中年世代に受けるハートウォーミングなイタリアンヒューマンドラマ。子供を持つ世代が自分の青春時代を思い出しつつ昔もよかったけど今も悪くないな、と思う映画です。60点
離ればなれになってものあらすじ
ローマで青春を謳歌する16歳のパオロ、ジュリオ、リカルドは大の親友。三人は激動の時代に揉まれながらも大きな夢と野望を抱いていた。ある日、パオロは美少女のジェンマと知り合い、恋に落ちるもジェンマの母親が亡くなり、ジェンマはナポリに引っ越さなければならなくなる。
別れ際永遠の愛を誓った二人だったが、距離が離れ、時間が経つとともにジェンマはすっかり変わってしまう。
やがてパオロは臨時教員、ジュリオは弁護士、リカルドはエキストラ俳優になった。そんな中大人になったパオロの前にある日突然ジェンマが恋人と共に現れ、二人はまた昔のことを思い出す。するとジェンマはパオロと一緒になりたいという思いを抑えきれず、ナポリを離れ、ローマに戻ってくるのだった。
離ればなれになってものキャスト
- ピエルフランチェスコ・ファビーノ
- ミカエラ・ラマゾッティ
- キム・ロッシ・スチュアート
- クラウディオ・サンタマリア
- ニコレッタ・ロマノフ
離ればなれになってもの感想と評価
ガブリエレ・ムッチーノ監督による、愛と友情と青春と中年時代の物語。仲の良い友達、恋人たちが喧嘩をしたり、仲直りをしたりする人生賛歌映画です。
登場人物たちの多感な青春時代からスタートし、社会人になり、やがて結婚し、子供を産んで、離婚などの壁にぶちあたる過程をテンポ良く描いていき、色々あったけど人生って素晴らしいよねで締めくくる作品です。
イタリア人が相変わらず両手を激しく上下に振りながら大声出して喋っていてなにかとうるさいんだけど、現実的な部分とそうでないパートを上手くミックスし、笑いあり、哀愁あり、寂しさあり、ちょっぴり感動ありの人間ドラマに仕上がっていました。
邦題やポスターが映画そのものの印象をだいぶ悪い意味で変えてしまっていて、マーケティング的にかなり損してますね。邦題とポスター画像だけだと見たくならないもん。さらに上映時間が2時15分ぐらいあって長いから見るのに躊躇するんですよ。でも蓋を開けて見たらそれなりに楽しめたし、見てよかったです。
パオロ、ジュリオ、リカルド、ジェンマがそれぞれの運命をたどりながら上手くいくときもあればそうでないときもあったりして幸せと不幸の両方を見せていくのが良かったです。イタリア人ぐらい情熱的だと幸せな結婚生活や交際中のときと破綻したときのギャップが激しすぎて笑えますね。特にあんなに可愛く甘えてた女性がパートナーに見切りをつけた途端に一転して鬼の形相で怒鳴り散らす姿を見せられたらメンタル弱い男なら「もう二度と恋なんてしない」って言いだしそうなほどのダメージを与えかねないです。
16歳のジェンマがビッチになっていく姿もなかなかきついものがありましたが、それ以上にリカルドの妻の意地悪ぶりにはやられました。当たり前だけど結婚式での姿を思い出すと、離婚後の姿はまるで別人で、養育費はせびるけど息子には決して会わせようとしない最悪の元妻を見事に表現していましたね。
パオロとジェンマの恋物語はないなあって思いました。百歩譲って大人になってからの再会で付き合うのはありとしましょう。しかし一度親友に寝取られてからの復縁はもうないでしょ。ジェンマもジェンマでキャラがその度に変わっていて、ビッチならビッチのままで一生を終えてもらいたかったのに、なぜか終盤成熟したいい女みたいになっていたのが納得いかなかったです。彼女だけ全然歳取らないしね。
弁護士ジュリオが貧しい人々のために働いていたのにいつのまにかお金大好き人間になって、金持ちのお嬢様と結婚し、冷めきった結婚生活を送る、という流れは素晴らしかったです。また、それでも離婚しないところがリアルですね。お互いステータスとしてパートナーをキープしておくっていうのが。
僕的にはみんなが不幸になって終わってくれたほうがその日のご飯がより美味しくなったんですが、最後はなんだか幸せに綺麗にまとめやがったな、という感じがしました。リカルドと息子なんて絶縁状態だったのにどうやって溝を埋めたんだよって思ったし、めでたい新年のことだから細かいことは気にせずお祝いしましょう的な強引さがあったのは否めないです。
しかしながら青春時代から始まって大人になり、やがて子供を産み、子供たちがかつて自分たちが生きた青春時代を送るようになって物語が幕を閉じる、という人生のサイクルを感じさせてくれる構成は見事でした。どこにでもいる男女の普遍的な人生のハイライト映画って感じでしたね。
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