともいえる男の子が、同年齢の男の子に友情なのか恋なのか、あるいはその両方ともいえる感情を抱いては、周囲に奇異の目で見られて関係がこじれていく様子を描いていきます。
それを登場人物の細かい表情と少ないセリフから読み取っていくことになるんですが、いかんせん地味なリアリティー路線を行くので退屈してしまう人もいるでしょう。逆に、自分体験と重ね合わせることのできる人、学生時代の苦い思い出をふと思い出してしまう人にははまりそうです。僕はどっちでもなかったです。
主役の男の子二人が13歳ということもあり、はっきり自分が同性愛者なのか、それともただお互いのことが好きなだけなのか自覚しておらず、それこそが本作の最大の見所になっています。13歳という年齢設定が絶妙でまだ性に目覚めていない二人にとっては自分たちの関係を形容する必要がないのがポイントですね。
このぐらいの年齢だと、男の子も女の子も好きな友達とは毎日のように一緒にいるし、同性愛的なものがなくてベタベタすることもあるでしょう。だからLGBTに限った話じゃなく、年ごろの子供たちの多くがくぐっていく、普遍的なひと時の体験としても捉えることができそうです。
分かりやすくするために二人がチュッチュしたり、それ以上の関係になってもよかったと思うけど、あえて二人に一線を越えさせなかったのは曖昧な関係だからこその深層心理と葛藤を見せたかったんじゃないでしょうか。
レオ役の俳優エデン・ダンブリンがものすごく中性的で、どっちも行けそうな顔しているのがいいですよね。男にも女にもモテそうな魔性のフェロモンが出始めていて、この若さでこれなら10年後どうなってるんだろうと末恐ろしいです。
彼がレミを見つめる目がまたすごく、愛情と尊敬と憧れと欲望が混じった好き好き光線が瞳から出ていて、キスしないでいるのがやっとみたいな危険な雰囲気がありました。
そんな相思相愛の二人はしかし中学校に上がると、今までのようにはいかなくなります。新しい学校に通い始め、二人の関係をからかう奴らや偏見を持って接する奴らが出てくるからです。
それをきっかけに強い自意識が芽生え、周囲の目や意見が気になりだし、自分に正直になれず、大切な人を傷つけるという思春期あるあるエピソード満載になっていて、学校内では生徒同士による万国共通の熾烈な心理戦が繰り広げられます。あれは日本の学校生活にも置き換えられる状況でしたね。
そして最終的に悲劇が起こり、一気に話が動くという構成になっていました。だからその前の出来事は全てクライマックスのためのフリとも言えますね。その長いフリの時間を楽しめるかどうかがこの作品の評価につながるでしょう。
終盤は悲しくてやるせないだけの話になっていき、悲劇の時点で物語にはオチがついていたような気配すらあります。正直それ以降は消化するだけのような印象を受けました。和解>感動からの再起みたいな終わり方も予想ができちゃいましたね。予想できちゃうっていったら予告動画を見ただけでストーリーがだいたいわかってしまう作品でもあります。
そういう意味では分かり切った話をどう自分の中に落とし込むかっていう作品だったのかなあとも思いました。鑑賞後は「面白かったあ」という思いにはならなかったですね。それより「上手だった」とか「質が高いなあ」という感想に至りました。
コメント
当作品はクオリティの高い作品なのだと拝察します。
LGBTQ、 性的マイノリティを題材にした作品が増えていますね。ただ最近思うところもあります。優れたLGBTQの作品がたくさん作られることは大いに歓迎なのですが、LGBTQの要素を必ずしも入れる必要のない作品 (私の独断と偏見かもしれませんが…)に、多様性アピールの名目で無理やりねじ込んでくるのには違和感があります。LGBTQの作品は今後も多くなっていくでしょうし、評価をされやすいテーマであることは理解できます。ただ、何でもいいからLGBTQを取り込んでこれは素晴らしい、感動するとアピールされるのは、この大切にしていくべき要素を軽視することになるのではと心配になってしまいます。
長文失礼しました。
なんでもかんでもLGBTは必要ないですよね
退屈だけど上質、とは本当にぴったりでやっぱりさすがです。
話にあまり動きがないので退屈なんだけど、最後までちゃんと見られる魅力がありますね。
このくらいの年齢はグレーであることが許されない感があるので大人の世界より生きにくいですよね。
ただ、他の方のコメントにもあるように私も同性愛系のテーマはそろそろお腹いっぱいになってきました。
同性愛そのものをテーマにした映画はもう出尽くした感がありますね